壱之間 幽鬼覚醒《ゆうきへのかくせい》
ここは人間の姿をした鬼が住まう国、日本。この国がそういう状態であることを僕は知る由もなかった。そう、あの日までは・・・
僕の名前は瑠璃浜 唯織、現在いじめにより不登校の中学2年生。平日は自室に引きこもって執筆やFPSをやり、夕方に個別指導の学習塾へ通い、休日の午後は家から20㎞離れた隣の市のゲームセンターでリズムゲームやクイズゲームで遊ぶ日々を送っている。ある休日、いつも通りの日常を過ごしていたがゲームセンターからの帰りにいじめの主犯格である安堀、篠原、村上の3人に遭遇してしまった。すると3人は「おい、瑠璃浜。お前この間の事忘れたんじゃないだろうなぁ。」と僕に向かって言いがかりをつけた。僕は「やってない」と反論したが殴られそうになったので逃げたら後ろから「今だ兄貴、轢いてやれ。」と聞こえたかと思うと僕は突然スピードを出してきた車に轢かれた。その場に倒れて動けず走馬灯のようなものが見えて「ああ・・・僕、もうすぐ死ぬんだな・・・」と思った矢先、目が覚めると周囲に何もない暗闇の中にいた。暫く歩くと襖らしきものが見えてそれを開けると向こう側には4畳半ほどの和室の真ん中に三味線を弾いている僕より3歳ほど年下に見える女の子の姿があった。その女の子は僕の存在に気づいたらしく「待っていました、瑠璃浜 唯織さん。あなたは今、生と死の狭間の世界にいるのです。ここで死を迎えるか生き返ってあなたが元いた世界に戻るかの2択があなたにはあります。さあ、どちらをお選びですか?」と聞いてきて僕はしっかり考えた結果「僕なんかが生きてても現世にいい影響はないけど今死んでも成仏できそうにない。どうせなら死んでも即成仏できるようになるまでは生きようと思ってるんだ。だから僕は生を選ぶよ。」と答えた。そうすると「それじゃあ生き返るついでに鬼の力を授けましょう。それと、私の名前は純白夜叉と申します。どうぞあなたの好きなように呼んでください。それでは今から儀式を始めます。じっとしていてくださいね。」と言い、僕の口に甘い口づけを交わした。こういう経験が無い僕にとっては一瞬だが印象深い出来事だった。和室を出ると光が見えてその方へ向かうと僕は目を覚ました。そこは病院のベッドの上で傍には看護師さんに父さんと母さん、妹の実緒の姿があった。何故か全員そろいにも揃って何かを見て怖がっているような表情をしていた。実緒に理由を聞くと「唯織兄、体の周りに人魂みたいなのが回っているんだけど・・・」と僕の方を指差した。見ると白い人魂とピンクの人魂が僕の体の周りを回っていた。混乱していると幼馴染の矢島 博海と百合根 壬が部屋に入ってきて再会を果たしたが2人もやはり驚いた。何にせよ意識を取り戻した幼馴染の周りに人魂が存在していたからだ。その後2人も交えて過ごしていたら病室に安堀達が突撃してきた。その姿を見て僕はフラッシュバックを起こして発狂し、今まで体の周りを回っていた人魂が僕の体の中に入って行った。すると中心に幽霊が描かれた魔法陣のような円が僕の頭からつま先まで通った。その姿を見てみんな怖がっているかのような表情をした。博海がハンドミラーを僕に手渡し、僕はその姿を映すと髪が白くなっており、瞳の色もピンクになっていた。「こ・・・これが僕!?」と自分でも驚くぐらいの変わりようだった。暫くパニックになっていると外からヘリコプターのプロペラ音が鳴り響き、その音が消えたかと思うと数十秒後に部屋のドアが開き、豊満な胸を持つ女性と太っている男性が病室に入って来て両方とも僕とは色違いの人魂が回っていた。2人は僕の方へ向かい、男性が「君が3人目の幽鬼なんだね、君には今から僕たちと一緒に鬼岩島に来てもらうから。屋上にヘリコプターが停まっているからそこまで行こう。」と僕を連れ出そうとした。だけど現在骨折している僕はリハビリをしなくてはならないことを伝えたら女性が「大丈夫よ、私は治癒術、ゲームで言えば回復魔法を使えるの。だから安心してね。」と言い、僕が骨折している部分に左手の人差し指と中指をかざして呪文のようなものを唱えると僕の足はあっという間に痛みを感じなくなった。その後ヘリコプターに乗り、行き先を尋ねると男性が「君は鬼岩島にある鬼岩島学園の中等部に来週、編入してもらうよ。まずは校長の方に挨拶をしないとね。今はとりあえず島に向かっているよ。」と答えた。数時間後、いつの間にか僕は元の姿に戻っていて鬼岩島に到着した。中等部の校舎へと向かい、校長室の扉を開けた。僕はそこにいた人に見覚えがあり、近づくとそこにいたのは僕の祖父である瑠璃浜 弦だった。まさか自分の祖父が校長だったなんて思いもしなかったのだから僕は驚きを隠せなかった・・・
作者の湊です。今回ふと思いついた新作を書いた結果自分の首を絞める羽目になりそうです。この作品もGod's Games同様不定期更新ですが基本的に正午の更新です。次回は唯織が学園に編入します。