36/69
第三十六話 令嬢マドモワゼット
「お嬢様、本当にショートショートを書かれるのですか?」
執事のセバスチャンが尋ねた。
「ええ、セバスチャン。ショートショートを書く。そう言ったのですわよ、わたくしは」
令嬢マドモワゼットは言った。
セバスチャンはため息を吐いた。そして、
「ショートショートが何なのかおわかりですか、お嬢様」
「わかっていてよ、セバスチャン。ショートショートとは、ちょっと気の利いた小話のことですわ」
「それは新明解国語辞典第六版からの丸写しでございますな」
「あら、博識なのですわね、セバスチャン」
「恐れ入ります。それで、ショートショートに必要なものは何なのかご存知ですか」
マドモワゼットは自信ありげに口を開きかけたけれども、む? と言うように眉間にしわを寄せ、口を閉じた。そして首をかしげる。
「ショートショートに必要なもの……? 鉛筆? 原稿用紙? パソコン?」
「それらは他の小説を書く場合にも必要なものですな。わたくしが聞きたいのは、特にショートショートを書く上で心がけるべきもののことです」
「……降参ですわ、セバスチャン。一体それは何なんですの?」
「わかりません」
「は?」
「ですから、わかりません。この話の作者ですらわかっていないことを、わたくしがわかるでしょうか」




