gray story.1-06 鎖野皐月
不機嫌モードは続行中らしく、双子は廊下を我が物顔でずんずんと進んでいった。
廊下で話していたりしていた人たちは、双子が貴族だからか実力者だからか、それとも美形だからかすっと道を譲っていた。
その後ろで歩くのは本当にきまずい。
普段ならこの双子はにこにこしながら廊下を我が物顔で歩いていくのに。
…どっちみち一緒か。
そこに。
「そこの金髪双子!廊下は公共物です!我が物顔で歩かないでくださいまし!!!」
なんか少し痒くなってくる口調で歩いてきたのは見知った同級生。
彼女は鎖野皐月という。
彼女も魔法七貴族が一家、ラインを司る鎖野家の息女だ。
いかにもお嬢様、みたいな綺麗な顔に上品な雰囲気。緑のセミショートに、フレームの太い眼鏡の奥の青い瞳。
髪と目の色は属性をあらわす。彼女はめずらしくもニ属性なのだ。
綺麗な顔をしていると思う。
同じ七貴族だからか、双子と彼女は腐れ縁だ。
…ちなみにこの人はこの小説のヒロインじゃないから。違うから。
「…」
「…」
いつもならうざいっ!!とかはもりながら叫んで廊下を走りゆく双子だが、今日は眉間の皺が増え更に大股で歩き出しただけだった。(だけ…?)
というかもう小走りしないとついていけない。
何故西洋人は足が長いんだろう。
「ちょっと!!聞いておりますの?」
いつもと違う態度が気に障ったのだろう。
説明をしなければ。
「今日アルとレイ不機嫌モードなんだって」
そういうと彼女は合点がいったように頷き、いかにもお嬢様という感じに優雅に、腕を組んで歩きながら言った。
「あぁ!!さては戦闘を途中で止められたのですわね?昔はよくなりましたわ。尻拭いをさせられるこちらの身にもなって頂きたいものですわ!」
にこりと微笑みながら彼女は言った。
かわいそうに。少し彼女に同情…を抱いたのは一瞬だった。
「でも面白かったですわ!!!顔に油性ペンで落書きをしても眉間の皺が増えるだけですの!あははははは…!!!」
最後のほうはもうお嬢様らしい笑いではなく高笑い。
魔女のような。
それにさっきから双子が立ち止まって振り返り、こっちを睨んでる。
皐月はそちらを真正面から見返して言った。
「感謝してほしいくらいですわ!未来永劫とけない呪いでもかけようかとおもいましたもの!」
そういってまた高笑い。
「…灰色、行くよ」
「…灰色、行くよ」
「あぁ、うん」
不機嫌モードが直った(?)
「お待ちになって!私も行きますわ!」
にこにこ。にこにこ。
三者の間に火花が散る。
はたから見れば仲むつましきことだが、僕の身にもなってほしい。
それはこれからの言い争いからわかる。