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第22話

「ええ、分かってる。どうやら、ちょうど私たちが居る階層で発生したみたいよ」

 焦ったような口調で急いで要件を伝えてくるお姉さんに対して、私はできるだけ冷静な口調を心がけて言葉を返す。

 その間にもダンジョンの奥からは、強い気配と刺すようなプレッシャーが私たちを襲ってくる。

 チラッと凛子の方を確認すると、彼女は少し表情を曇らせていた。

「大丈夫? 今ならまだ、逃がしてあげられると思うけど」

 戦えないというのなら、むしろこの場に残られる方が迷惑だ。

 そう考えて声を掛けてみると、一瞬だけ逡巡した凛子は小さく首を振って答える。

「ううん、大丈夫。私だって探索者だもん。自分の身くらいなら守れるよ」

 そう言って真剣な瞳でまっすぐ見つめてくる彼女に、私も頷きながら微笑む。

「いいわね。そういうの、好きよ。だけど残るなら、私の指示に従ってもらうわ」

「もちろん! なんでも言いつけてください!」

 力強く頷いた彼女は、ふとまだ配信を続けているカメラへと視線を向けた。

「ところで、配信はどうしたらいいかな? 切ったほうがいい?」

「そうね……」

 どうしようか悩んでいると、私より先に電話先のお姉さんが答える。

『配信はそのままにしておいてもらえると助かるわ。その方が、こっちでも状況を確認しやすいし』

「なるほど、そっちでも見てるのね。なら、配信はこのままつけっぱなしにしておきましょう」

「りょーかい! というわけで、コメントのみんなも私たちのこと応援してね」


 ”応援なら任せて!”

 ”二日連続でイレギュラーなんて、運がなさすぎる……”

 ”Sランクと一緒の時だったのが不幸中の幸いか”

 ”むしろ師匠ちゃんがイレギュラーを呼び寄せてる?”


「ちょっと。人を厄女みたいに言わないで。私だって、こんな頻繁にイレギュラーに当たるのは初めてなんだから」

 実際、今まで二日連続でイレギュラーが起こることなんてほとんどなかった。

 しかもそれが両方とも同じダンジョンだなんて、私の知る限り一度もなかったはずだ。

「ともかく、発生源の方へ向かってみましょう。近くに他の探索者は居ないみたいだけど、いつ誰が巻き込まれるか分からないし」

『二人とも、対処を頼んでる私が言うのもなんだけど気を付けてね。危なそうだったら、すぐに撤退するのよ』

「はいはい、分かってるわ。サクッと終わらせて帰るから、報告書の作成は手伝ってね」

 それだけ言って電話を切ると、私と凛子は小さく頷きあって同時に走り出す。

 不自然なほどにモンスターの居ない通路を進んでいくと、やがて目の前には少し広い空間が現れる。

「……これは」

「もしかしなくても、これがイレギュラーの原因ってことでいいのかな?」

 目の前に広がる空間の中央。

 そこではまるで私たちを待ち構えるように無数の岩を纏ったトカゲ(ロックリザード)たちと、それを従えるように2匹の|宝石を纏った巨大トカゲ《ジュエルリザード》が佇んでいた。


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