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第五十三話 二輪の工場

 えらく寒いですなあ……。

 聞くところによると、バス会社のストライキらしい、と。どうりで……。へえ……。

 こんなバス停に私とあなたの二人きり、演歌か歌謡曲にもできそうな様相で……。

 はあ、お嬢さんは何故こんな寂れたバスストップに来られたか、と?

 確かに、私のような若い娘――己で言うのも阿呆らしいですけれども、なかなか器量良しの娘――が来る場所ではありませんねえ。へえ……。

 私は終点まで行くつもりだったのですが、これでは歩いていったほうが良さそうな気配ですなあ。

 終点? 二輪ですよ。二輪。ご存じない? へえ……まあ、あなたのような方が行く場所ではございませんがね。そのご様子だと二輪に行く理由も不可思議でたまらないのでは?

 左様でしょうなあ。ではお聞かせしましょうか。あそこには工場があるのですよ。バカげたことではありません。確かに工場があるのですよ。

 何を作るか……? 決まっておりましょう、雪だるま……と、あなたは二輪を越えて行ったことはないらしいのですねえ。へえ……。それでは知らぬも当然か……ふふふ、冗談を言っているわけではないのですよ。最近需要が高まってきていまして、工業化を進めなくてはいけないので……ですから、雪だるまですよ、雪だるま……。

 何に使うのか……? それは……おっと、工場から迎えが来たようです。あの鈴の音はきっと二輪から来る大ゾリですよ。それでは、お先に失礼します……。


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