第四十一話 The lid
私は笹野先輩と部室でお茶をしていた。お茶、といっても本式の茶道でも煎茶道でもない。文芸部だから、そんな高貴なことをするほど部室は広くないのだ。本棚がいつ倒れるか気が気でないとまでは行かないけれど、この部屋は本がぎゅうぎゅうに詰められていた。
「さて芳月さん」
今川焼きを食べ終えた先輩が話しかけてきた。
「何でしょうか」
「ちょっとしたクイズを出します。答えられたら今川焼きを一個あげましょう」
そう言って先輩はどこからともなく今川焼きを一個すっと取り出した。
「今どこから……」
「それは考えなくて構いません。難問過ぎますからね。『ホビットの冒険』のようなちょっとした謎解きですよ」
「はあ」
クイズより先輩がどこから今川焼きを取り出したのか。そちらのほうが気になって仕方がなかったけれども、私は、
「それでは出題お願いします」
と言った。笹野先輩は微笑んでから、おほん、と咳払いをして
「とても、というほど小さくはありません。けれど片手に収まってしまいます。それなのに、世界を隠してしまえる大きさがあります。さて、何でしょう?」
「……?」
「回答は三回までいいですよ」
「……ええっと、ヒントは……?」
「ありません。考えてみれば存外簡単ですから」
五分ほど唸って唸って、私は一つのモノをひらめいた。それが正解だった。先輩は今川焼きをくれて私は餡の甘みを堪能したけれども、さて、読者の皆さんは答えがなんだかわかるだろうか。




