第三十三話 エウリアンVSおじいさん
今となっては昔のことだが、独り身のおじいさんがいました。
今の感覚から言っても大層な金持ちのおじいさんでしたが、いつとて満足したことがありません。
なぜなら、最高の美というものを一度たりとて見ていないからです。
おじいさんが追い求める美しさ、それを満たす人や物は八十の齢になるまで現れませんでした、
ある日のことでした。おじいさんが町をぶらついていると、羽釜のような銀色のものが空を飛んでいたのです。町の人はおろか、金でこの世の全てを見た気になっているおじいさんでさえ驚きました。
「なんだあれは」
おじいさんは呟きました。すると、だんだんと空飛ぶ羽釜がおじいさんのほうへと近寄ってくるではありませんか。町の人もおじいさんも、危険を感じて逃げ出しました。
高度を下げつつ凄まじいスピードで銀の羽釜――いいえ、UFO――はおじいさんを追い立てます。
そしてちょうどおじいさんの真上に来たとき、一本の光線が放たれました。
アブダクションです。おじいさんはエイリアンに誘拐されたのです。
見知らぬ姿の宇宙人たちに取り囲まれ、おじいさんは怯えつつも叫びました。
「なんじゃ貴様ら!」
「オジイサン、コノ絵、買イマセンカ」
そう言ってエイリアンは一枚の掛け軸を差し出しました。
エイリアンならぬエウリアンでした。
ちなみにおじいさんはその絵――実はピカソのキュビズム期のもの――を買いました。




