4話 特別な魔法
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「え、え〜っと...カミラ?」
「し〜!黙ってろって、バレるだろうが!」
「で、でもさ〜...!」
私達は今、森の中でグランベアから隠れています。
「なんで生きてるの!?殺したんじゃ...!」
「魔族は核を壊さない限り死なないんだよ!グランベアの核は心臓部分にあるから攻撃が届かないの!」
「じゃあどうすんの!このまま隠れて...!」
すぐそばでドスンという音がして、グランベアが私達が隠れている茂みのそばに座る。下手に行動してバレたらたまったもんじゃない!まずは逃げる事が最優先だ!
「おい、静かに着いて来いよ?私だって勝てないんだからな!」
「分かってるって、早く行ってよ!」
私達は物音を立てずにそろ〜っとその場を離れる。もし音を立ててしまったらと不安だけど、かなり順調に進んでいる。このままいけば、グランベアに気付かれずに森を出れる。
「よし、このまま...」
その瞬間、カミラの方からパキッという枝を踏んだような音がした。カミラの方を見ると、カミラが冷や汗をかきながら私の方を見ている。そして、私達の耳に何者かの息がかかる。
「カミラ、これって...」
「ふっ...めんご!」
私達は走り出し、後ろから低い叫び声を上げながら迫るグランベアから逃げる。
「何してくれてるのおぉぉぉ!」
「仕方ないだろうが!踏んじゃったもんはどうにもならないんだから!!」
「それとこれとは話が別でしょうが!!」
しばらく走っていると、森の奥に明かりが見えた。おそらくあそこまで行けば、森から出れる!
「やった!出口...!!」
その瞬間、私達の足場が無くなり、落下を始める。下を見れば尖った岩だらけの地面。あれっ、これ死なない?
「ひっ...!」
「シャルロット!結界を張れ!早く!!」
カミラは自分で張った結界の上に乗り、私に手を伸ばす。でも、その手は絶対に届かない。私は結界魔法なんて使った事がないし、もし出来たとしてもそんな強度があるかすら分からない。私の頭に死の文字が浮かぶ。死にたくない、死にたくないと思う度に恐怖が増す。ここで、私は...
「何してんだ!お前は、超完璧魔法使いなんだろうが!!」
私の頭に一つの魔法が浮かび上がる。私は諦めかけて閉じた目を開き、その魔法を口にする。
「"天を舞う者"。」
私の身体は天高く舞い上がり、そのまま空に浮き始める。ああ、空から見る世界って、こんなにも綺麗なんだ。
「お〜い!大丈夫か!」
「あっ、カミラ。」
私はカミラのいる所に降りる。
「お前、さっきのって...」
「うん、なんかいきなり頭の中に魔法が...」
その瞬間、酷い頭痛がして、私はその場に座り込む。目がぼやけて、身体中に力が入らない。あれ、魔力が全然ない...!
「おい!大丈夫か!」
「う、うん...大丈夫じゃない。」
「大丈夫じゃないんかい!ほら、これ飲め!」
私はカミラに魔法薬を飲まされて、なんとか立ち上がる。
「なんでいきなり頭痛なんか...」
「そりゃそうだろ、あんな無茶をしたんだから。空を飛ぶだなんて、一体どんな魔法を...」
私はカミラの言葉に違和感を抱いた。空を飛ぶ魔法なんて私は知らないけど、今までにほうきに乗って空を飛んでる人や、大きな杖に乗って空を飛んでいる人を見た事があるからだ。
「空を飛んでる魔法使いなんて、そこら辺にいるでしょ?」
「それは"魔法具"を使っているからだ。魔法具には低い魔力であらゆる魔法を発動出来る仕掛けがある。空を飛ぶ魔法具には、低い魔力で人が空を飛べる程の風属性魔法を持続的に発動出来る仕掛けがある。でも、どんな魔法使いでもそんな事は不可能だ。可能だとすれば魔族の能力か、五属性から逸脱した、未発見の属性だけだろうな。」
「それって、つまり...」
私は息を飲んだ。私は確かに魔法を唱えた。つまり、あれは魔族の能力ではなく、未発見の属性。という事は、やっぱり私は...!
「やっぱり私は超完璧魔法使いなんだ!!」
「えっ...いや、そういう事には...」
「よし!早く行くよカミラ!私の偉大さを世界に広めないと!!」
「はぁ、なんか目的変わってないか?」
私達は森を抜けて、広い平原に出る。私は今、この広い世界に旅立ったばかりだ。これからたくさんの人に会って私の偉大さを広めたり、すごく綺麗な景色を見れたりするんだろう。でも、何でだろう。何か大切な事を忘れてる気が...
「あっ、魔王倒さなきゃだった。」
「いや、忘れてたのかよお前...」
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!