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始まりの日
嘗て世界には魔法があった。
その世界の、とある帝国の皇帝は臣下を招集し、最期の魔法を使用した。
招集した臣下――公爵、侯爵、伯爵、子爵……とそれぞれの家紋を模した紋様が宙に浮かび上がり、くるくると空を回り飛びながら、やがて黄金の鍵となり臣下の手に収まった。
「今後、その鍵が貴族としての証となる」
戸惑いの表情から一変、皇帝の言葉によって欲望が露わになった。
爵位とはそうそう手に入るものではなく、また簡単に陞爵することもない。しかし皇帝の言葉を借りれば、鍵があれば爵位を示せる。
そのことに気づいた一人が鍵を奪おうとし、その行動によって皇帝が爵位を奪い合うことを望んでいるのだと、臣下は理解した。
場は騒然となり、臣下は鍵を奪おうと躍起になって、会場だけに留まらず国中へ広がっていった。
皇帝がその光景を無表情に眺めていたとも知らずに。
騒動は数百年経った現在まで続き、奪い合いは加速し、しかしたった一つ、誰にも奪われない鍵があったという。