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gray story.0-00 追憶
天窓から太陽の光が差し込んだのどかな雰囲気の部屋。
そこで、少年と青年がむかいあってイスに座り、紅茶を飲んでいた。
少年のほうは灰色の髪と双眸を持ち、青年のほうは銀色の髪と双眸、長くとがった耳とおそろしく整った顔立ちは、人間とは異なる者だということを見る者に一目で知らせた。
「兄さん、ぼくの名前はなんではいろなの?」
唐突に、まだ呂律のまわらない舌で小さな少年が話す。
その少年の一言に、青年は軽く目を見開きしばらく考えるようなそぶりを見せた後、目を細めて微笑した。
「はいろの字、なんて書くか知ってる?」
少年は首をかしげると言った。
「灰色って書いてはいろ」
少年は立ち上がって空気に【灰色】と漢字で書く。
青年も立ち上がる。ひざを曲げて少年の頭に手をのせ、わしゃわしゃとかきまわした。
「そうだよ。灰色のお母さんとお父さんがつけてくれた、大切な名前だ」
「?」
見上げた先の青年は、ただ笑うだけだった。