gray story.1-04 微笑む紫
side ???
「隠れていないで出てきたら?」
「気づかれましたか」
当たり前。
「接触するの?あの子と」
心配…?いや、違うな。のがれたいだけだ。
「ノーコメントです、カントラクト。貴方には感謝していますが、所詮貴方は他人です」
「痛いところをつくね…」
「古傷に触ったのなら謝ります。私も焦っているので」
そんな痛々しい顔をしていたのだろうか。自分は。
「フフ…。不思議そうな顔をしていますね。顔にはでていませんよ。安心してください」
この子はまるで全てを知り尽くしているような物言いをするので苦手だ。あの人そっくりで。
「母さまのことですか?私はあんなたぬきと一緒にされるのは不愉快で仕方がないのですが」
顔を不愉快で歪ませるところは年頃の女の子なのだが。
「失礼ですね。私は健全なる女子高生ですよ」
「ごめんね…ってあれ?」
何故会話がつながる。心の中で思っただけなのに。
「フフフ…。そこはノーコメントで」
怖い。ただならぬ恐怖を感じる。
「あ、そういえば用件に戻りますが、天界から降りてきたばかりで住む場所がないのでこちらへ住み込みますので。よろしく」
「どうせ断れないよね…」
「もちろん」
「……………」
「どっどうしたの?」
急に黙り込まれると怖い。
「今日は入学式でした…」
やってしまったとばかりの顔。
ん?
「入学式…?」
「ではここで失礼させていただきます」
そう言うといきなり消えてしまった。
入学式…?あの子の言ってる学校も今日が入学式だった気がする。
まさか…?
「ッ!!」
仲間の気配がする。はいろの学校のほうから。
「まだいたんだ…」
安心感と絶望感。
ああ、たとえ血のつながっていない兄弟でも、願うよ、君の幸せを。
はいろ…
たとえこれが僕の勝手な罪滅ぼしでも。