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無頼魔拳伝  作者: 馬骨刀
~一の段 三人、出会うの事~
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1

「ちんたら歩いてんじゃねェ。日が暮れっちまうぞ」

 野太い声の後に高い声が言い返しているようだ。女性だろうか、内容までは聞こえない。別段、興味があった訳ではないが行く当てもない。なんとなく声の方へと足が向いた。

「オラ、莫迦言ってねぇで歩けや」

 いらだった様子の男が女性──いや、少女か──に軽く蹴りをくれる。

 見れば少女の手には木枠の手枷、足には鉄球の付いた足枷が嵌められているではないか。

 少女が悲鳴を上げるより早く彼は地を駆けた。百歩はあろうかという距離を一瞬で走りきる。

 ゾッザザザザ。

 少女と男の間に割り入り、余勢を殺すために両足と片手までを使い地を削って制動する。

 右腕に掲げた杖は男と少女の合間に残し、決然たる意思を示す。

 お前の狼藉を許さない。

「あン?ンだお前は? 関係ねぇ奴はすっこんでろ。俺が機嫌を悪くする前にどこへでも行きな」

「ふん、婦女子に手を出す輩を見過ごせるものか。私が怒りを抑えている間に失せよ」

 ちぃん。

 男が腰の物を抜き様に切りつける。

 割って入った青年は己の杖で弾きのける。

「やるッてか」

「やらいでか」

 男は背の丈、普通、だが横に分厚い。

 青年は大柄だが細身。細身だが締まった肉体。一見細く見える腕で、刀を弾く硬く重い杖を振り回している。それも片手で、だ。

「クガイア流刀剣術、クロウエ」

「オクタポル門……」

 そこで一呼吸、止まった。刹那にこれまでの日々、師から告げられた断絶の言葉が胸に響き、喉から血を絞る様に言葉を続ける。

「オクタポル門、破門。アスィーラ」

「ちょ……まっ……」

 示し合わせた様に反対方向に飛ぶ二人。各々、得物を構える。

「はん、その杖……ってよりゃ槌か。そいつをその細腕で振り回せるのかい?」

「余計な世話だ。貴様こそ、その背に負った大刀を抜かないでよいのか?」

 馬が合わない。こいつは敵だ、と双方等しく思い、常よりわずかに力がこもる。一歩。半歩。四分の一歩……

「間合いだぜ」

「間合いだぞ」

 互いに相手の間合いに入ったことを告げる。

なおもじりじりと間合いを詰めていき、これ以上進めば武器が用をなさなくなる、とその時……

「話を!」

 ガッ

「聞きなさい!」

 ゴッ

 暗転……


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