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第三十六話 令嬢マドモワゼット

「お嬢様、本当にショートショートを書かれるのですか?」

 執事のセバスチャンが尋ねた。

「ええ、セバスチャン。ショートショートを書く。そう言ったのですわよ、わたくしは」

 令嬢マドモワゼットは言った。

 セバスチャンはため息を吐いた。そして、

「ショートショートが何なのかおわかりですか、お嬢様」

「わかっていてよ、セバスチャン。ショートショートとは、ちょっと気の利いた小話のことですわ」

「それは新明解国語辞典第六版からの丸写しでございますな」

「あら、博識なのですわね、セバスチャン」

「恐れ入ります。それで、ショートショートに必要なものは何なのかご存知ですか」

 マドモワゼットは自信ありげに口を開きかけたけれども、む? と言うように眉間にしわを寄せ、口を閉じた。そして首をかしげる。

「ショートショートに必要なもの……? 鉛筆? 原稿用紙? パソコン?」

「それらは他の小説を書く場合にも必要なものですな。わたくしが聞きたいのは、特にショートショートを書く上で心がけるべきもののことです」

「……降参ですわ、セバスチャン。一体それは何なんですの?」

「わかりません」

「は?」

「ですから、わかりません。この話の作者ですらわかっていないことを、わたくしがわかるでしょうか」

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