04-ミーナの疑惑
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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アルトと別れたミーナは自分たちが所属する探索者組合の本部へと訪れていた。
「アルトにはああは言ったけど…… 来たくなかったな…… 」
ミーナは、建物の前で軽くため息をついてから、気合いを入れるようにして、姿勢をただして建物の階段を上がっていると、ミーナに気がついた顔馴染みの守衛が声をかける。
「ミーナお嬢珍しいな? こんな時間に呼び出しか? 」
「今日はお休みだよ。ちょっと用事があってね。それはいいとして、お嬢はやめてよ! 」
「そうだったな、けど、お嬢様に変わりねぇだろう? ワールドトレック理事長の娘なんだから」
「親の七光りみたいで嫌なんだよぉ~ 」
ミーナやアルトが所属する探索者組合の現理事長はミーナの母親である。そもそもことの始まりが、アルトの両親や両親の仲間たちによって結成された探索者チームのワールドトレックであり、数年前までは、アルトの父親が理事長を勤めていたが、アルトの両親とミーナの父親は、不慮の事故で死んでしまいミーナの母親と仲間で引き継いでいる。その結果、経営者不足の煽りを受けて、ワールドトレック探索者組合傘下のダンジョンであるデイリーワールドトレックの運営をミーナと実兄のルイガノ、そしてアルトが運営を引き継いだ。理事の親族であるのだが、3人ともその資格を有するから配属されてはいるのだが、中にはやっかむ人間もいるのが人の世である。しかし、ミーナを昔から知る人間は、ミーナたちを応援してくれる者もおり、守衛はニヤニヤとしながらミーナをからかうように口を開いた。
「しかし、こーんなちっこかったミーナがこんなにべっぴんさんになるとはなぁ そろそろ結婚の話があってもいいだろう? 」
「か、からかわないでよぉ わたしはまだそういう気はないもん」
「いい加減アルトの世話焼きもいいんじゃねぇか? アイツも一端のダンジョンシーカーになったんだから」
「ま、まだアルトは子供なんだから! 両親いないんだからわたしがお姉ちゃん代わりしないと、ろくなことにならないわ! 」
昔からアルトとミーナ、それに兄のルイガノは、兄妹のように過ごしていたから、大人にはその関係性が、今も続いているように見えるようだ。誰もミーナの初恋の相手が誰かは気がついていない。ミーナはその辺りを勘ぐられたくないのか慌てて手を振って、守衛から離れ建物へと走って入り、3階の一室へ入ろうとドアノブに手をかけると、中から話し声が聞こえる。
「ダンジョンの利用者が減っているのは、わかってるんだろ! なのに手をこまねいているのは責任者のお前らだろ! 」
「そんな横暴な僕たちだって手は尽くしていますよ。父たちを失って、ウチの組合から他の探索者組合に移る探索者や新たな若い探索者の加入が減るのは、想定していたはずです。それをダンジョン運営の責任にされるのは納得がいきません。それに言わせてもらうならば新たなダンジョン探索も失敗しているではないですか、運営部にも責任はあるかもしれませんが、開発部にも責任はあると思います。しかし、今はそんな擦りつけあいをしている場合ではありません」
部屋から聞こえたのはそんな口論であったが、想定していたことなので、ミーナは勢いよくドアを開けて中へと入る。
「お疲れ様でーす! いや~ 忘れ物しちゃったなぁ~ 」
ミーナは中の口論は聞こえなかったことにして、明るい声を出して中にはいる。
「ミーナ…… 後は会議でよろしいですか? 」
「結果がでなければ責任者の解任案を出すからな」
事務所にいたのはミーナの実兄のルイガノと中年男性だった。ルイガノが、ミーナに一度視線を向けてから中年男性に声をかけると中年男性は捨て台詞を吐いてから部屋を出ていくと、ミーナはルイガノに声をかける。
「兄さん今の人って確か…… 」
「開発部のマーク理事だよ」
「また文句? 」
「ああ開発部のことは棚に上げて、こちらのダンジョン運営能力がないから、加入者やダンジョンの利用率が下がっているのは運営責任者の僕たちの責任だと言いはっている。確かにその責任の一端はあるのは理解しているけど、彼が言っているのは言いがかりに近いからね」
「わたしたちが責任者って言うのも気に入らないんだろうね…… 」
開発部のマークは、数年前に他の探索者組合から移ったので、ルイガノやミーナとほとんど関わりがない上に、年端の行かない若い理事長の子供が責任者をやっているのが、気に入らないようだ。ルイガノがミーナに声をかける。
「ミーナはどうしてここに? アルトは平気なのかい? 」
「あ、そうそうアルトは目を覚まして元気だよ。今は図書館に行ってるよ」
「アルトが図書館に? 」
「そう、いろいろと調べたいんだって、今回のことでちゃんと身を入れて仕事がしたいんだって、今回のことが良いクスリになったみたいだね」
アルトが図書館に行っていることは、ルイガノにも驚きの出来事のようだが、ミーナ話し終わるとルイガノは改めてミーナに尋ねる。
「それでミーナはどうしてここに? 」
「それでアルトが会議前に今までの議事録読みたいって言うから取りに来たのホントビックリだよね。アルトに何度も病院行く? って聞いちゃったよ」
ミーナは、楽しそうにルイガノへと話す。ルイガノもアルトの変わりように驚いてはいるがその表情はアルトの無事に安堵している。
「それじゃ帰ったらアルトに会うのが楽しみだ」
「そうだね。今日は兄さんも早く帰って来てごはん作って待ってるから、議事録はあっちの部屋だよね」
「ああ、今週中には戻しておいてくれれば持っていってかまわないよ」
ミーナは、部屋の中にあるドアを開けて隣の部屋へと入る。少し小さめの会議用の部屋と書類を管理する棚が部屋のすみに置いてある。ミーナは棚から議事録のファイルを取り出し中を確認して小脇に抱え部屋を出ようとすると、視界のすみに鍵付きの書棚が目に入った。ミーナはいつもなら気にならないのだが妙な胸騒ぎがする。その書棚には重要な書類やダンジョン運営部に所属する者人事ファイルが保管されている。ミーナは運営責任者の上に人事も担当しているので、閲覧する権限もあり、この部屋にも入り慣れているので、いつもなら気にならないのだが、今日は妙に気になるのだ。ミーナは小脇に抱えるファイルをテーブルに置いて、書棚の鍵を開けて人事ファイルを取り出し近くの椅子に座りフォイルを読みはじめる。
「何?…… この固有スキル…… 」
ミーナは、アルトの人事ファイルを見て驚きを隠せないでいた。固有スキルとは個人が生まれもって持つ才能というべきモノであり、途中で新たなスキルを身につけることはないのだが、アルトの人事ファイルの固有スキル欄にひとつ増えているのだ。しかも、このファイルに記入はミーナの仕事なので他の者が書くことはないし、ミーナが記入した記憶もない。
「スーパーバイジングって何? 」
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
N6940GN
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