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宇宙人との恋煩い

作者: 虎の子

「いってきまーふ!」

「はーい、いってらっしゃい。車に気を付けるのよー。」

お母さんの言葉が終わる前に、私は少し焦げた食パンをくわえたまま家を飛び出した。髪はぼさぼさのままで、制服のボタンも何個か掛け違えている気がする。セットしている暇なんてない。急いで学校に行かなければ。

「ちょっと由衣~。お弁当忘れてるわよ~~!!」

私は急ブレーキをかけて、家の方へ猛ダッシュを開始した。玄関先でお母さんが玄関先で手を振っているのが見えた。私は人生最高のスピードで家に帰還した。

「あいはほう。いってきまふ。」

私は弁当をひったくるようにとって、また走り出した。


しばらく走るといつもの下り坂についた。彼はまだ下り坂終わりの電柱の下という待ち合わせ場所ににいてくれていた。

「アルくーーん!!」

アル君はたぶんこちらを向いて手を振っている。私は急いで坂を駆け下りた。かなり急な下り坂だが、もう慣れたものだ。

「わっっ!!」

普通に最後の最後で躓いた。このままでは顔面からアスファルトにダイブしてしまう。私はなんとか手を前にだそうとするが、間に合わない。

衝撃に備えて目をつむるが、こない。目をゆっくり開けると、アスファルトが目と鼻の先にある状態で私の体は停止していた。

「うわわわっ....と。」

私の体はもう少し浮いてくるッと回転して地面にきれいに着地した。

「ありがとね、アル君。」

アル君が私の頭を撫でているのを感じる。私は気持ちよさそうに目を細めて、アル君に抱き着く。アル君はかなりびっくりしているが、優しく受け止めてくれた。アル君の姿は見えないけど、そこにいることは感触でわかる。制服と通学カバンがだけがある光景は中々にびっくりだが、もう慣れちゃった。

アル君に軽く服を引っ張られる。そういえば私たちは急がなければいけないんだった。私は口に残っていたパンを飲み込んで、学校に向けて走り出した。反省文はもう書きたくないよ~。


「ぐへ~、やっと昼休みだあ~~。」

「はいはい、人の机の上で勝手に溶けないの。合わせるからちょっとどいて。」

四限目が終わった後の私はぐでんぐでんだ。斜め前の席にある友人の所まで移動して机に体を広げる。

友人の言葉は効かないふりでゴロゴロ続行だ。

「は~~、しょうがないなあ。」

「うっぎゃ!」

約五時間ぶりに私の体は奇声とともに浮いた。ふわふわと宙を移動して、私は自分の席に戻されてしまった。友達の少し逆立った赤髪が落ち着く。

「ちょっとミレニアさん?今は能力を使用していい時間ではありませんよ。」

廊下側の窓から先生が軽く注意する。先生の右目がかなり見開いている。ミアちゃんの体が金縛りにあったように硬直する。

「すいません、もうやりません。」

「よろしい。」

金縛りを解いて先生はその場から立ち去った。私は声を押し殺そうとしたが間に合わず気持ち悪く笑った。

「うひゃひゃひゃ、しくったね。」

「絶交ね。」

「嘘!?それはないでしょ?!」

ミアちゃんは私に背を向けてツーンとしている。おそるおそるミアちゃんの顔を覗き込むと。

「それは嘘♪」

私たちの日常である。


「そういえば由衣、噂のアールニロ君との関係は進展したの?」

ミアちゃんからの突然の質問に、破裂しそうになった口の中の白米を何とか抑えて味噌汁で飲みこむ。

「い、いいいいきなり何の話かな?ミアちゃん。」

「いや、慌てすぎだよ。」

隣から冷静なツッコミが入る。ミアちゃん以外にも二人の友達と私はいつも昼ご飯を食べている。隣の子はお蛇ちゃん。体のいたるところから蛇が出てくるからです。

「そそんそおんそんなに慌ててないけどね?お蛇ちゃん。」

私は慌ててお蛇ちゃん方へ体を向け手を横に振る。

「まあ由衣さんの自由ではありますが、節度あるお付き合いが大切ですわよ。」

「いやそんな変ことはしてないよ!?阿波ちゃん!」

私の斜め前に座って姿勢よく美しく弁当を食べているのはこのクラスで唯一私と同じ『人間』の阿波ちゃんだ。どこかの社長令嬢らしいが、なぜこのクラスにいるかは分からない。一見とっつきにくいが、根はとても悪戯っ子だ。

そう『人間』は私と阿波ちゃんだけだ。この高校の正式名称は国立宇宙なんたらかんたら高校。まあ簡単に言えば宇宙人がいる学校である。よくは知らないが何十年か前にたくさんの宇宙人が地球に来たらしく、何か仲良くすることになったらしい。そんなこんなできたのがこの宇宙高校だ。宇宙人と地球人が一緒に学ぶと言っても基本的にクラスは別だ。私と阿波ちゃんは特別なのである。

「ま、まあ今日も手を繋いで一緒に登校したし?進展してると言えば進展してるけどね。」

「えぇ.....」

何故かほか三人が引いた顔をしている。私とアル君はこんなにも健全なお付き合いをしているのに、おかしい。

「いや、あんた達もう付き合い始めてから二か月ぐらい経つでしょ?それで『私たち手を繋ぎました♪』とか言われても困るよ。それに、アールニロ君の手というか腕ってどこ?」

私の時のセリフだけ妙にきゃぴきゃぴしている、心外だ。それにお蛇ちゃんも阿波ちゃんも深くうなずきすぎだと思う。お蛇ちゃん、頭振りすぎて蛇がでてきそうだから落ち着いて。

「私たちは私たちのペースで仲を深めてるの!まあ手に関しては正直透明だから分かんないけど、私は自分の感覚を信じる!」

私は胸をはって宣言する。たとえアル君が透明だったとしてもアル君は私の大好きなアル君だ。

「仲を深めるって、ッ!!もしかして、そういうこと?」

「お蛇ちゃん?そろそろ怒るよ?」

最近はこういうふうに3vs1になって話すことが多い。私に彼氏ができてから皆ちょっと変だと思う。

私は心の中でファイティングポーズをとった。

「それに関しては私もかなり疑問がありますわ。」

「え、もしかして阿波ちゃ...」

私に本気で怒られてちんまりとしていたお蛇ちゃんが嬉々とした顔で阿波ちゃんに迫るが

「違いますわ、あなたと一緒にしないでくださいまし。」

あえなく撃沈した。ミアちゃんはいつもの青い物体は口に放り込んでいた。おいしいんだろうか、あれ。

「私が気になるのはアルニーロ君は最適変化をして透明だということですわ。」

『最適変化』は宇宙人の人たちが地球で暮らしやすい様に変化することらしい。まあつまりミアちゃんもお蛇ちゃんも本当の姿ではないということだ。まあ私はどっちも見たことあるけどね。

「あ、それは私も結構気になってた。どんな異形種の宇宙人でも大体はちょっと様子がおかしい位の人になるはずなんだけど、アルニーロ君だけ多分透明にんげんなんだよなあ。由衣なんか聞いたことある?」

怪しい物体を飲み込んで口の端についたそれを袖で拭いながら、ミアちゃんは私に話を振ってきた。三人全員の視線が私に集まる。できればやめてほしい、私はいつでも緊張しいなのだ。

「う~ん、分かんない。」

「「「は?」」」

おお、三人の声が輪唱?のように重なった。私はいつもの癖で耳をかきながら、質問に答える。

「いや~ね、最初に告白したときにいろいろ話してもらったんだけどなんせ横文字が多くてね。難しくて忘れちゃった。それにアル君はおしゃべりな方じゃないから、そういう話はあんましないなあ。」

三人の顔が妙に納得したような顔になっている。『そうそうお前はそんな奴だったよ。』みたいな顔を全員している。ミアちゃんが私の肩をポンポンと叩く。いや、そんな残念そうなやつをみる顔しないで欲しいんですけどーー!!!


「おいアル、また彼女のこと考えてたのか?」

アルはクラス、いや学校唯一の友人からの言葉に苦笑を浮かべる。先程までアルは隣の第二校舎一階の右端の教室をずっと眺めていた。そこにはアルの愛しの彼女がいるのだ。

「いやーまさかお前が彼女をつくるなんてなあ。びっくらぽ...」

「ういぃーーす、アールなんちゃら君って子、いる?」

教室の前の入り口には制服をかなり着崩した人間の男が複数人立っていた。名札を付けていないため分からないが多分三年生だろう。アルは立ち上がって男たちの方へ向かう。

「アル、抑えるんだぞ。」

友人から警告が飛ぶが、アルはそれは相手によると心の中で思う。友人もそれは分かっているのか、軽く俯いて頭を掻いた。


「おいおい、アルなんちゃら君よぉ!!昨日はどうもうちの子分が世話になったなあ!!」

アルは半グレ達に校舎裏まで連れてこられ、金髪の男に壁ドンを食らっていた。多分この男がリーダーなのだろう後ろに控える男たちはみな休めの態勢をとったまま直立不動だ。

「てめえ話聞いてんのか!!」

男の膝蹴りをアルは避けなかった。痛いふりをするのは苦手だが、やらないと丸く収まらない。アルはうずくまった。

「俺らに喧嘩売ったからにはよぉ、『ケジメ』つけてもらわなきゃいけねえんだわ!」

言い終わるのに合わせて男はサッカーボールキックをアルの顔面に放った。顔を押さえて痛いふりをする。

「てめえら、こいつの彼女の件はどうなってる?」

「へい!沢と山喜が向かいました!もうすぐつれてく、る...」

アルは理性を一度手放した。友人の忠告は遥か彼方だ。

「な、なんだ、お、おま。」

狼狽する男たちを尻目にアルは顕現を始めた。透明だった体がどんどん姿を現していく。頭には何もついておらずつるんとしたくすんだ色の卵型だ。手足にはびっしりと、様々な種族の目が刺青のように浮かび上がってきた。

「ま、まままさか、『呪われた皇...」

「もう遅い。」

アールニロ・リリルラリの『目』が男たちを捉えた。



「いやーまさかアル君が昼休みに私に会いに来てくれるとは思わなかったよーー。運がいいね、今日は♪」

私とアル君は西日が照らす住宅街を歩いていた。昼休みになんかこわい人が現れたと思ったら、いつのまにかミアちゃんとお蛇ちゃんが制圧していた。あんなに怖い二人は久しぶりに見た。阿波ちゃんはなんか誰かに電話していた。その後に、まさかのアル君登場である。クラスのみんながめちゃくちゃざわざわしてたけどなんでだろう。それに阿波ちゃんからはシャッターをきる音しか聞こえなかった。なんかいろんな角度からアル君との2ショットを撮ってもらったけど、あれどうするんだろう。

「ごめん、由衣ちゃん。僕のせいで巻き込んじゃって。」

アル君の悲しんでる姿は私は見たくない。思いっきり抱き着いてやった。

「許してさしあげよう、なんたって君はそれ以上にいい彼氏だからね。」

アル君の表情は直接は見えないけど、きっと喜んでくれている。私たちの恋はこれからどうなるんだろうか、まあなるようになるか!



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