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第二十五話 羊と牛

 丑田家のお嬢さんは口の悪いことで有名だった。舌下を招いたことは両手両足の指を総動員しても足りないほどだ。それだけではない。気の短く乱暴なことでも知られていたのである。例えば椅子を投げつける、ハンカチを引きちぎる、花瓶を割る、などなど。父親である芳雄氏は娘に手を焼かされていて、気苦労が絶えなかった。

 あるとき、私は芳雄氏に呼ばれて丑田家を訪れた。お嬢さんの機嫌を損ねないように、と気を張って向かった。しかし、それは必要のないことだった。お嬢さんは全く人が変わっていたのである。優しげで、口調も優雅、短気さは鳴りを潜め、ゆったりと泰然として構えている。不思議に思った。が、夢占い師である私は芳雄氏に尋ねた。

「お嬢さんははっきりとした夢をご覧になったのでは?」

「おお、やはりおわかりに?」

「ええ、わかりますとも。その内容も当ててみせましょうか」

 私の言葉に芳雄氏は目を丸くした。

「そこまでおわかりになるのですか!?」

 頷いてみせた。

「お嬢さんは羊を拾った夢を見たのでしょう。そして、羊を頭に載せるのですよ」

 と、言うと、芳雄氏は手を叩いて、

「さすがは当代最高の夢占い師ですね! しかし、その夢の意味がわからないのですよ」

 私は夢解きを始める。

「簡単ですよ。丑田家のお嬢さんが羊を頭に載せる。つまり、羊と丑が組み合わさった感じができるのです」

「……ああ! 『羞』ですか!」

「左様です。恥じらいを身につけたんですよ」


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