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勇者の杖の魔法使い  作者: mito
終章 旅の終点と
37/40

37話 勇者として、人として

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

むかしむかし、とある立派な館で1人の少女が生まれました。

彼女は人でありながら人の血を好んで飲み、母や父、兄妹でさえも殺してしまいました。

やがて彼女は捕まり、彼女の公開処刑が決まり、彼女は断頭台にかけられました。

彼女の処刑が執行される直前、突如として彼女に翼が生えました。

翼が生えると同時に彼女は人を超越した力を手に入れ、断頭台を壊し、周囲にいた人々を殺し尽くしました。

やがて国中の人々を殺し尽くした彼女でしたが、彼女はなぜか殺した人達の血を飲もうとはしませんでした。

彼女は自らの手を切り、自分の口の中に血を垂らしました。ですが、彼女は物足りなさそうな顔をします。

「どこ?」

彼女は誰かを探し始めました。

「誰か、私の心を満たして...」

彼女は自分が愛せる人を探しました。彼女は家族を愛していたのです。愛していたが故に、彼女は彼らの血を好んだのです。

彼女がその人を探し始めてから何千年、何万年経ってもその人は見つかりませんでした。ですが、そんなある日、彼女に転機が訪れます。

「見つけた!私の愛しい人!」

数億年経った今、彼女はやっとその人を見つけることが出来ました。その人はあらゆる悪を滅する者、人類の救世主たる者...


"勇者の杖の魔法使い"でした。



リーニエントの元を離れてから数ヶ月が経過した。

今までの道中に魔族が居なかったことから、魔族はこの辺りに潜んでいると思っていたがそうではない。この魔界にも、魔族は見当たらなかった。

でも、魔族の代わりに見つかったものもある。それはこの旅の最終目的地点であり、終点であるもの。

「やっと見つけた...」

「ああ、いよいよだな。」

目の前に佇む巨大なお城。これ程の建物は人間界の王都でしか見た事がない。これが正真正銘、本物の魔王城。魔王の住む城だ。

「じゃあ、行こうか。」

私達は魔王城に向かって歩みを進める。ここに来て強大な魔力を感じてきた、間違いないこの中にいる。

魔王フォンドネスは、もう近くまで迫っている。


「すごい数の魔導書...状態も申し分ありませんね。」

「武具も一級品ばかりだ、流石は魔王城だな。」

魔王城に侵入してしばらく探索してみた結果、色々なことが分かった。

まず、この魔王城は魔力密度の極めて高い岩石で造られていること。それ故に生半可な攻撃では傷すら付けられない。

魔導書や武具、魔法薬ポーションなどの戦闘の為の道具も戦争が出来てしまう程に大量にある。

この城にはあらゆる物が揃っている。だが、揃っているのは物だけだ。

「依然として魔族はいないね、戦争をするにしてもこれだけの物資が置きっぱなしなのはおかしい。」

「なら戦争が目的じゃないんじゃないか?もしかしたら、他の魔族を全員喰らって力を強めたのかもしれないし。」

「...だとしてもだね。」

もし魔王が魔界のほとんどの魔族を喰らい尽くして、自らの力に変えたとすれば...彼女が今どれだけの強さを秘めているか私達には想像すら出来ない。

もしかしたら、魔人さえも超える規格外の化け物になっている可能性だってある。

「とりあえず先に進みましょう。たとえ相手がどれだけ強かろうが、やることは変わらないでしょ?」

「ソフィアの言う通りだ。ここまで来て退くなんて事はもちろん、弱音を吐くことも当然ない。それが僕らだろ?」

2人の言う通り、どれだけ相手が強かろうが私は退かないし、負けない。だって、今の私には頼もしい仲間がいるんだから。

「よし、流石は勇者一行だね!ドーンッと勝って、サササッと帰る!それ以外に、選択肢はない!」

元より、私はその気でこの旅に出たのだから。


魔王城を進み、数時間。ようやく私達は王の間へと続く扉を見つけた。その扉は豪華な装飾が施されており、明らかに他の部屋とは違う。

「...開けるよ。」

私は扉を押し開ける。その瞬間、魔王の魔力が濃くなると同時に、ピアノの音と軽快な足音が聞こえた。

「あれは...まさか、踊ってるの?」

部屋の隅にある立派な無人で動くピアノと、そのピアノの音に合わせて華麗に踊る翼の生えた少女。彼女は間違いなく魔王であり、魔族を統べる現魔界最強の魔族。

だが、彼女は自身が魔王であると感じさせない程に華奢で、そして綺麗な踊りを踊っていた。

やがてピアノの音が段々とゆっくりになり、最後の音が奏でられる。それと同時に、彼女も踊りを止めた。

「あら、いらしたのね。気づかなくてごめんなさい。」

私達を横目で見て、彼女は身体の向きを正した。そして、スカートを両手でつまみ、片足を一歩下がらして膝を曲げる。

「改めまして、魔族の王にしてフォンドネス公爵家当主、"アリス・フォンドネス"。歓迎いたしますわ、勇者一行の皆様。」

彼女の一言と仕草に、レオンが反応を示した。私も彼女の言葉には違和感を覚えた。本来、貴族という概念は人間界にしか存在せず、魔界には貴族はいない。それなのに関わらず、彼女は自身を公爵家当主と名乗った。それは、レオンが何か知っているだろう。

「思い出した...フォンドネス公爵家、それはかつて確かに存在した最高位の貴族だ。だが、それは滅んだ王国に存在した家系であって、決して現存するはずがない。」

「流石は騎士王...いや、今は英雄王とでも呼べばいいかしら?その通り、我が王国は滅び、私だけが残った。知ってる?魔族を喰らうとどうなるか。」

彼女は私の目を見つめて笑みを浮かべた。

彼女は私が魔族を喰らっていた事を知っている。私の中からもう1人の私が消えた今でも、その魔族の力...魔族を喰らったという事実は私の身体に刻まれているのだ。

「永遠を手にするの。魔族を100体喰らうだけで身体は老いなくなり、1000体も喰らえば人の範疇を超えた再生能力を手にする。私が喰らった魔族の数は億を超える。勇者シャルロット、あなたは一体どれだけ喰らったの?」

彼女の言葉を聞いて、私の心は揺らいでいた。

私が喰らった魔族の数は彼女が喰らった数を遥かに凌駕するだろう。だけど、それでも今の私は不老でもなければ、圧倒的な再生能力も持っていない。

もう1人の私は死の間際に私に魔力の塊を遺して行った。それは彼女自身の魔力であり、力。つまり、その塊を取り込んでしまえば、私は不老になり、圧倒的な再生能力を手にする。そうすれば、カミラとも一緒に永遠の時を生きていられる。

「...へぇ、それがどうしたの?私、まだちゃんとした人間だよ?」

魔王の目を睨み、笑みを浮かべる。

彼女は私に人ではなくなっているという事実を押し付けて絶望させる気だったのだろうが、あいにく私はちゃんと人だ。もし人でなくなっていたとしても、それはそれで構わない。

でも、出来ることなら人として死にたい。私がカミラに刻むと言った、カミラが私に刻んでくれと言った。なら、私はその約束を守りたい。

「私は勇者シャルロット・グラトニー!人の子として、父と母から生まれた子!そして勇者としてお前をぶっ飛ばして、五体満足で家に帰ってやる!」

何度も言う。私は、私のしたい事をする。それが、私という1人の人間だ。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

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