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幸せはコップ一杯の感情【第108回フリーワンライ自主練編】

作者: アフォガード

前田宏は、訪問先へ持参する手土産を購入する為にデパートの地下食品売り場へ立ち寄った。


お目当ての店に到着すると、大学生のカップルとおぼしき先客が会計を済ませているところだった。

洋菓子が入った少しずっしりとした紙袋を受け取り、女の子は彼氏に向き直ると「幸せな重さ!」とはにかんだ。


ほほえましい光景を見ながら、宏は、急にある話を思い出した。


「そういえば、100年以上昔に、魂の重さを計ろうとした科学者がいたっけか。計測の方法に賛否両論あったものの、その博士が計測した魂の重さはは21gだったっけ」


それは、うつぶせで朦朧とした意識の中、聞き流していた大学時代の授業のうろ覚えな知識だった。


「それじゃあ、幸せの重さは一体何gなんだろう」

このカップルにとっては、幸せの重さは500gだったことになる。


宏は、自分に身近なもので考えてみようと思った。

宏は、水中毒かというくらいに結構な量の飲み物を飲む。


何だかんだと気がつけばコンビニや自動販売機でペットボトル飲料を買っている。

ペットボトルの大きさは様々だ。

280ml、350ml、500ml、750ml、1リットル、1.5リットル、2リットル。


味はどのサイズでも同じはずなのに、心なしか最後の方は飲み始めほど美味しさは感じなくなり、飲み終わらせる為に惰性で飲み続けるようになる。


経済的には、量が沢山ある方が安かったり長時間持つのかもしれないが、味気なくもなる。


お湯をいっぱいに入れたお風呂では、ウトウトとすると溺れてしまう。

悪いことは勿論、どんなに良いことだって、あり過ぎると息が出来なくなる。


「このカップルじゃないけど、案外280mlくらいの、片手に収まるくらいの幸せの量が俺にとっては最後まで美味しくいられるのかもな」


予想もしなかった時間。

時計を見てふと我に返った宏は、お目当ての洋菓子を買うと、急いでアポイント先へと向かった。


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