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炎において,我最強なり 後編

「やっぱり無理だって!私人間だもん!!「~アル」って語尾に付けても旬藍みたいに魔法(?)使えないし,幾ら月架みたいに変態になっても飛べないもん!」


「俺の扱い酷くね?旬藍はまだしm(小声)「大丈夫大丈夫!絶対大丈夫ネ!!絶対に大丈夫だからさっさと行ってくたばって来い。当たって砕けろヨ!」


オイイィィィ!!!!


「…いや…くたばって来いは酷くないですか?っていうより砕けちゃ駄目だからこの場合!それよく友達に告白間際に言われる言葉じゃん!この場合砕けたらガラスのハートが壊れるで済まないから!命と言う名のハートが壊れるから!!」


必死に抗議しても旬藍は聞く耳を持ってはくれない。その「大丈夫」という過剰なまでの自信は何処から来るの!?マジ教えて!!


その前に…


「旬藍何処が力残ってないなの!?こんなにピンピンしてるのに!」と私。しかし旬藍は,


「何を言うか!内なる力が空っぽよ!体力と内なる力は違うんだよ!!!」


と訳の分からない事を言ってきた。


内なる力ってなんだよ!っていうかその前にそんなに体力があるなら行って来いよ!


しかしこれは口には出さなかった。これを言ってしまうと話が脱線する恐れがあるからである。


「とりあえずレッツゴ…」


旬藍の言葉が途中で途切れた。


「空…から…何か…」


空を見上げる。ヒョォッと空を斬る音が気味悪く響き,“何か”が重力に沿って直線落下してくる。

ドサっと鈍い音が闇夜に鳴いた。煌く“何か”が思い切り地面に叩きつけられる。

キラキラとダイヤモンドのように輝く小さなつぶてが星屑のように煌いた。


その“何か”は,明らかに人だった。

月光に煌く氷の翼 氷の尾


それを覗けば全て人間。


あれ…?


その流れるような白銀の思わず撫でたくなるような髪に見覚えがある。


「亜…威守――」


あぁそうだ。やっぱり亜威守だ―って…物事を冷静に処理してる場合か柴炎!落ち着くのよ私!もう落ち着いてるかっ,じゃぁ…感情に身を任せるのよ私!!って…何かそれも駄目な気がするーっ!


目の前が真っ白になる。こういう場合自分は何をすればいい?


私の頭の中には救命実習で学んだ心臓マッサージと人工呼吸がぐるんぐるん渦巻いている。


いや,その前に脈はある!?そうだ!脈を…って何処で計るんだっけ!!?


よくドロドロの刑事もんでは死体の首に手を当てて「し…死んでいる…!」とかいう展開が一般的だけど!死んでほしくないし,ましてや絶対死んでほしくないし!! あ~もうっ,何言ってるんだ私!落ち着け私!私私私――!


旬藍は両手で頭を覆い,うずくまったままガタガタと震えている。月架はと思い見てみると,思わず殺傷的な眼差しを向けてしまうようなあほ面で鼻提灯を膨らませていた。今ここに尖ったものがあったらそれで月架を刺し殺したい!今ならカッとなって殺人に手を染めてしまった愚者の気持ちがほんの少し分かるよ。うん。


しかしすぐに私の殺意は消えた。

月架の顔が歪み,苦しそうに一息吐いたのだ。

苦しんでいる?月架が?どうして―!?


駄目だ,焦っちゃ駄目。ここは物事を冷静に―。


私はまずうつ伏せになって微動だにしない亜威守の右手を取った。氷のように冷たいので,一瞬ビビったがそれが亜威守の個性だと信じる。(無理矢理)そしてやっと思い出し,手首に浮き出た血管に手を当てた。すると規則正しいリズムでぴくんっ ぴくんっと脈が刻まれていたのでとりあえずは安堵する。大丈夫,失神してるだけだ。


「旬藍,旬藍。」

「あ…アタシのせいだ。アタシが…アタシが加勢に行かなかったから!」


駄目だ,完全にパニックになってる。落ち着かせないと。


「旬藍,亜威守はちゃんと生きてるよ。寝てるだけ。」

「アタシが…アタシが…どうしよう柴炎!月架も居ない,どうしよう,今まで亜威守がやられるなんてこと無かったのに!」


旬藍が叫ぶ。私は何も出来ない,いくら私が宥めても,慰められない。

旬藍の自責の念は,自分の心の中にも突き刺さった。


 ―私は 無力だ―


切に願った。自分に力が欲しいと願った。何でもいい,今のこの状況を打破できるのなら,どんなに人道外れた禁忌の力でも欲しいと思った。


でも私は何も出来ない 私は人間だから―


視界が闇に沈む。何をしていいのか分からない。頭の中が白く染まって,視界が黒に染まる。


私は今 何をすればいい?


「柴炎ー!!」


黒々とした闇が真っ赤に染まった。旬藍の悲鳴に近い声が耳に届いたが,自分の体は自分のものじゃないみたいに,動かなかった。


熱…い…


体が熱い。まるで紅蓮の炎の中に放られたよう。でも不思議と嫌な心地はしなかった。


深い睡魔に襲われ,意識が遠のき掛けた時,その声は私に語りかけた。


『力が欲しい?』


声がする。男のヒト?女のヒト?分からない。力?力が欲しい。貴方は私に力をくれるの?


『力が欲しい?』


欲しい。私は力が欲しい。貴方はそれをくれるの?


願う


まぶたをあける。視界が闇に染まったのは,知らぬうちに自分が目をつぶっているからだった。

目を開けると同時に,痛いほど明るい光が飛び込んでくる。


『力が欲しい?』


「欲しい…!」


唇が言葉を紡いだ。微かに笑う天使のような音が聞こえたかと思うと,自分の気持ちがすっと楽になっていくのを感じた。


『炎において 我最強なり  炎において 我の上に立つ者は居らぬ』


あの声が そう告げた。


紅蓮の炎が,私の中に吸い込まれていく。


体が 軽い


「飛べる!」


地面を蹴る。体が軽い。自然と背中に慣れない力が込もるのが分かった。

耳元で風が唸った。上へ上へ 飛べる もっと高く。


『自分の力に身を任せて。貴方は強い』

「私は強い…」


あの声を繰り返すと,自然と力が沸いて来た。目の前にはあの真っ黒な狼が居る。ルビーのように妖しく輝くその目は,既に獲物を狩るような戦闘色に染まっていた。


その狼が鋭く光る歯がびっしりと並んだ口を大きく開ける。その中心に,熱気とともに炎が集まるのが分かった。それはぐんぐんと大きくなっていく。


「自分の力に身を任せる…」


私は祈るように腕を組んだ。そしてそれを口元に持っていく。すっと息を思い切り吸い込むと,体の中が熱くなるのが分かった。


狼の口から放たれた火球が,一直線に私に迫る。

よけようとは思わなかった。かわりに私は組んでいた手に力を込め,息を思い切り手に向かって吹き込んだ。


火炎放射の様に私の手から茜色の炎が広がる。それは敵の放ったものをすっぽりと包み込むような膨大なものだった。

私の炎が火球を包み込む。そして自分の炎が相手の火球を燃やしたのだ。信じられないことに。炎が炎を燃やしたのだ。


息が続く限り,手に息を吹き込む。その間にも背中に力が込もっていたので,正直辛かった。

火球を飲み込んだ火炎は勢いを落とす気配は無い。徐々に広がっていく炎が,遂に狼の黒い体ごと包み込んだ。


「…ほ…けほっ,げほっっ。お…おえぇ…気持ち悪……っ…」


手を解き,私は思わず咽た。思わず解いた手を喉に当てる。喉が焼けるように熱くて,頭がクラクラした。


でもやった。真っ黒な狼かと思っていたものは,よくよく見てみると小さな子犬だった。

くりくりとした黒い瞳,ピンと立った栗毛のその子犬は,わたわたと足をバタつかせながら落下していく。


「危ないっ!」


幾ら敵だったとはいえ,目の前で落ちていく“可愛いもの”を見捨てることはできない。背中に力を込めて手を伸ばすと,仔犬の体が私の腕の中に納まった。

ほっと安堵したその時だった。


いきなり襲ってきた強烈な睡魔に,思考を呑まれる。体が鉛のように重くなった。


「…れれ…?」


やばい 眠い 意識が持たないや――


体が傾き,頭が地面のほうに向いた。背中に力が入らない…凄く…眠い……


何か体を冷たいものが覆ったとき,私の意識は黒に沈んだ。

さぁっ,次からいよいよ学園h((蹴


やっと終わった前フリ。何とか10話以内に収めたっ((♪

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