真実は分からずとも(4)
ちょっと短いですが
このお話しは、調査から帰って来たローザ目線です。
ことら探偵事務所。ローザは一人で、冷房が一番当たる位置のソファに座る。冷房の効いた部屋は居心地がいい。居心地の良さに身を任せスマホを触っていると、呼び鈴が鳴った。
ゆっくりと立ち上がり玄関を開ける。ドアの先にいたのは依頼人のマイさんだった。彼女は、調査の進捗を聞きたいようで、事務所内に入れてネコさんが来るまでの間待ってもらうことにした。
机を挟んで、向かいのソファーに座るマイさん。
「……。」
顔を俯かせ、目を泳がせている。どうやらかなり僕と同じ空気の中にいるのが気まずいようだ。
とはいえ、残念ながらこの空気をどうにか出来るほど、話題を持っていないし、この状況をどうにかしようとすら思わない。ネコさんが戻れば話してくれるだろう。勝手に安堵感を感じていると、マイさんが突然立ち上がった。
「あの、すみません。ここってお手洗いありますか?」
「あぁ、この奥を行って右にあるよ。」
「ありがとうございます。」
よほど気まずくて、一人にでもなりたかったのだろうか。さすがに、悲観的になりすぎか。
マイさんが席を立ちお手洗いへと向かう。
マイさんがいないくなった席にどこか違和感を感じた。彼女が座っていた場所をよく見ると、小さな写真が落ちていた。あまり人の物に触れたくはないが、拾っておくか。拾って机に置いてからジッと見つめる。
プリクラ写真か。ハートマークに恋人と思わせる文言。この写真に写っているのはマイさんだろうか。さすがに他人のこんなプリクラ写真を持ってるのも変だよな。
しかし、この写真の人物がマイさんだとして大分印象が違うな。この写真は清楚系というべきか、今の彼女より真逆の人物だ。それに一緒に写っている男性は恋人か?昼間にリオが話しを聞いていた先輩という人物とは違う、童顔で少し背の低い男性だ。
勝手に彼女についての考察を脳内で繰り広げていると、部屋の奥からマイさんが戻って来た。ソファーに座る直前、机においたプリクラ写真に目を丸くさせていた。
「それ、落としてましたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
何かやましいことがあるのか、彼女はプリクラ写真を拾い少し見つめたあと、そそくさとカバンにしまい込んだ。
他人の恋愛事情に興味はないが、仕事だから仕方ない。気まずい空気がさらに気まずくなるだろうけど、このことは聞かなければならない。
「そのプリクラ写真に写ってるのは、元恋人とかですか?」
なるべく悪気がないように、柔らかい口調で聞いたつもりだが、マイさんは顔を伏せたままだ。これが真実だろうが調査結果には変わりないけど、彼女の表情に少し引っかかることがある。
彼女は口をゆっくり開いて答える。
「そう、ですね。」
過去になにがあったかは分からないが、彼女はこれ以上言葉を続けなかった。まぁ話したくないことは誰だってあるだろう。僕だって、蓋をしてしまっておきたいことぐらいあるからね。
気まずさなんか気にしない!
こんな精神だからノンデリなんだと思う。




