服は着る人を選べない
日焼けしていない肌は青白く、喀血したことによりそれは鮮明になった。先程まで侵入者を一人で叩きのめした人物と同じには見えない。
ぐったりと椅子に沈み込む青年を助けたサギリは、手際良く侵入者を縄で縛り上げ、中庭の片隅に積んでいった。
ひらりと翻る紺色のスカート、茶色の髪を包むキャップ、裾にフリルがあしらわれたエプロン。青年と変わらないくらい儚げな顔立ちをしているが、身体つきはがっちりと鍛えられていると解るほどだ。
侵入者を積み上げていくサギリの全身を確認した青年は小首を傾げる。
「サギリ、服を新しくしたのかい?」
商家程度の邸しかないことからも推測できるように、青年はあまり裕福なほうではなく、サギリもそれを承知で雇われているため普段はとても質素に暮らしていた。
けれどサギリが着ている服が新品のように思え、青年が問いかければ「ロングスカートは破れやすいのが難点ですね」とサギリが唸る。
「そもそも破れるような行動をしなければ良いと思うんだけど」
「それでは護衛になりません」
そう、サギリは女性使用人ではなく、青年の護衛だった。
中性的な顔つきに女性使用人服は似合っているが、鍛えられた身体には似合っていない。
そのひどくアンバランスな事実をサギリは受け入れず、女性使用人であれば侵入者も油断するという思い込みから女性使用人服を着ているのだ。
幾度となく青年は、騎士服か護衛服のほうが動きやすいだろうと提案したのだが、未だ聞き入れてもらえない。
幼馴染みでもあるサギリは青年の病状も理解しているため解雇も受け入れてくれず、よって青年が諦める方向で折り合いがついてしまっていた。