第五話 ももたろう
大岩の後ろに犬、猿、雉が集まっていた。彼らは桃太郎の共連れである。しかし桃太郎はここにはいない。偵察という名目で彼から離れたのだ。
「明日俺たちは鬼ヶ島に行く。そういうことになっている」
犬が言った。
「きびだんご一つで宝を山分けできるとは。ありがたい」
猿が言った。
「しかし、本当にそうなるのだろうか」
雉が言った。三匹は顔を見合わせる。よくよく考えれば、鬼ヶ島の鬼は精強であると聞いている。うまくやらねば、無駄死にするのではないか。犬は思った。うまくやらねば、論功で何も得ずに変える羽目になるのでないか。猿は思った。二匹が考えていると、雉がくちばしを開く。
「俺が気になっているのは、桃太郎という男の力だ」
「「言われてみれば、彼の実力を見ていない」」
犬と猿が言った。そこで、桃太郎の才を計るべく三匹は主にこう願った。
「あなたに付いていくと言ったが、あなたの力を私たちは知らない。どうかその技を見せて欲しい」と。
桃太郎は快く願いを受け入れた。
すっくと立ち上がると、彼は叫ぶ。
「桃ビーーーーーーーーーーム!!」
すると、桃太郎の目がショッキングピンクに輝き、同色の光線が瞳から放たれた。光線は遥か海上の岩に命中し、爆発した。三匹は、俺たちは必要ないのではないか、と思った。実際、彼らは大した役割を与えられなかった。鬼どもを油断させるためだけに三匹は連れに選ばれたのだった。