01-異世界での目覚め
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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「アルト…… 起きた? 」
「…… ? 」
見上げると見慣れない天井と、見回せば石というかブロックのような壁が視界に入った。
「入るよ♪ あー 良かったぁ2日も寝てたんだよぉ! なにか食べる? お腹すいてる? 」
「…… 」
「アルト? 大丈夫? 」
部屋に入ってきたのは金髪碧眼の美少女だ。アルトいや早乙女は困惑しているところへ脳裏に別の記憶が流れ込んでくる。
「ミーナ…… 」
恐る恐る早乙女は流れ込んだ記憶から少女の名を呼んでみる。少女は早乙女のベッドのすみに座りにこりと微笑んで口を開いた。
「心配させないでよぉ! そうだよミーナだよ! 本当に心配したんだから! 熱とかないよね? 」
ミーナは早乙女の額に手を当てて熱を測り熱がないのを確認して安心するように息を吐き話を続ける。
「先生が1週間は安静にだって、兄さんとお母さんも仕事は気にしなくて良いからって、カラダ動かせるなら街ブラブラしててもいいみたい。わたしはアルトが目を覚ましたなら明日から仕事にいくね。はい、お水。で、お腹すいてるの? それともシャワー入る? 」
「あ、ありがとう」
早乙女はミーナから水を受け取り一気に飲みほした。
「ひとまずシャワー浴びるよ」
ミーナは少し早乙女の表情を凝視してから返答する。
「あ、うんわかった。じゃごはん用意しておくね」
ミーナはパタパタと歩いて部屋を後にする。早乙女はそのまま部屋の隣にあるシャワールームへと行きそこにある鏡で自分の姿をはじめて目にする。
「これがオレ…… 」
線が細い身体のわりにしっかりと鍛え上げられた肉体。女性と見間違えるような端正な顔立ちに後ろで結い上げられた少し青みがかった黒髪。
「こりゃ韓流アイドルも尻尾巻いて逃げるレベルだわ」
鏡でまじまじと自身の顔を眺める。美少年と言って過言ではないレベルだ。
「こんだけルックス良いと勘違いしそうだよなぁ」
早乙女は流れ込んできたアルトの記憶からモンスターと戦ってない時の記憶が、だいたい喧嘩しているか女の子を口説いている記憶だ。
「血気盛んな、ナンパ小僧かよ~ どうしよもねぇな。ミーナは幼馴染み…… 手は出してないな。ミーナの兄が…… ルイガノ…… ふたりの母親が…… 所属する探索者組合のトップか…… しかし…… アルトってバカだな…… 」
早乙女はシャワーを浴びながらアルトの記憶から先程のミーナから出た人物をたどる。そこまではいいが、アルトという少年は冒険者としては一流だが私生活ではだらしない少年だったようで、早乙女は呆れたように嘆息する。シャワールームから出てダイニングに向かう。この家はミーナとルイガノとアルトでシェアしていて、ミーナたちの母親とは別に暮らしているようだ。
「たくさん作ったからおかわりしてね♪ 」
「うん、ありがとう。それじゃいただきます! すごく美味しい」
ミーナの手料理は、どれも美味しい、燻製肉をシンプルに焼いただけだが、ソースはミーナの特製だろう。根菜類のスープも美味しく、パンもあることから小麦が主食の国のようで、保存のきく食材が多いようだ。ミーナはまたアルトを見て凝視している。その視線に気がついて早乙女は声をかける。
「どうしたの? 」
「う、あ、なんでもないよ! いただきます」
ミーナは慌てるように返答してフォークを持ち食べはじめる。部屋の雰囲気や食文化を見る限り異世界といっても、大きく変わった様子はない。些細な範囲で違いはあるが、充分近代的で早乙女もすぐに順応できそうだと安堵する。
「それでアルトは今日どうするの? 」
「そうだな…… 」
早乙女はアルトの記憶が生活する上でほとんど役に立たないと理解する。
「少し街を散策して…… 図書館とか行こうかな」
「と、と、えっ?! アルトが図書館!」
さっきからミーナの様子がおかしかったのはこれかと早乙女は気づく、今までのアルトは図書館など行く少年ではなかったのだろう。早乙女は苦笑しつつミーナに答える。
「たまにはいいんじゃないか? 」
「アルト本当に大丈夫? 先生に見てもらう? 」
「大丈夫だよ! あ、でも病み上がりだからミーナが平気ならつきあってもらえるとありがたいけど…… 」
「それは全然平気だよ! そうだね重傷だったからつきあってあげるよ」
「ありがとうミーナは優しいな」
「あ、アルトがわたしにお礼?! 」
早乙女は笑いながらミーナに感謝を伝えるとミーナはびっくりしたを絵に描いたような表情をしてから頬を赤く染める。早乙女は察知するこの少女は「幼馴染み負けヒロインポジションだと…… 」こんなに美少女で世話焼きで料理も上手なのに報われないなんてかわいそうすぎる。良い嫁になる素質を秘めているのに肝心の思いを寄せるアルトにはまったく届いていないなんて、早乙女おじさんは思わず涙する。
「あ、アルト! なんで泣いてるの! 」
「あ、すまないなんでもないよ。幸せになろうなミーナ」
「えっ?! 」
早乙女は年の離れた妹や姪っ子にするような微笑みで、ミーナの幸せを祈るように声をかけるが、それを聞いたミーナは別の意味で取ったようで顔を耳まで赤くして蒸発するのであった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
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