第四話 夢の中の夢
夢を見ていた。切り株の傍らで眠る私の姿を。ぐっすりと眠っているようだった。鍬を置いて、私は目を閉じている。切り株は畑の片隅にあった。切り倒される前には何の木が生えていたのだろう、ともかく、大人三人が手を繋いでようやく抱えられるほどの大きさの木だったことは確かだ。畑には畝が何十何百と並んでいる。しかし、それでも未だ耕されざるところが見受けられる。仕事に疲れ、一休みしているのが夢の中の私の姿なのだろう。
空に視点を移す。雲が、二、三たなびいている。南に太陽が輝いているところを見てみると、今は正午かその前後であろう。一羽の烏が飛んでいた。カアカアと鳴いているからには烏に間違いないだろう。と、そいつはぐんぐんと眠る私のところへ近づいてくる。遠くから眺めても大きな烏だな、とは思っていたのだが、そいつが近づくにつれ奴が大きいどころではない鳥であると思い知らされた。アラビアンナイトに登場するルフという名の鳥のごとく、広げきった翼はゆうに二十メートルを超えていた。どうなることか、と倉皇として見つめているとその烏はみるみるうちに小さくなり眠る私のぽかんと開けた口に入っていった。
そして私は夢の中の私が目を覚ますのを見届けると同時に夢から覚めた。
奇妙なことに、この夢以来、私の仕事は全てうまく行き、ついには社長にまで上り詰めた。だが、あの夢は一体何だったのだろうと、心にいつも引っかかったままなのだ。