第五十二話 飴屋
町に飴屋がやって来た。
背に負ったシンバルを叩いて、小唄を歌いつつやって来た。
市民たちは彼女を出迎えた。
飴屋曰く、「私の飴は不思議の飴、悩みがあれば召し上がれ」
市長が言った、「一体それはどういう意味だね」
飴屋曰く、「言葉どおりにございます、さあさお一ついかがです」
彫刻工房の親方は笑って言った、「お前さん、その飴は実のところ麻薬なのだろう。そんなものを売っちゃいかんよ、そもそも俺達にゃとびきりいい酒がある」
飴屋曰く、「いやはや心外な! この飴はそのようなものではございません。とはいえ、今必要でなければ去るしかありません。それではおさらばおさらば!」
町から飴屋が去っていく。
背に負ったシンバルを叩いて、小唄を歌いつつ去っていく。
それより何年経ったろう?
町は日照りに苦しんだ。それも何年も何年も。
造酒所の親方は唸って言った、「このままだと皇帝陛下に納める税代わりの酒も作れない、そうなれば一体どうなるか?」
市長が言った、「自治権はお取り上げだ、まずいことだ」
彼の声が会議場に響いたとき、外からシンバルの音が響く。
それはいつぞやの飴屋だった。
飴屋曰く、「さあさ皆様、私の飴を差し上げます、どうぞ召し上がれ」
皆迷いに迷えど、ついに飴を口にした。
何と甘露な飴だろう! 皆感嘆の声を上げた、そのときだった。
バケツを蹴倒すごとく雨が降り始めた。
ざあああああああああああ……。
市民たちが驚いている間に飴屋は去った。




