17-覚悟の証明
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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アルトたちとアーリエたちが出会った翌日、ミーナはルイガノに呼ばれ、オフィスにあるルイガノの個室へと入室する。
「兄さんどうしたの? 」
「ミーナ忙しいのにすまない。アルトは? 」
「今日も図書館。いつの間にか、アルトがブックワームになっちゃったよ」
ミーナは、苦笑しながら冗談として流すが、その表情はどことなく愁いでいるようにルイガノには見え優しく声をかける。
「心配なんだなミーナも…… 」
「そ、そんなことないよ! アルトも元気になったし、前向きに仕事に取り組んでくれるなんて、いままでなかったから、ちょっと驚いているだけ…… 」
ルイガノは、デスクから立ちミーナの肩を優しく抱いて、ソファを進めると自身もミーナの向かいに座りあらためて声をかける。
「僕も最近のアルトには感心してるけど、事故の後からあまりにも変わりすぎているのが少し心配なんだ。ミーナは、何かアルトのことできがついたことはないかい? 」
「わたしに『ありがとう』なんていままでのアルトは言わなかったし、優しいんだよね…… うれしいよ、アルトもわかってくれたんだって思った…… それに兄さんと3人で兄妹みたいに育って来たんだもん…… けど、違うんだよ…… まるでアルトじゃないんだよ…… 」
ミーナは、泣き笑いなような表情を浮かべ、困惑や疑念が解消できずに、アルトを心配する気持ちだけが膨らんで今にも破裂しそうだ。ルイガノがコクりと頷いて、ミーナに全てを吐き出させるように続きを促す。
「兄さんにも話そうと思っていことがあるの…… これ見て…… 」
ミーナは、1枚の用紙をルイガノへと差し出す。それはダンジョン探索者として登録する祭に提出する登録用紙で、魔力を帯びた用紙で記述事項は追記の必要なく、廃棄するまで自動更新される。更に、閲覧権限の有する者しか閲覧できないようになっている。ルイガノも当然権限を持っているので、何の問題もなく閲覧は可能だ。
「アルトの登録用紙だね」
「固有スキルの欄を見て…… わたしもたまたま見て不思議に思ったの…… 」
「固有スキル…… ?!…… 」
ルイガノもそれを見て目を見開き、ミーナの疑問がすぐにわかった。
「スーパーバイジングってなんだ? 」
「はじめて聞くスキルだよね」
「ああ、固有スキルが増えることがあっても、これは僕もはじめて見るスキルだ。アルト自身に事故の怪我によって何かが起きたのか…… 自覚症状はあるのか…… 」
「アルトに確認する必要あるよね。今のアルトは正直助かるよ。けど、今のアルトに慣れた他の人が元のアルトに戻ったら、いままで以上にトラブルは間違いないと思う…… 」
以前のアルトは、実力はあったが素行が悪く、いろいろトラブルを起こしていたが、アルトの扱いに慣れた者たちによってトラブルを未然に防いだこともある。しかし、今のアルトしかしらない相手は、おそらく好印象を持つが、今のアルトが元に戻ったら大変なトラブルになることが、安易に想像がつく。ミーナとルイガノは、アルトへの心配から、アルトにいままで以上の世話をやく羽目になるのを想像して苦笑をするしかない。それが迷惑とか面倒という気持ちがないわけではないが、アルトが社会に馴染めなず、つまはじきに合うのではないかという心配からだ。
「アルトを呼んでちゃんと話そう。ミーナ悪いけどアルトを連れてきてもらえるかい? 」
「そうだね。いざとなったら元に戻るまで休ませることも考えないと、すぐに呼んでくる」
ミーナは、すぐに席を立ち部屋を出ていく。図書館とワールドトレック探索者組合の事務所はたいした距離はなく、30分とたたずにミーナはアルトを連れて戻ってきた。アルトがルイガノへとソファに座りながら尋ねる。
「ルイ話ってなんだ? 」
「会議前にいくつかアルトと今後の事を話しておきたくてね」
「なるほど…… 運営方針とか運営計画とかそんなところか? 」
アルトがルイガノの言葉に前向きな声音で返答すると、ルイガノは苦笑しながら返答する。
「アルト…… キミ自身の事だよ。以前のアルトなら剣が振れて、ダンジョンさえ探索できればいいとダンジョン運営なんて気にもしなかったろう? でも、ケガをした後から、この10日ほどキミは人が変わったようにダンジョン運営に対して尽力してくれるようになった」
「それは…… まぁいままで迷惑かけた分な…… いや、家族同然で、兄妹のように育ったルイとミーナにはやっぱりわかっちゃうよな…… 」
アルトは、何かはぐらかそうとしたが、あきらめたように言葉を切り返し、何か思考するようにうつむいた。それを見てミーナが諭すように声をかける。
「アルトね。別に疑っているとかじゃなくて心配なの兄さんもわたしも…… だからアルトに何が起こったか話して」
アルトは、顔をあげるとルイガノとミーナを真顔で直視する。
「理解できないような突拍子もないことでも? 信じれるか? 」
「アルトのことは、誰よりわかっているつもりだよ。いままでだっておせっかいって言われてもアルトは大切な家族だもん。心配するのは当たり前じゃん! どんなことでも話して! 」
「ミーナの言うとおりだ。まずは話してくれないか? 」
ミーナとルイガノは、そう言ってアルトを説得する。アルトはひとつ深呼吸をしてから口を開いた。
「わかった…… 荒唐無稽と思われるから話せるは、ルイとミーナだけだと思う…… ふたりの知るアルト・ノエルは、あの事故で死んだ…… 」
「えっ?! 」
「オレは異世界から精神というか魂というか、まぁそういうのをアルトのカラダに移された存在だ」
早乙女の言葉にミーナとルイガノは、口をポカリと開けたままフリーズしているが、先に再起動したミーナが口を開く。
「真面目な話をしてるのにアルトは笑えない冗談を~ 」
「だから荒唐無稽だって言ったろ、じゃこれをふたりは読めるか? 」
早乙女はテーブルにあった紙に漢字で自身の名前を書く。
「これは…… 文字? 」
「オレがもといた世界のオレのいた国の言語なんだけど、日本語で自分の元の名を書いた。アルト・ノエルだとこうだな」
書いた文字の下にカタカナで書く。ルイガノが言葉を詰まらせながらアルトに尋ねる。
「じゃ、じゃ固有スキルのスーパーバイジングも元々持っていたスキルなのかい? 」
「いや、前の世界にそんな固有スキルとか魔法とか存在しなかった。この世界に転移する時に授かったって言えばいいのかな。正直オレもこの固有スキルで何がどこまでできるのか試しているところだ。けど、ふたりに気づかれてるなら見せた方が早いな」
アルトはそう言って何もない空間に意識を向けると半透明のスクリーンを発現させた。
「ふたりにも見えるか? 」
「はぁ…… 」
「え…… うん…… 」
ルイガノとミーナはその物体に言葉がない。この世界でも存在しない物体らしい。
「一応オレは、ポップアップて呼ぶことにしている。ふたりが信じてくれるならありがたい。ひとりじゃなんとなくやりづらかったからな、改めてよろしく新アルト・ノエルだ。ちなみに前のアルトの記憶も共有してるから、まったくふたりのことを他人だとは思ってないから安心してくれ、それと信じてもらうためには、この世界ではこれが一番らしいし、オレ個人としても短髪の方が何かと楽だしな…… オレはアルトとしてこの世界で生きることを誓う。信じてほしい…… 」
早乙女はそう言って小振りのナイフを取り出し後頭部で結わいた髪をザックリと切ったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
N6940GN
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