38話 最後の戦い
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「ソフィア、防御!」
「はい!」
フォンドネスとの戦闘が始まり、現在私達は互いに拮抗状態にある。
彼女は二つの短剣を扱い、戦う。だがその動きは剣術などとは違い、まるで舞踊のよう。
軽快なステップで攻撃を躱し、鞭のように身体をうねらせて強力な一撃を繰り出す。
流石は魔王、魔人とは違う別の強さを持っている。
「このままじゃじり貧だ!レオン、本気で行って!」
「了解!」
片手に剣、片手に盾、そして強固で軽く、動きやすい鎧。それを身に付けた彼のあの状態が、彼の本気。
「"一閃"!」
「なんていう威力!流石ね、英雄王!」
フォンドネスがレオンに攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃をレオンは盾で受け止め、弾き飛ばした。彼女が弾き飛ばされた方向には、カミラが構えている。
「っ!まさか...!」
「ぶっ飛べやおらァ!」
カミラがフォンドネスを殴り飛ばし、彼女は上空に打ち上がる。
彼女が宙に浮いて、大きな隙が出来るこの時を、私は待っていた。
「穿て!"魔閃"!」
私の放った一筋の光が、彼女に直撃する。
今までの戦いで彼女自身の身体に強力な一撃に耐えられる程の強度はないことが分かっている。
問題は、彼女の再生能力が間に合うかどうかだ。
「見事ね、勇者一行。」
煙の中から彼女の声がして、一気に煙が吹き飛ばされる。
彼女の身体には傷一つなく、それは再生能力が私達の攻撃を上回ったことを意味する。
「流石は彼を殺しただけはあるわ。この再生能力がなければ、私はすでに死んでいた。」
彼女が地に降り、真上に手を伸ばす。
周囲から赤い液体が集まり、彼女の真上に巨大な球体が形作られる。
その赤い液体は、魔族達の血液だった。
「安心してちょうだい、これをあなた達にはぶつけないわ。ただ、人間界にちょっとね。」
「っ!貴様っ!」
「レオン止まって!」
レオンが彼女に斬り掛かると同時に、彼女がレオンの攻撃を避け、彼のみぞおちに蹴りを入れる。
その動きは、今までの舞踊のような動きとは違い、無駄のない洗練された動きであり、明確な殺意が篭っていた。
「この血を使って軍隊を作るの。あなた達も見たでしょ?あの武具の数、あれは全てこの時の為。」
元から彼女の目的は戦争で、それをしていなかったのはこうして私達に見せつけるため。
流石は魔王、これこそ魔族の王の所業だ。
「さあ、行きなさい。"血泥人形"。」
血の塊が散り、人間界に向けて放たれる。
金属の音も聞こえる事から、おそらくあの物資も全てだ。
「さあ、ここからは本気でやりましょう。安心して、もう試すような真似はしないわ。」
彼女の短剣が血液に変わり、彼女の背丈よりも大きい一本の大剣に変わる。
身体に見合わない大きさだが、彼女はそれを片手で軽々と持っていた。
「そうだね、なら私達も全員本気でかかろう。果たしてアペタイトとあなた、どっちが強いかな。」
レオンの鎧が光り輝き、ソフィアの杖が変化し、カミラの身体の半分が竜と化す。
そして私の周りに、五つのクリスタルが舞う。
お互い、これが本当の全力。
本当の戦いが、今始まる。
◇
お姉ちゃんの率いる勇者一行が出発してから約一ヶ月、人類の砦であるフォルテに警報が響き渡った。
ここには王都からも多くの戦力が集まっており、国中の総戦力がフォルテの城壁前に出動した。
「本当に来たでござるね、流石は勇者殿でござるよ。」
「あの人、ああ見えてちゃんと周りの事考えてるんだよね。本当にお人好しだから。」
お姉ちゃんが私の胸ポケットにこそっと入れていた一枚の紙。
その紙には、「戦争に備えて」との一言だけ書かれていた。
まあ、相手も支配者なのなら、当然こういう事態も予想出来ることだ。
「数はざっと数えて10万はいるでござるな。それも1個体がそこらの魔族より強いと思われる。」
「対して私達の戦力は約100万、まあこれだけなら五分ってところだろうね。でも...」
稲荷が刀剣を抜き、私が杖を構える。
さっきの五分は私と稲荷の2人を含めない場合。
互角の戦いに、二つの強大な戦力が加わればどうなるか、それは想像にかたくないだろう。
「稲荷。この戦い、誰も死なせないよ。」
「元よりそのつもりでござるよ。まあ、最優先はお嬢さんでござるが。」
「ふふっ、じゃあ行こうか!」
杖を掲げ、軍全体の注目を私1人に集める。
今、この場の総指揮は私に任されている。
私は白い瞳を輝かせ、一言、言い放つ。
「総員に告ぐ!この戦争は文字通り魔族との...いや、魔王との最後の戦争だ!この戦争に勝てば魔族と共生し合い、争いのない真の平和が訪れる!その世界に不満を持つ者がいる事も私は知っている。だけど、それでも私に力を貸して欲しい!」
魔族をよく思っていない者、魔族に恐怖を感じる者もまだ多くいる。
でも、それでも私は突き進む。それでも私は人々を平和な世界へ導きたい。
それが"賢者"である私の役目なのだから。
「安心して戦え!この戦争で欠ける者は誰1人いない!」
人々が剣を掲げ、声を上げる。
そして血液で作られた人形が剣を構え、臨戦態勢に入る。
次の私の号令で、戦争が始まる。
「さあ行け!君達の命、この賢者カルム・グラトニーが預かった!」
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




