08-志高き令嬢
こんにちは橘 弥鷺です。
元コンビニSVのダンジョン運営に、ご興味をいただきありがとうございます。
お読みいただければ幸いです。
尚、前作の完結しておりますSTRAIN HOLEもあわせて、是非、お読みいただければ、うれしく思います。
STRAIN HOLE
N6940GN
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ロールス共和国首都
アルトが暮らす、辺境の探索者組合自治区から数百キロ離れたこの国の首都のとある邸宅に、今日この日を待ち望んでいた令嬢がいた。
「今日から18歳となり、いよいよわたしも騎士を拝命いたしました」
その令嬢は、写真に写る3名の男性に向かって報告する。ロールス共和国となった今、爵位制度は廃止され、王政時代であっても騎士とは爵位を指すものでなく、名誉爵位でありダンジョン探索者となった貴族に与えられた。平民がダンジョンシーカーで、貴族は騎士とされたのだが、ほとんどの貴族が危険な下界に出ようとせずに、内政の勢力争いに勤しんでいた。しかし、そんな貴族社会にも志を高く持ち、平民を見下さず。共に新たなダンジョン探索にみずから挑む騎士たちも少なからずいたのだ。彼女が敬愛する写真に写る3人の騎士たちだ。
「お祖父様、お父様、そして大伯父様。必ずこの国の平和を護ります」
写真に写る3人の騎士は、彼女の父親と祖父そして祖父の実兄であり、この国の最後の国王であった大伯父である。国王が民主化を進めるに辺り、それを陰ながら支えたのが、彼女の祖父と父親であった。しかし、数年前のダンジョン探索において祖父と父親は多くのダンジョンシーカーと共に下界で散った。元国王であった伯父は、王位を退くと共に王妃と共に姿を消してしまった。10年の間音信不通であるのだが、彼女は今もなお大伯父を探している。子供のいなかった国王は彼女の父親を我が子のように愛し、また孫のように彼女を愛してくれた。彼女もまたそんな大伯父に父親や祖父同様に愛していたのだ。大伯父が元国王である彼女は王家直系の旧公爵令嬢であり、王家直系唯一の姫であった彼女は、民主化した今であっても志高くこの国の為に生きたいと考えていた。彼女の名は、アーリエ・リッター・アードリゲである。祖父が兄との王位争いに周囲がならないようにと、傍系のアードリゲ家と養子に入った為に、ロールスの名を名乗ってはいないが、正真正銘の王家直系の姫であるアーリエは、王家の血筋の証である銀髪に、ブルートパーズのような透き通った碧眼に端正な顔立ちと、163センチ細身の身体には、同年代の同性からは憧れられ、それに対し、実直で品位溢れ周囲の人々を家柄や見た目で判断しない立ち居振舞いは、異性から好意を向けられ、非の打ち所のないまさに生まれながらの姫である。もし、彼女の欠点を強いてあげるとすれば、同年代の恋愛事情や異性からの好意に疎い、庶民の文化に触れたことのない為に、街では世間知らずと思われる。これはアーリエの問題ではなく、育った環境下ではどうしても箱入り娘となってしまったので仕方がないのだが
「アーリエお嬢様準備はできましたか? 」
「あ、ええ! どうぞお入り下さい」
アーリエの私室のドアがノックされたので、アーリエは入室を許可する。
「おはようございます! アーリエお嬢様」
「おはようございますセナ。でも、お嬢様は今日から呼ばないお約束でしょ! 」
「これは失礼いたしました。アーリエ」
アーリエの私室に入ってきたのは、セナという少女だ。セナはアーリエの同い年の少女で、古くから王家を支えてきた上位貴族で傍系血族である。幼い頃から同性で同い年ということもあり、幼馴染みや親友のように慕っている。セナは、栗毛のロングヘアをハーフアップにし、一部を後頭部でお団子にし、165センチと女性としては高めの身長で、アーリエに負けない美貌の持ち主だが、セナもまた旧上位貴族の為に世間知らずの一面を持つ、まぁそんなふたりの少女だから気が合うのかもしれない。
「いよいよですね。アーリエ」
「はい、セナ今日からもあらためてよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
ふたりは、クスクスと笑いあって互いに未来への希望に胸を膨らます。そして、共和国軍の騎士正装に身を包み、腰にはサーベルを携えてアーリエの私室を出て、彼女たちの職場である共和国軍本部へと向かった。
「探索者組合自治区への監査に同行ですか? 」
アーリエとセナは、騎士としての初日の為、人事部の上官への挨拶のために上官の個室へと向かったのだが、そこでいきなり命令がくだされるとは、思っていなかった。セナが上官に尋ねる。
「新たなダンジョンでも発見されたのでしょうか? 」
「では、下界に出て調査の同行を? 」
アーリエとセナは、騎士としていきなり下界への調査なら、申し分ないと心を弾ませ上官の返答を待ちわびるが、上官は苦笑を浮かべながる。上官は40代で人の良さそうな顔をしているが、騎士や軍人というよりは事務方の長のような風貌でそのイメージ通り柔らかな口調で説明をはじめる。
「いえ、今回は下界に出ることはないです。安全な業務です。おふたりには研修の意味で監査に同行してください。先日、ワールドトレックという探索者組合で、下界に出た探索者がモンスターに襲われ、1名が死亡、もうひとりが重傷でしたので、探索者の行動計画に不備がなかったかの監査です」
「では、騎士としてダンジョン探索は…… 」
アーリエが監査の同行と聞いて夢に描いていた騎士としての職務を尋ねてみのだが、上官は横に首を降り諭すような返答を返す。
「昨今ではダンジョンシーカーの方たちを中心にダンジョン探索を行っております。軍が出てしまえば彼らの職を奪いかねない。我々は彼らの要請に応じ出動はあっても原則は監督職ですよ。それでは、本日、午後より準備し、明日の出発に備えてください」
「了解」
アーリエとセナは敬礼をして上官の部屋を出る。
「そう気を落とさないで下さい。アーリエ」
「任務は任務ですよセナ監査だって立派な職務です」
「そうですね」
セナの言葉にアーリエは少しだけ口を尖らせて否定する。そしてアーリエは胸を張り笑顔でセナにあらためて声をかける。
「それに初めての自治区じゃないですか! どんな職務でも遂行してみせます」
アーリエとセナはくだされた任務に拍子抜けしたが、それでも彼女たちのモチベーションが下がることはなかった。志高き令嬢ふたりは翌朝探索者組合自治区へと向かうのであった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
前作のSTRAIN HOLEも何卒よろしくお願いいたします。
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