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第四十二話 風塵

「風塵という言葉があるらしい。なんでも、世の中の関わりの煩わしさを表すのだそうだ。これはちと格好良くはないか。そう思って覚えているのだけれども、なかなかこの言葉に出会ったり使ったりする機会がない」

 と、叔父は言っていた。そのときの彼は常に非常に残念そうな顔をしていた。

 あるとき、叔父は出家すると言い出した。

 叔父の家族は一体どういうわけかわからず、理由を我が父にまで尋ねてきた。電話口の問答を聞く限り、父にもわからないようである。私にはピンと来た。

 そこで、父にこう言った。

「父さん、叔父さんはたった一単語を使いたいがために出家しようとしているんだよ」

 父はにわかには信じられないような顔である。しかし、訳のわかる私に尋ねずにはいられなかったようで、

「そ、それで一体その単語とはなんだい?」

 と言った。私は例の二文字を説明する。ぬうう、と父は唸って、

「Z(叔父の名)を呼んでくれ! 一発で説得する」

 本当にできるのだろうか、と父の言葉を聞いて思う。

 すると、叔父が電話口に出たらしい。ぼそぼそと父は呟いた。数分後、彼が電話を置いた。一体なにを言ったのだろう? 満足げな顔の父である。

 我慢できずに内容を聞いた。父は言う。

「なあに、出家したら奴のエロティックコレクションともお別れだぞ、と言ってやっただけさ」

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