これは夢ですよねっ!!?
「家まであと少し~よかった,通り魔出てこなくて。」
私は悲鳴を上げている腕の筋肉をフルに使ってあと少しと自分に言い聞かせながら,深い安心感と共に少しだけ走る速度を速めた。
私が言った“通り魔”っていうのは,この頃この街だけじゃなくて各地に出現してる実態の掴めて無い者なんだ。
姿はそれぞれ違ってて,クジラだったり恐竜だったり。
どこかの科学者は実態の無いアメーバ状のエイリアンだとか吐かしてる人もいる。
…エイリアンとか在り得ないよね。
でもその通り魔に触れるとたちまち眠っちゃうんだって。
そしていつかひょっこり目を覚ますんだけど,その間眠っちゃった人は物凄く恐い悪夢の中をさ迷ってるんだって。
…でも未だに目を覚ましてない人だって居るの,恐いでしょ?
「恐竜だったらまだしも,クジラだったら私死んじゃうかもね~なんて」
冗談をポツリポツリ言いながら私は空を仰いだ。
街灯の影響で一等星や二等星以下の星々は全部霞んでいて,月よりも街の灯りの方が明るく輝いるせいかで三日月だって霞んで見えてしまう。
底無しの深海をそのまま空に浮べたように暗く黒い空は,いつもとなんら変わらない普通の空だった。
「…ちょと一休みしようかなぁ」
これ以上休憩無しでは腕が千切れると判断した私は,目の前に見えた茂みで一休みしようと決めた。
~☆~☆~☆~
「しっ!変な感じが近づいてくるっ!」
「…私には夢悪魔の気配はしないアル。ホントに居るカ?」
この時私が一休みしようとしていた茂みの裏には先程の少年達が身を潜めて(?)いた。
「…ん?でも何か変な気配だな…って旬藍?」
「水筒の筒ってこんな字だったアル?」
そう言って旬藍が書いた字は流。
「ちょっと待て…それ…って…」
少年が間違いを正そうとしたときにはもう遅かった。
ゴゴゴゴゴゴ…
水流と書かれた文字がドロリと水に溶けるかのように溶け,そこからどっぷっと水が溢れ出した。
「あああぁ!間違ったアル!!」
「どじーっっ!」
少年が翼を広げるよりも早く,身を斬るような水流が2人を飲み込んだ。
~☆~☆~☆~
一方私は休もうと思っていた茂みが目の前に迫っていたことにふぅと安堵の息を漏らした。
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「アルうぅぅぅぅぅ!!!」
…?…
え,今悲鳴が聞こえた気が――――
ザザザァ――――!!
「水っ!?」
私は蛇に睨まれたカエルのように硬直した。
大津波でも起きたかのようなもの凄い水量に足がすくむ。
そのままどうにも出来ずに,私はパンと一緒に水に飲み込まれた。
『ぎゃあああぁぁぁ……』
自分の体がどんどんと水底に沈んでいく感覚がした。
まるで洗濯機の中に放り込まれたように自分の体がどんどんと流されていく。
そして私の意識が闇に沈んだ。
~☆~☆~☆~
「旬藍のせいだぞ,この子が目覚まさなかったらっ!」
「うぅ,ごめんアル。ってかマジでスミマセンですネ…」
誰だろ,聞きなれない声…男の子と女の子かなぁ?
「…無理矢理起こすか?」
「やめるアル!このコ水で失神したネ!月架が引っぱたいたらチーンでぽっくりアルネ!」
何か言われてる…私の事かな?そうだったら起きなきゃ。
「あっ,動いた!生きてる,良かったぁ~俺ちょっと見回りしてくるから,旬藍そのコ殺すなよ」
「余計なお世話アルっ!さっさと行ってくたばって来いネ!!」
生きてるって…私まだ死にたく無いんですけど。
そう思いつつも私はゆっくりとまぶたを開いた。
まず始めに見えたのはクロワッサンのような三日月。
あ,良かった。天国じゃないな。
そんな事を思いつつ,上体を起こす。
一瞬クラッとめまいがしたけど8割方は大丈夫。
それより…さっきから聞こえるこの声はなんだろう?
私が辺りを見回すと不意に上からバッサバッサと聞き慣れない音が聞こえた。
鳥が羽ばたく音にも似ているが,にしてはヤケに大きい。
「ここって…」
「ここはなんちゃらって街からちょっと外れた林アル。ちなみに今は9:00であるからしてそろそろ夢悪魔が出る時間ネ。」
私の丁度頭上から聞こえる声にはっとし,上を見上げる。
すると―――
「你好☆」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁっ!!」
ちょっと待って!女の子が空飛んでるんですけど!
背中に生えてる純白の羽が天使みたい…ってんなワケあるかっ!
「これは夢だこれは夢だこれは夢だこれは」
「現実アル。」
在り得ない有り得ないありえないってこの状況!
何で女の子が空飛べるわけ!?もしかしてこの子が今流行の通り魔ですか!アメーバですか!?エイリアンですかああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!??
『理解不能です 理解不能だっつのっ!!』
突然の理解しがたい…つか全く理解不能の出来事に頭がグツグツと煮えるミネストローネになった様だ。
ここでこの少女をもっと理解しよう。
私はぶんっと頭を振ると,頭上でバサバサ羽を動かして静止している少女の顔をまじまじと穴が空きそうなほど見つめた。
夕焼色のお団子ヘアに丸くぱっちりとした碧の一重。
スラリと整ったスタイルに色白の華奢な体。
服はピンクのチャイナっぽい服だが,ミニスカートのように丈が短い。そしてフリルだ。
腰に巻いてある皮のベルトに釣り下がっているのは手のひらサイズの小さな土器の壷と真っ白い毛が植毛された筆。
そして何より異様なのは,背に生えている純白の羽。
白く輝くふわふわの羽毛が何枚も揃った鳥のような羽。(でかいが)
Ruraを進めましょう…
このお話一話が長い気がします(´ωゝ)