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真実は分からずとも(3)

さてここから調査していきます。

果たして、先輩は誰と映画に行くんだろう?

ちなみに僕は映画を一人で見に行く派です。

 まだ秋ごろだというのに、夏の暑さが残っている。駅前でリオと待ち合わせしているのだが、少し汗ばんできた。ローザはというと駅中の自販機から購入したアイスを食べていた。私の分も買ってきてくれたようで、二人でアイスを食べながらリオを待つ。

 少しすると、こんな暑さなど忘れているかのように、元気よくこちらに手を振りながらやってきた。

「おーい!お待たせ!あ、アイスいいなぁ私も後で買っちゃおう~。」

 私はローザと探偵をしているため、こういう尾行や張り込みには地味目な服装を着ているのだが、リオはそんなこと考えていないのか、お出かけ用のオシャレなワンピースを着てきた。

「リオ、なにその服装。遊びにいくわけじゃないんだから、バレたらどうするの?」

 注意するが、なんとも響いてなさそうな表情だ。

「だってぇ、意外とこういう格好の方が自然だってぇ。木を隠すなら森の中っていうでしょ?」

 決め顔で胸を張るリオに、溜息が出てしまう。

 数分後、駅前広場の木陰で、三人でアイスを食べている。そろそろ恋愛映画の上映時間だ。映画館へと入っていく人の波を見つめる。しかしどれがその先輩なのだろうか。私とローザは分からないながらも映画館入り口を見つめる。

 リオはその先輩の顔を友達から教えてもらったのか、映画館にはいる二人組を見て声を上げた。

「あっあの人が先輩の人だよ!」

 ビシッと指をさして、子犬のようにはしゃぐ。

「話を聞きに行かないといけないけど、ネコさんどうする?」

 正直、いきなり見ず知らずの女性が声をかけてきたら怪しまれるし、上手く情報を掴めない気がする。そう思い視線をリオとローザに向ける。

「二人で聞いてきてくれる?」

「ネコさん、ズルしてるでしょ?」

 ローザから冷たい視線を感じるが、無視する。

「こういうのは適材適所よ。リオは同じ学校なんだし、この中じゃ一番怪しまれないでしょ。」

 そう言わてリオは少しノリノリのようだ。

「確かに!ミヤ姉頭良い!そうだよ、ローザさんも一緒に行こうよ!」

 そう言いながら、ローザの腕に抱きつく。

「私たちも、恋人のフリして行こうよ!そしたら声かけても変じゃないって!」

 リオの突然の行動に、硬直するローザ。少しの間の後、深く息を吐く。

「あー、ごめん、そういう事はできないから、悪いけど一人で行ける?」

 ローザの言葉に、残念そうな顔をする。

「えー。……わかったよ、一人で行ってくる。でも、ちゃんと情報は取ってくるから期待しててね!」

 リオを見送ると、その視線をローザへと移す。ローザはリオに抱かれた腕を擦っている。よっぽど力強くつかまれたのだろうか、まったくリオの私利私欲にも困ったものだ。

「ローザ、大丈夫?」

「えっうん、大丈夫大丈夫。ちょっとびっくりしちゃったかな。」

 茶化すように笑うが、その瞳は少し影を感じさせた。やはりまだ恋愛ごっこでも辛くなってしまうのだろうか。たわいもない話でこの空気感をごまかそうと試みるも、私の気遣いを察してか、ローザの方から口を開いた。

「まぁリオも年頃だからね。仕方ないよ、それよりネコさんもあれだけの行動力あった方がいいんじゃない?」

「なによ~。使える人材は使わないとでしょ?」

「ズルい探偵だな、この人。探偵ドラマだって、ちゃんと自分の脚で調査や聞き込みするっていうのに。」

「いいのよ。これが私、小虎探偵のスタイルなのよ。」

 「やれやれ」と言わんばかりの表情のローザを横目に、腰に手をあて少し格好をつける。使えるものはなんでも使う。もうあの失踪事件のように未解決にはさせたくないから。どんな些細な依頼でも、私は絶対に解決させる。改めて決意すると、無邪気な声と共にリオがこちらに走って来た。どうやら話は聞けたようだ。

「おーい。おまたせ~!」

「どうだった?」

「う~ん、それがね、やっぱり一緒に居た女の人は彼女っぽいんだよね。それにちょっとギャルっぽかったから、そういうタイプの子が好きらしい!」

 先輩の恋愛事情を知れてテンションが上がっているのか、その目は爛々と輝いていた。しかし私は内心、落ち込んでいた。恋愛絡みの依頼にはよくあることだが、必ずしもいい結果になるわけではない。

 マイさんの気になっていた先輩には、すでに恋人がいたのだ。先輩の好きなタイプであるギャルに近づこうとメイクをしていたのかもしれない。それなのに……。

 この結果をどう伝えればいいのか、頭を悩ましているとローザも同じことを思ったのか口を開いた。

「そうか、しかしやはり、その先輩には好きな人が既にいたか。マイさんになんて伝えるか……伝えたあとでマイさんがどう思うか。」

「そうね。伝え方は考えておくわ。」

 いつまでも考えていてもしかたない。パンッと両手を叩き気持ちを切り替える。

「二人はこのあと予定ある?気分転換に私たちも映画観に行く?」

 私の提案にリオはワクワクを隠せないでいる。片手を元気よく上げて声を上げた。

「はーい、はーい!それじゃあ私もあの恋愛映画みたい!気にはなってたんだよね~、せっかくだし観に行こうよ!」

「お、いいね。確かあれでしょ?ホントの気持ちの女優さんが出てるやつだよね。」

「そうそう!あのドラマのせいで、主演の女優さん好きになっちゃってさ~。この映画も気になっちゃったんだよ~。」

「え~私も見ようかなぁ。ローザはどうする?」

「う~ん。僕はいいかな、映画は疲れちゃうから。先に戻ってるよ。」

 目を逸らして答える。その表情が少し気になった。ドラマは一緒に見れていたけど、同じような恋愛ものでも映画は別なのだろうか。記憶喪失のローザを一人にさせたくはないけど、ずっと私が一緒にいるのもお互いに気疲れしてしまうだろう。心配を抑えながら、ローザを見送りリオと一緒に映画館へと向かった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

小虎ミヤ。ズルい人ですね~。

目的のためなら、使えるものは何でも使う。

そんな狡猾な人になりました。

ちなみにリオも、若干、使えるものは何でも使う精神を持っています。

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