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【033】ラルフ子爵の報告、ルトニア再興への最終準備

ルーク王子は、ラルフ子爵とハンナからルトニア王国再興に向けた進捗報告を受けていた。


まずラルフが口を開く。


「すでにご報告済みではございますが、最終確認として改めてお伝えいたします。


四段構えの進捗について申し上げます。


第一段、ダレル団長率いる傭兵団五千名は、既にサイサリス公国へ帰国しております。

こちらを離れてから十八日ほどが経過しており、間もなく公都に到着する見込みです。

すでに遠く離れており、王都で何が起ころうとも即座に戻ることはできません。


続いて第二段、エデッサでの反乱についてです。

二十日前、アラスター侯爵は四千名を率いて再興の狼煙を上げました。

我らが流した偽情報により、エデッサへ向かったサイサリス公国軍一千名は、アラスター侯爵の手で撃破されました。

これに慌てたオリバー大公は、二日前にビアトリクス公女へ一万の兵を与え、鎮圧に向かわせています。

この結果、ルトニア王都に残るサイサリス公国軍の兵力は、およそ一万三千となりました」


ルーク王子は満足げに頷き、問う。


「アラスター侯爵の戦意はどうだ。

兵四千でビアトリクス公女の一万を受け止められると考えているのか」


「その点はご安心ください。

アラスター侯爵は、兵が二千でも十分に戦えると申されていました。

そもそも今回の目的はサイサリス公国の兵力を引きつけることであると、よく理解しておられます。

最悪の場合でも、公女の一万を釘付けにしたまま戦わずに退くとまで仰っていました。

さらに、ルトニア王国再興の火蓋を自ら切ることを、この上ない名誉と感じておられるようです。」


「かの御仁がそのように言うのであれば安心だな。

これでサイサリス公国の兵力は一万三千か。

オリバー大公が兵力の減少を気にして、傭兵団を呼び戻すようなことはないのか。」


ルークがそう尋ねると、ハンナが静かに応じた。


「昨日、オリバー大公とローガン侯爵が話し合い、傭兵団を呼び戻すことを決めたようです。

伝令を出すと伺いましたので、ラルフ様にもお伝えしましたが、その後はいかがでしょうか。」


ラルフ子爵はわずかに笑みを浮かべて答える。


「聞くまでもありません。

その伝令が傭兵団に届くことはありません。

今ごろは街道を外れた林の中で屍となっているはずです。

三日か四日ほどは、行方を案じる者もいないでしょう。」


ラルフ子爵の手際の早さに驚き、ルーク王子とハンナは思わず目を見合わせた。

ラルフ子爵は、何事もなかったかのように話を続けた。


「第三段、オリバー大公の暗殺について申し上げます。

こちらで準備した娼婦を通して手はずを整えております。

深夜に実行すれば、翌朝にはサイサリス公国軍の将軍らが混乱に陥ります。

その混乱に暴動を加えれば、動揺は一気に拡大し、王都の統制は失われます。

この連鎖によってサイサリス公国軍は大きく動揺します」


「そして第四段、ルーク王子による王都奪還でございます。

リアム侯爵とフランク王国の停戦交渉は既に成立しております。

その条件として、ルーク王子と王国の姫君との婚約が取り決められました。

これによりリアム侯爵は戦線を離れ、一万五千の兵を率いてこちらへ進軍しております。

間もなく王都に到達し、最後の段階を成すこととなるでしょう。

ですが、何十年も争ってきたフランク王国と和議を結べるとは、正直、想像もしていませんでした」


ルークは静かに頷き、過去に思いを馳せるように語った。


「もとは一つの国だった。

この大陸にあるすべての国は、かつてルトニア王国から分かれたにすぎない。

とりわけフランク王国は、ルトニアと国境を接していたがゆえに長く戦が続いた。

かつてはむしろ友好関係にあった時期もあったのだが、サイサリス公国によってルトニアが滅ぼされたことで、フランクの風向きも大きく変わったのであろう」


「確かに、我々が口にすべきことではないかもしれません。

しかし、長年争ってきたフランク王国ではなく、新興のサイサリス公国に滅ぼされたというのは、言葉に尽くしがたい屈辱だったのでしょう。


とはいえ、フランク王国から姫を迎えるとなれば、ルトニア王家に他国の血が入ることになります。

旧王族の中には反発の声も上がるかもしれませんが、その点は問題ないのでしょうか」


ルークはわずかに口元を緩めて答えた。


「すでに一度、サイサリス公国に滅ぼされた身だ。

それに私は、ビアトリクスの婿にされる可能性すらあった。


今さら血筋にこだわる意味はない。

むしろ父が亡くなり、私が継いでからようやく風向きが変わり始めた。


この好機を逃すわけにはいかぬ。

生まれてくる子が聡明であれば、ルトニアとフランクを統べる新たな国家として歩ませるのも悪くはない」


そう語った後、ルークはふっと苦笑を浮かべた。

その様子を見届けてから、ラルフ子爵が口を開いた。


「最後に、ベネット侯爵の件でございます。

ルーク王子からの手紙を受け取り、ベネット侯爵は王子を支持すると明言いたしました。

もともとルーク王子は、敵にさえならなければ良いとお考えでしたが、単に敵対を避けるにとどまらず、むしろ強い好意を示しております。

やはりファルジュ王との確執があったようで、改めてルトニア王国への忠誠を誓っております。

ただし、コンラッド侯爵を突破するのは極めて困難との見解を示されました」


「コンラッド侯爵を突破するのが難しいという話は、すでに聞いている。

だがその一万を引き付けてくれているからこそ、我々が動けるのだ。

オリバー大公の暗殺と王都奪還が進めば、コンラッド侯爵は領地に戻らざるを得まい。

その時こそ、ベネット侯爵の出番となる。そのように伝えてくれ」


気がつけば、どうしても先のことばかりを考えていた。

これは油断かと自問したが、答えは否である。

ただ、胸の内に高揚があることだけは自覚していた。


ルークは謁見の間で受けたあの屈辱を決して忘れていない。

何としてもルトニア王国を再興し、サイサリス公国をこの地から追い払う。

そして必ず滅ぼす。

その思いは、すでに信念として彼の中に根を下ろしていた。


「二日後の夜だな」


ルークは鋭い視線でラルフ子爵を見つめた。

言葉を交わさずとも、ラルフ子爵は静かに頷く。


今、ビアトリクスもダレル団長率いる傭兵団も王都を離れている。

コンラッド侯は南部でベネット侯と対峙している。


異変が起きても、軍勢が即座に戻ることはできない。

さらに明日には、リアム侯が一万の軍を率いて王都近辺に到達する。


すべての条件は整っていた。


二日後の夜、オリバー大公は暗殺される。

そして翌朝、王都の民衆が暴動を起こし、混乱が広がる。

その混乱に乗じて、ルークがリアム侯の軍勢を率い、王都へ突入するのだ。


指揮官を失ったサイサリス軍一万三千は、混乱の中で必ず追い落とされるだろう。


互いに視線を交わすだけで、すべては通じていた。

言葉は不要であった。

その時は、すでに目前に迫っていた。


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