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第三十四話 ゲリラと精霊

 その日は雨が降っていたように思われる。思われる、という言葉を使うのは私がX月X日の空を実際に見てはいないからだ。何故か? 監禁されていたからだ。

 穏やかではないと感じた方もいらっしゃるだろう。しかしこれは事実である。私はY共和国における反政府ゲリラの捕虜として七日間も窓のない部屋に閉じ込められていたのだ。手足の自由はあったが外出できるほどではなく、寝て一畳もない部屋だったので苦痛極まりない。

 交渉人として赴きながらこの体たらく! 私は自らをあざけった。

 そしてその日である。遠くからサラサラサラ、という音がした。何か水が流れてくるような音だった。雨が降っていた、と推測したのはこのことによる。せせらぎめいた音色に合わせて、低くか細い声が聞こえてきた。

「私はあなたを助けるべく放たれた精霊である。すぐにあなたは自由の身になりたいだろう。しかしながら、一日待つのだ。その間、絶対に戸を開けようと考えてはならない」と。

 私は従う他ないと判断した。すると、遠くから聞こえてくる水音が急に轟音となって響き渡った。何が起きているのかわからなかったが、ひたすらに耐えた。

 次の日、目を覚ますと、部屋の戸が壊れていた。外を覗くと、溺死体のようにゲリラたちが倒れている。彼らは全滅していた。

 翌々日。私はY共和国の大統領に面会し、自らの体験を告げると、彼は笑って言った。

「私の精霊は素晴らしいでしょう? もっと早く使っていればねえ」


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