第十八話 復讐
大通りを抜けて、小さなレンガの道を行く。その先には露天商の群れや怪しげなものを売る店がある。なぜそんなところへ歩こうというのか。借りを返さねばならぬからだ。
「旦那、旦那! 銀の指輪だよ、本物の銀だよ、安くしとくよ!」
「何言ってやがる、お前の舌は二枚重ねじゃないか! あんな奴より俺の惚れ薬買ってくんな!」
「えー、九つの味を一つで楽しめる九尾唐辛子! 今ならお買い得だ、九尾唐辛子!」
露天商の前を通るたびに雑多な呼び声をかけられる。全て無視してひたすらに目的地へ。
すっと影が前を遮る。見上げるほどの大男が立っていた。手には血濡れた青龍偃月刀。
なるほど、路上強盗か。ならば、と私は黒メガネを外す。
「ああああああああっ!?」
青龍偃月刀を取り落とし、男は腰を抜かした。そのまま這いつくばって逃げていく。メガネを掛け直し、ひたすらに奴のいる店へ。露天商の一団もおびえ切った様子で、店じまいをして帰っていく。
少し開けたところへ出た。
『暁の光』。奴の店だ。私はゆっくりと、しかし残虐な意図をもって入る。
奴がいた。驚愕と畏怖が顔にありありと出ている。私はメガネを外して、
「この義眼のことだがね……」
と言うと、奴はしばらく黙って、毒を飲んだのか口端から血を垂らした。