第五十話 ひたひたさん
「よく学校の怪談とかでさ」
「いきなり唐突だねえ」
「重語表現だよそれ。まあ、それで怪談さ」
「あんまり怖いのはやめてくれよ、俺ホラーとか苦手なんだよ」
「あ、そうだったっけ?」
「そうそう。この前ITのリメイク版見に行かないって誘われて俺だけ行かなかったの忘れたのか?」
「いや、この話はそんなに怖くないよ」
「でもよ、怪談でよくある話なんだろ?」
「まあ聞いてよ、これ実話なんだけどさ」
「ほらー、それ絶対ホラーのパターンじゃーん」
「聞いてって、もう! べとべとさんっているじゃない?」
「暗闇で足音がべとべと、べとべとってする奴? そのくらいなら怖く……いや怖……怖くな……怖い……怖くないな」
「迷いすぎじゃないか? まあ、ともかく足音を立てるタイプの妖怪話ってよくあるじゃん」
「まあ、よくそういうのは聞くなあ」
「そうでしょ? これは僕の甥っ子が経験した話なんだけど……」
「やめろよ!」
「黙って聞いてよ! その子、塾帰りで遅くなっちゃって」
「やめろー!」
「そしたら、後ろからひたひた、ひたひた……って足音がしたんだって」
「ホラー反対! ホラー反対!」
「叫ぶな! で、気になって振り向いたら……」
「ああああああああああああああ!」
「うるさいよ! 振り向いたらでっかいホウレン草が歩いてたんだよ!」
「……はあ?」
「そいつはホウレン草のおひたしの妖怪らしいんだよ! 終わり!」
「……聞かされて損した」




