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第一話 ピエロ

 X氏は道を急いでいた。午前九時三十分発のバスに乗るためである。昨日営業をやめたばかりのケーキ屋の角を曲がり、バス停へと向かおうとしたちょうどその時、背後から声がした。

「急いでるのかぁい!?」

 X氏は苛立って振り向いた。すると驚愕の声を上げざるを得なかった。そこには店を閉めたケーキ屋の店主が立っている。それだけなら別に驚きはしなかっただろう。彼を驚かしめたもの、それは店主がピエロの姿をしていたことである。白塗りの顔、赤いつけ鼻、ショッキングピンクに染められた縮れ髪。よくX氏はピエロが店主だと判別できたものだ。二の句を継げないでいると、ピエロは甲高い笑い声を上げた。

「急いでるのかぁい!?」

 再びピエロが尋ねてきた。X氏が黙って頷くと、元ケーキ屋はラピスラズリ色の風船を差し出す。

「こいつをあげるよ! 一発で目的地に着くよぉ!!」

「……」

「さぁ、こいつを手に取って!」

「……」

 X氏が黙っていると、ピエロはゲラゲラと笑う。そして無理やり彼の空いた手に風船の紐を持たせた。途端に、X氏は上空二百メートルへと持ち上げられる。悲鳴を上げて気がつくと、彼は自分が仕事場の椅子に着いていた。何があったのか、と考える内に見えた光景に二度目の悲鳴を彼は上げざるを得なかった。同僚が皆ピエロの姿をしていたのである。白塗りの顔、赤いつけ鼻、ショッキングピンクに染められた縮れ髪、そして手にはラピスラズリ色の風船を持って。

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