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勇者の杖の魔法使い  作者: mito
八章 憎しみの終末、そして旅の終末へ
35/40

35話 終末を見据えて

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

魔人が死に、列強は遂に残り1人。それも、最古にして最強の戦闘能力を誇る彼が死んだ。それ程、勇者シャルロット・グラトニーは強い。私はそれを認めせざるを得なかった。

「そろそろ、私も潮時なのかもね。」

随分と長い間生きてきた。私が生まれてから幾万、幾億年と経った。その間、彼が私に勝つ事は無かったし、私が彼に勝つ事も無かった。少し、寂しい気もする。だけど、彼も楽しかっただろう。最期に、戦いの飢えを満たせたのだから。

「さて、踊りましょうか。」

しばらくしない内に勇者一行はこの魔王城へ辿り着くだろう。もし私が死ぬとしたら、その時なのは間違いない。なら、最後まで好きな事をしていよう。私が消える時、悔いが残らないように。



魔人が死んで数日、私はやっと目を覚ました。彼との戦いの後、私は死にかけだったけどソフィアのおかげで何とか一命を取り留めた。そして今では...

「カミラ、まだやるよね。」

「はっ、当たり前だろ?負けてたまるかよ。」

私は今、カミラとソフィアの3人でサウナに入っている。流石カミラ、この暑さにも見事に耐えている。でも、私も負けていない。

「あの、お2人共、お互いにズルしてますよね?」

「え?なんの事?ね、カミラ。」

「そうだぞソフィア、私達がそんな事するわけないだろ。」

そう、ズルはしていない。ただ、魔法を使って体内で体温調整をしているだけ、これをズルとは言わない。

「てかさカミラ、さっきから魔法使ってるでしょ?バレバレなんだけど?」

「は?使ってないし。そっちこそ使ってるだろ、バレバレだぞ。」

カミラがズルをしているのに認めない。やっぱり負けず嫌いなんだなカミラは。それなら、私はこのままズルをせずに勝ち抜いて...

「...2人とも、バレバレです。」


「...なあ、ソフィア。この状況を説明してくれるか?」

「見ての通りですよレオンさん、この2人がおバカさんなだけです。」

数時間。そう、数時間サウナに入っていた。そのせいで私とカミラはぶっ倒れて、今は涼しい部屋で気絶したように寝転んでいる。

「カミラ、私の方が1秒長かったね。」

「はっ、何言ってんだ?私の方が長かったろ。のぼせてんのか?」

「カミラの方がのぼせてるし。」

「は?私がのぼせるわけないだろ、半竜半エルフだぞ。」

寝転がりながらカミラと言い合いをしていると、レオンが私達の方を見て微笑んだ。あまり見ない顔だ。

「ほら、そろそろ立てよ。"彗星雨スイセイウ"、見に行くんだろ?」

「っ!うん!」

私とカミラが同時に起き上がる。今日は、大切な日なのだ。


近くの山に登り、真上に広がる満点の星空を見上げる。彗星雨、それは約数億年の周期で訪れるとされる彗星の雨。私達が住むこの地では魔力の濃度の関係上、落ちてくる彗星は粉々に砕け、地上に光る粒子を降らす。その時の景色は、この世の何よりも美しいとされる。

「来るぞ。」

やがて、大量の彗星がこの地に向かって降り注いでくる。その彗星達は光り輝き、やがて砕け散った。

「わ〜!綺麗ですね、皆さん!」

「ああ、まったくだ。」

空を見上げ、私はその絶景を目に焼き付ける。数億年に一度の絶景、この景色を見れること事態が奇跡のようなものだ。こんな絶景、もう二度と見れないだろう。

「...懐かしいな。」

「え?」

私の隣でカミラが呟く。そういえば、私はカミラがいつ生まれたのかを知らない。もしかしたら、カミラは数億年前から...

「もう数億年前の事だ。私がまだガキだった頃、親父と一緒にこの彗星雨を見た事がある。その時の事を思い出したんだ。」

「そっか、カミラっておばあちゃんだったんだね。」

「殴るぞお前?」

殴られる覚悟をしていたのだけど、カミラは私の冗談を軽く流して再び空に目を向けた。その横顔はとても美しくて、もう二度と見れないはずの彗星雨の事を忘れて、私はカミラの横顔を目に焼き付けていた。

「またいつか、1人で見るかな。」

「っ...。」

カミラがふと放った言葉。私はその言葉を聞いて泣きたくなった。いつかくる死が怖いんじゃない、私は1人で永久の時を生きるカミラを想像してしまったんだ。カミラの顔は少し寂しそうだった。もし私達が居なくなってしまったら、もっと寂しい想いをするのかもしれない。そんなの、悲し過ぎる。

「安心しろよシャルロット。」

「っ!でも...!」

カミラが私の顔を横目に見て、再び空に目を向けた。顔に出てしまっていた事が、少し恥ずかしい。

「私はお前の事は絶対に忘れないし、1人でも生きていける。確かに、少しは寂しいかもだけどな。」

カミラが立ち上がって、私の目の前に立つ。

「そんなに心配なら刻んでくれよ。お前の事、私の記憶の中に。」

「ふふっ、当たり前じゃん...!」

美しい彗星雨を背景に立つ彼女の姿は、その絶景が霞むぐらいに...この世の何よりも、美しかった。


翌朝、私達は再び歩き出した。これまでの旅、色々な事があった。でも、もうその旅も終わりへと向かう。魔王城、それは魔界の最深部にあり、魔族を統べる王の城。

「じゃあ、行こうかみんな。」

そこが、この旅の終着点だ。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

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