21-挑発
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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同じ会社の組織内であっても、仲の悪い部署と言うのはよくある話だ。会社の顔である営業部とそれをサポートする部署が険悪だったり、経理部が規則を盾に外回りの部署の経費を認めないとか、協力するべき他部署との関係が悪いのには、いろいろと理由があるのであろうが、一言で言えば、互いが相手の仕事に尊重と敬意を持たずに、独りよがりになっているのではないだろうか。人なので、相性が悪い相手は少なからずいるだろうし、他人のしたことで自分の仕事量が増えれば怒りを感じることもあるだろう。人なので仕方のない感情なのだが、相手を尊重と敬意を少しでも持っていれば、その怒りも収束するのだが、利己的な者が自分は他の者よりも損をしていると思ったり、会社からの対価が釣り合わないと感じれば、何かしらの形で楽をしようと考えたり、得をしようと考えたり、挙げ句には、不正に走る者もいるだろう。だが、その利己的な考えが、長期的に見れば自身の価値を引き下げ、いずれ他人からの信頼を失って行く行為であることを忘れてはならないのだ。だからこそ社内に蝕む悪感情は、何かしらの形で吐き出させる必要があるのだが、その方法は正攻法とは限らない。
「もう一度言うが、ランドが死んだのは、開発部の責任と言いたいのか? アルト」
そうアルトにトゲのある声音で言ったのは、開発部の長であり、理事のひとりであるマークだ。先日、ルイガノの部屋に来て騒ぎ立てていたのが、このマークである。アルトは、開発部の責任を追求したいわけではなく、あくまでも事実としてイレギュラーの部隊編成があり、そこに不運な出来事が重なったと言いたかったのだが、マークにはそのように聞こえたようだ。アルトは平然とした態度で返答する。
「誰の責任とかでなく、あくまでも事故だって言いたいのですが、まぁ責任があるとしたら連携を取れない不馴れな寄せ集めの部隊編成を許可した理事のみなさんですかね」
理事全員を目の前にしてアルトは言いきった。かなり挑発するような物言いなのだが、以前のアルトであれば、先程のマークの言葉に激昂してこの会議の場で乱闘騒ぎになっていたことを考えると、冷静に挑発に乗って相手の出方をみていると言ったところだろう。
「若造が生意気にも理事に意見するか? 最年少でダンジョンシーカーになったからって調子にのるなよ」
「若造…… まぁ確かにそうですね若いんで…… けど、責任の所在を問われたので答えただけです。理事に意見してはならないなんて規則ないですよね? それにダンジョンシーカーは、この会議への参加は義務でしたよね? 開発部のシーカーがひとりもいないのは問題では?」
この全体会議は、理事とダンジョンシーカーと一部の任命されたAランク以上の探索者が参加する会議で、ルイガノとジークは、運営管理部のシーカーとして、ミーナは任命されたAランク探索者として参加し、他にも数名の探索者が会議室の後方で会議を傍聴しているが、開発部に所属しているシーカーは全員欠席している。
「彼らはダンジョン探索の調査で忙しく、欠席を申し出たのでわたしが許可した」
「職務優先を許されるなら、そもそも会議が成り立たなくなります。マーク理事もしかして今日の全体会議は休ませても、開発部の会議の欠席は許してないのでは? 」
全体会議は参加者が多く、内容が全体に関わる大きな話になる為に、多くの参加者が傍聴のみで退屈に感じるが、なんの為に全体で会議を行う必要があるのかを理解しなければムダな時間に感じるものは多い。そもそも、案内や連絡だけであれば、紙面で通達や掲示で済む話なので、会議を取り仕切る側もそれを理解させる必要はあるし、参加者も理解する努力は必要である。そして理解していない参加者の選択は、多忙を理由に欠席を選択し、理解していない上司は、それを許可し、その上司が取り仕切る会議には参加するように促す。こうして全体会議を軽視する長の私兵が育っていくのだ。マークは淡々と追求するアルトに顔を蒸気させ先程よりも声が大きくはりあげた。
「それの何が悪い! わたしが共有すれば問題ないではないか」
「全体の内容と他部署の報告について、私情を挟まずに部下に話せますか? 」
マークの返答に追い打ちをかけるようにアルトはすぐに聞き返す。マークは我慢できずに怒鳴った。
「わたしをバカにしているのか? 親の七光りの分際で! 」
「ふたりともいい加減にしなさい! まだ事情聴取は終わっておりませんよ! 」
ふたりのいさかいにルイガノとミーナの母で理事長のアウディがふたりを一喝する。アウディはそのまま監査官に視線を向け穏やかな声音で口を開いた。
「お見苦しい所をお見せしました。続きをお願いいたします」
「では続きを…… 」
監査官たちは苦笑しながら聴取をはじめる。その後は特に問題なくルイガノが予想したとおり、形式的な聴取で終わった。一度小休止が入り理事長とニセンたちは離席した。アルトは背伸びをして自分の仕事は終わったとホッとしていると、ルイガノとミーナそれにジークが集まってくる。
「よく我慢したな」
ジークがそう言ってアルトの背中を叩く、ルイガノとミーナも安堵している様子だ。
「ワシも肝を冷やしたぞ」
「ベンじぃ」
アルトのところに来たのはベントレーだった。ベントレーは更に口を開いた。
「この後の会議も面倒になる気がするの…… 」
ベントレーが視線だけを向ける先には、マークがおり、怒りに満ちた顔でアルトを睨んでいる。アルトは苦笑しながらもベントレーへ返答する。
「まぁいざとなれば運営管理部の長に助けてもらうさ、頼むぜベントレー理事」
「調子の良いところは相変わらずだなぁ」
ベントレーは、苦笑しながらアルトの頭をコンコンと軽く叩く、運営管理部の実質的責任者ルイガノが行っているのだが、その相談役として理事がおり、その運営管理部の理事がベントレーである。しかし、ベントレーは、ほとんどをルイガノに一任し、何かしらの責任がある時に矢面に出るという事をしている。ベントレー本人の意思で日常業務はダンジョンガイドをしているが、本来であれば運営管理部トップであり、ワールドトレック探索者組合理事で、言わば経営陣のひとりなのではあるが、ベントレーの人柄によってアルトたち部下は、気さくな関係を作り上げてきた。
「まぁアルトひとりに任せるよりはその方が楽そうだな。ルイガノ報告書通り構造改革をしたいのだな? 」
「はい、アルトとミーナとも話し必要だと結論づけました」
「そうか、では、そのつもりで行動しないとな」
ベントレーは、優しげな笑みを浮かべながらその目には闘志のようなものが小さく燃えていた。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
N6940GN
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