gray story.1-02 煌く銀色
「顔見たよな、あいつ」
その声からは焦りは感じ取れず、あるのは狂気と奇妙な喜びだけ。彼はくつくつと笑うと、左耳についている銀色の宝石の嵌ったピアスに触れると、目を伏せた。
「願うは五界の混沌と狂乱。全てを浄化、洗礼し消滅させん」
その呪詛めいた言葉は、されど聖なる響きを持って成された。
先ほどあったことを綺麗さっぱりと忘れながら、灰色はわかりきっているクラス表を見に行った。
クラスは4つ。
「チョーカー」
「イヤリング」
「ブレスレット」
「リング」
それぞれそのクラスの者はそのアクセサリーを身につけている。そして、体の上のほうにつけるもの程、上とされる。しかし、「チョーカー」の意味は首輪なので、問題児クラスという意味だ、ととる者も少なくない。実際、まともな人は少なかったりする。
「あ、灰色。お久しぶりですわね」
クラス表を覗いている灰色に声をかけてきたのは、「まともではない人」の中の一人だった。
彼女の名は鎖野皐月。彼女は「魔法七貴族」のうちの鎖野家の長女だったりする。
※魔法七貴族 七つある魔法系統をそれぞれ極め、血筋、品性、実力ともにトップをいただく一家の事。色々と優遇されるし、滅多な事がないかぎり、その地位が揺らぐことはない。
女子にしては少し高めの身長に、艶のあるセミロングの緑の髪。知的な光をたたえた深い青の瞳。ローブは着ておらず、ベストとシャツ、スカート、という一般的な制服を着ている。
そして、彼女はその綺麗な顔に笑みをのせていた。
「今年も貴方はチョーカーですわよ?」
その言葉に灰色はがくっと肩を下ろすとため息を吐く。
「やっぱり……?僕のどこが問題児って言うんだろう……」
その言葉に、皐月は僅かに顔を顰めた。
「まだそんなことをおっしゃってますの?私たちのクラスは最上位に位置する優秀なクラスであって問題児クラスではありませんわ。……さぁ、行きましょう」
それだけ言うと、皐月はさっさと歩きだした。