22-売られた喧嘩は捨て値で買う
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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理事長のアウディが、あらためて会議室へ入って来るが、監査官以外のニセンをはじめアーリエたちが入ってくる。全員が着席するとアウディが口を開く。
「ニセン大隊隊長からの申し出があり、会議を傍聴したいとのことですので、引き続き参加していただきますが、いつも通り会議を進行してください」
会議は、淡々と議題が進められていき、進行役の職員が次の議題へと進める。
「続きまして新たなダンジョン探索案件となります。開発部マーク理事お願いいたします」
「我々開発部としましては、日々探索者からの情報収集と調査を元に新たなダンジョンの発見を急いでおりますが…… 」
マークは全員に聞かせるように話しているが、会議室にいる皆の顔は無表情か、またかと苦笑を浮かべる者もいる。マークが理事となってから続く言わば定型文のような言い訳である。理事のひとりがマークが言い終えた後で口を開いた。
「マーク理事さすがに毎回同じことを話されても……
そろそろ新ダンジョンを見つけてもらわないと…… 」
「開発部としてもそう考えて、重要な会議への参加を欠席させてででも、探索候補地の洗い出しに力を割いてます」
ああ言えばこう言う、マークの言葉に皆は嫌気がさしているのだが、改善されることもなく言い訳が続き、他の理事が我慢できずに口を開いた。
「とは言え、探索に出でも空振りに終わり、次こそはって話でしたよね? もう何年も発見できていないのですぞ、さすがにそろそろ何かしらの結果を出さなければ…… 他の探索者組合も苦戦はしているようだが、全組合が未発見なわけではないのだから…… そろそろ…… 」
「では、是非とも探索者のレベルアップを運営管理部に急がさせてもらえませんかねぇ。うちの努力を台無しにしているのは探索者の力量不足かもしれませんし、皆さんはそうは思えませんか? ここまで発見できないのはおかしいのではありませんか?」
マークは、まるで他人事のような口ぶりで、探索者のせいにしはじめた。更にマークの擦り付けは続く。
「運営管理部の育成に問題があるのではないですかな? ずいぶんのんびりと育てているようですが、我々の苦労を理解しておられるのか、疑問に思うようになってきましたな。どうなんですかベントレー理事」
マークは、挑発するようにベントレーへと視線を向けた。ベントレーはお茶を優雅に飲んでカップをソーサーに置いてから返答する。
「マーク理事は、新ダンジョンが見つからないのは運営管理部の責任だと? 」
「我々はちゃんと情報収集をしておりますからな。最近の探索者の質も検討するべきかと思いまして」
「はっはっはっ! 」
ベントレーは、まるでどこかの黄門様のように高笑いをすると、それを見てマークは怪訝な表情を浮かべる。
「何がおかしい? 」
「先程、マーク理事がアルトに言ったようにワシも言ってみたのだが…… やはり言い慣れている方は返しも用意されているのだなと思いまして」
「はぁ? 」
「ダンジョンシーカーなどそんな易々と育てられるわけがなかろうて、探索者を下界に出すということは命を捨てさせるのと同意だ。モノを大量生産するようにそう簡単にはいかんよ」
ベントレーは、微笑みながら言っているが、その目は笑ってはいない。マークはその目に一瞬気圧されるが、取り直して口を開いた。
「さすが元騎士爵位の貴族様は、優美さをお忘れでないようで呑気なことを…… 」
「フフフ、ハッハッハァ! 」
ベントレーはこれ見よがしに、また高笑いをしてからマークへと笑みに隠して鋭い視線で射ぬいて口を開く。
「マーク理事よ、好きに嫌みを言うが良い。だが、それでワシが、運営管理部の者たちに探索者の昇格の基準を甘くさせることはないだろうな」
「今の状況をご理解されているのか! 新ダンジョン発見は急務なのですぞ! 」
「確かに新たなダンジョンを発見し、新たな街を開発するのは急務だな。各街の人口密度は年々更新する一方だ。だがな、探索者を危険にさせる事で発見が早まるわけではない。献身的に事前の調査を行い、その情報を元に探索者の努力と忍耐によって発見できるのだよ。マーク理事それを忘れたとは言わせんぞ」
ベントレーが顎をかきながら、どこか遠くを見ながら口を開いた言葉に、別の理事が誰とはなしに口を開いた。
「ワールドトレックの創設時の理念…… 」
ワールドトレックは、アルトやルイガノ、ミーナの両親たちの探索者チームが、創設の始まりであり、その理念は、『仲間への献身。たゆまぬ努力。あきらめない忍耐』である。マークが苦虫を噛んだような顔をし歪ませ、感情のまま吐き捨てる。
「元貴族様は、とことん話を華麗に美化させるのがお好きですな。綺麗事では新たなダンジョンは、みつけられぬのですよ。いち早く探索者総出で探索しなければ、見つかるものも見つからぬと言うもの。多少の犠牲は致し方ないではありませんか! 探索者の仕事とはリスクがつきものなのだ。いい加減綺麗事を並べるのはやめていただきたい。民主化しこの自治区は本土のようなぬるま湯とは訳が違うのだよ! 貴族様の遊び気分でいるなら本土へ帰れ!! 」
マークは自身の言葉にヒートアップし、最後には暴言とかしているが、ベントレーは余裕の表情を浮かべ、見方によっては挑発しているようにも見える。
「そう熱くなりな…… 」
「あなたの相手への敬意のない態度は、上に立つ者の立ち居振舞いではありませんね」
ベントレーが、マークを諭すような声音で声をかけるのとかぶせるように、鈴の音のような声が会議室になった。それは美しく優しげに通る声だが、聴こえた者がその声音の元を追いたくなるような魅惑的な声、会議室の全員が、その鈴の音の発生源に顔を向けると、そこには、凛としてたたずむ銀髪の少女が、毅然としてたっていた。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
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