拾壱之間 悪夢通知《あくむのつうち》
寮の部屋に戻り、ポストの中を確認すると1つの封筒が投函されていた。開封して中身を見るとその紙には「補習通知 弐年参組参拾番 瑠璃浜 唯織 水泳の補習がありますので7月25日~28日午前10時に中等部のプールへ来てください。」と書かれていて僕は血の気が引いた。さらにもう1枚紙が入っていてそれは補修参加者リストだったが意外な人の名前が書かれていた。参組の部分を見てみて僕が意外だと感じたのは「弐拾肆番 綺躁院 倫」の欄だった。勉強も運動もできる彼女が補習を受ける羽目になるなんて思いもしなかったから衝撃を受けた。
通知に書かれていた日にプールへ行き、綺躁院さんに理由を聞くとどうやら水泳だけは苦手なようで僕が彼女に対して持っていたイメージは一瞬で崩れ去った。しばらくしていると女子の体育を担当している芦原先生がフェンスを飛び越えてきて「人数確認するで、1,2,3,4・・・、どうやら全員揃ってるみたいやな。それじゃあ水泳の補習を始めるわ。1日目の内容は平泳ぎで25mを10セット、因みに自分が並んでいるレーンで泳いでる人が1セット終えたら次の人と交代、今回は20人いるから第2レーンと第5レーンは4人、それ以外のレーンは3人でやるで。あと、10セット終えた人から各自で解散することにするわ。」と説明して僕たちが準備運動を済ませた後にレーンごとの組み合わせを発表し、僕は幸いにもすぐプールサイドへ戻ることができる第1レーンで行うことになった。そうして僕たちは補習の1日目をスタートさせ、案の定6割方進むと徐々に沈んでいく。これが2時間かけて10回繰り返され、ようやく帰ることができた。体を動かしていると空腹を感じたので船着き場に止まっている船内食堂で昼食を済ませて同じ船にあるゲームコーナーで「グリップスフィーバー」というリズムゲームをやっていると最後の曲が終了し結果発表に移った時に「なあ、今度はあたしと一緒にやってくれよ。勿論バトルモードでな。」と話しかけられ、振り向くとそこには橙色のTシャツを着て、ジーンズのホットパンツをはいた女性が立っていた。その人に対して僕は「一緒にやるのはいいんですけど、勝つ自信はあるんですか?」と聞くと「大丈夫だって、これでもあたしはこのゲームでは全国に通じるレベルの腕前を持つから負ける自信なんて皆無に等しいんだよ。」と自信ありげに話してきた。そしてその直後に「あんたが一人でやっているところを見たんだけど全国ランカーと肩を並べる腕前だったな。もしかして本物の全国ランカーか?」と僕の腕前を称賛してきて詮索もしてきた。僕はそれに対して「確かにあなたの言うとおりです。ですけど、頂点に位置するほどではありません。」と一応肯定した。「それじゃあ話は早いな、同じゲームの上級者同士、手加減はしねぇぜ。」と女性が宣戦布告して隣の筐体の座席に腰を掛けてゲームを始め、戦いの火ぶたは切って落とされた。因みにバトルモードは30個ある楽曲コースの中から1コースを選んでそのコースの楽曲を3曲連続で演奏し、相手の体力ゲージが空になるか3曲演奏し終えた時点で相手より得点が高かったら勝ちというルールで、この勝負では勿論一番難易度が高いコース30を選択して演奏を始める。1曲目の「Thirteen-tarot」は押してはいけない音符である「ショックノーツ」がいやらしい配置で混ざり込んでるためコンボが途切れやすく多くのプレイヤーが悲鳴を上げたということで有名でネットでは「曲名の由来が理解できる」や「これをフルコンボできる人なんて人間捨ててる」などの声が出る始末。だが僕はショックノーツの配置をすべて把握しているためコンボが途切れることなく最初の難関地帯を突破することができた。そして演奏が終了し、状況は僕の方がリードしている。続いて2曲目の「ミスリル」だがBPMがかなり遅く、その割にはノーツの数が多いため速度オプションを従来より早くなるように設定しなければ普通の速さとは言えない譜面だ。だがそれはお互い理解しているため演奏開始前にオプションを2倍速に設定して演奏を始める。この曲には僕が得意な技術が必要とされる区間が存在するため難無くフルコンボでクリアすることができた。これでリードを広め、最後にこのゲームの最難関曲である「chaos world」で決着をつけようとして途中で何度かコンボが途切れたものの結果は僕の勝ちで、相手側は悔しがってると思いきや「いやー、やっぱり本物と対戦すると勝てねえな。あんた、上総での州内ランキング1位のラピスラズリだろ。実はあんたが一人でやっているところを見てたら画面にプレイヤー名が表示されてて州内1位の人だと分かったんだよ。だけど知らないふりして勝負を挑んだってことだよ。」と本当のことを話してきた。それに対して僕も「あなたこそ常陸では唯一の全国ランキングトップ100のプレイヤーですよね、amberさん。」と本人であることを確認して最後はお互いにまた次に会ったら対戦しようと誓って別れた。それから何事もなく過ごし、2日目の補習を済ませ、午後3時ごろに島内にある「洋菓子 sweet-nector」へ間食を摂るために入ると島に来てから教室内でよく見る後姿を発見したのだった・・・
作者の湊です。完成したのが現実では夏休み最終日ですがこの作品では今回から夏休みに突入しました。なお、第参天守では唯織のオンラインでの知り合いが複数人登場いたします。
キャラクタープロフィール・弐
氏名 調陪 神楽(しらべ かぐら)
出身 日向(現実での宮崎県)
誕生日 9月11日
星座 乙女座
血液型 B型
身長 伍尺壱寸(約154.5㎝)
スリーサイズ 91/59/88
好きなもの ライトノベル、姉
苦手なもの 苦いもの
所属クラス・出席番号 鬼岩島学園中等部弐年参組弐拾七番
部活動 図書部
得意科目 国語
苦手科目 数学
所属寮及び部屋番号 大江寮女子棟514号室
ステータス(ランクは下からE,D,C,B,A,S,R,P,I)
属性 風/ジョブ 未定/武器 魔導具
物理攻撃 I(生身の状態ではC)/物理防御 I(生身の状態ではD)/特殊攻撃 I(生身の状態ではR)/特殊防御 R/身体能力 D/体力 C/靈力 P/知力 S/運 A
角力 騎乗(陸段角)・吸血(捌段角)
解説・弐
鬼岩島学園
唯織たちが通う学校で全寮制の小中高一貫校。1学年あたりのクラス数は初等部が3クラス、中等部が6クラス、高等部が20クラスであり、高等部はさらに戦鬼科(壱組~拾組、1クラス25人)、普通科(拾壱組~拾陸組、1クラス30人)、産業科(拾漆組~弐拾組、1クラス30人)の3つの学科に分かれている。なお、出席番号はいろは順である。