【13】 間をとって、俺たち基準で
私の手を握っていた、骨ばった手が、離れた。
指がすっと冷える。
王二郎が、目を見開いて、でも笑った。
「ありがとう。りっちゃんみたいな、友達がいてくれてよかったなって、いつも思ってる」
「友達?」
繰り返してしまう。最初に、そう言ったのは私だ。まだ私が王二郎に恋をする前。
たしかにあのときはそうだった。大事な友達だった。
だけど、いまは違う。
もっと強い。
もどかしい。気持ちが伝わらない。どうしたら、友達以上に好きだってわかるのかな。
考えて、それを伝えたら、もしかしたら友達でもいられなくなるのかもしれないと、そんなことがふと影のように頭をよぎる。
バイで、五月と付き合っていなくて、だからって私に勝ち目があるとは思えない。
最初に友達だといったのは私だ。
「あのさ、私、王二郎と友達でいるのいやになったんだよ」
「え?」
王二郎は立ち止まる。眉がひそめられる。きれいな顔なのに、歪む。
こんな風に、私を嫌われたらいやだな。
「俺のこと、嫌いになった?」
首を横に振る。
「さっき好きだっていったじゃん」
「じゃあなんで、友達でいたくないって」
「友達だけ、でいるのが嫌になった」
王二郎の目は、いつしか潤んでいた。
「友達だけ、じゃないって、じゃあ何でいたいの?」
「友達よりももっと好きなんだってば」
「それってどういう・・・」
「しつこいなあ、好きなものは好きなんだってば」
あんまり尋ねられるから、私もじれてつい声が大きくなる。
しかし、王二郎の眉間の皺は消えない。
「しょうがないじゃん、いままでさんざん翻弄されてきたんだから、慎重にもなるよ」
「ほんろう?」
なんだその、小悪魔っぽい動詞は。
「私が?」
王二郎はこくこくと頷く。
「こないだ、りっちゃん俺のこと好きだって言った」
「いや、だからそれは」
「喜ばせといて、その後で友達だって言ったでしょ」
「だってそれはそのときは本当だったんだって」
「いまは違うの?」
目を覗き込まれる。本当に、疑ってるなあ。私はどれだけ王二郎に信用ないんだ。
腹が立って、肩を掴み、かみつくように頬に口付けた。
王二郎の目がこぼれそうなほど、大きく見開かれたのを見る。
唇を離して、王二郎を睨みあげる。
「いまはキスだって出来る」
王二郎の目の下が赤い。しかし、まだ目つきは厳しいままだった。どれだけ信用ないんだ、私。
「頬にキスくらい、外国だったら友達同士でもするよ」
「じゃあ、友達でしないことってなに。マウストゥマウスだって国によってはするかもよ」
セックスだってさあ、セフレって言葉もあるし。どうしたら友達より好きかなんて、突き詰めていくとどう証明したらいいかわからない。
「じゃあ、間をとって、俺たち基準で」
何の間をとってなのかわからないし。俺たち基準って言われても。
「私の基準はさっき示したよ。だから王二郎の基準は何かってさっきから聞いてるんじゃないか」
すると王二郎は、私の肩に手を置いて、顔を近づけようとした。
私は思わず、目をつぶる。




