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勇者の杖の魔法使い  作者: mito
八章 憎しみの終末、そして旅の終末へ
34/40

34話 飢えと輪廻の終末

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

立ち上がり、魔人の方へ振り向く。今までの彼との戦闘の全てが私の頭の中に流れ込む。圧倒的な全能感、今の私なら誰にも負ける気はしない。今まで会ったどの敵にも。

「シャルロット...なのか?」

「ごめんカミラ、話は後で。今は、奴が先だから。」

魔人が私の真上に現れる。流石の速さだ、でも私には彼の動きは完全に見えている。

「っ!これは、結界?」

「弾け。」

結界が光り輝き、魔人を空高く打ち上げる。五つの大きなクリスタルが私の周りを舞う。それらには各属性の力がこもっていて、さっきの結界は風の属性によるものだ。

「"天舞ヴォレ"。」

空高く飛び上がり、魔人に追撃を仕掛ける。空中に浮いている彼は、私にとってただの的でしかない。

「地に落ちろ!」

魔人を叩き落とし、彼を追う。彼に回復の暇は与えない。彼をひたすら追い込む、今はただそれだけに集中する。

「休む隙もありませんねぇ!」

「何?休みたいの?」

「まさか!」

彼も私に攻撃を仕掛けるが、私はそれを全て防ぎ、反撃を喰らわせる。だけど、まだこの程度じゃない事を私は知っている。私は今まで、彼の底を見た事がない。

「生命を形作るは魔法の源。万物を形作るは偉大なる元素。」

「させるとでも...!」

彼の手を掴み、胴を蹴る。彼の腕は千切れ、彼は空高く打ち上げられた。

「滅びろ、"神魔マギア・エレメント"。」

宙を舞う彼に私の魔法を避ける手段はない。よって、私の魔法は彼に直撃した。

本来ならば致命傷になる程の威力。だが、地に墜落した彼は立っていた。

「素晴らしい...!これ程までの魔法、かつて存在したどの偉人でもなし得なかった。賞賛に値しますよ、勇者シャルロット。」

彼の頭が崩れ、彼の本当の頭が露わになる。目はなく、鼻もなく、耳もなく、ただ口がある。山羊の魔族としての...一族を象徴する巻き角すら捨てたその姿は、まさに異形の人のよう。

「改めて自己紹介をしよう。私は列強...魔人アペタイト。誉れ高き、美食家だ。」

人に似た魔族、その姿は彼を魔人たらしめるものだった。

「私の想定よりもあなたは強い。私の戦いへの飢えすら満たさんとする程に。」

本当の姿を露わにした彼は、今までとは違い、全身を魔力が覆っていた。彼は今、魔力を纏っている。つまり、彼は本気を出したという事だ。

「戦闘能力だけで言えば、フォンドネス嬢...魔王すらも超えるだろう。つまり、私と並ぶという事だ。」

「並ぶ?何現実逃避してるの?」

彼に杖を向け、笑みを浮かべる。我ながら、あんな化け物を目の前にしてどうかしていると思う。けど、これでいい。私は、私の思うままに行動する。

「私の方が上に決まってる。」

「ククッ、そう来なくてはなぁ!」

互いに動き出し、衝突する。その瞬間に森を覆っていた霧が晴れ、空を覆っていた雲が晴れた。

「凄まじい威力!見事!」

天高く舞い、彼から距離をとる。だが、彼は空を踏み、私の背後をとった。

「っ...!」

「おや?笑みが消えていますよ?」

結界ごと蹴り飛ばされ、落下する。彼はさっきよりも数段と速くなっている。だが、もう彼の底が見えてきた。確実に追い込んでいる。

「さあ、避けてみなさい!」

彼が爪を振るった瞬間、大地に亀裂が入った。彼は天空にいながらも、魔力を飛ばして斬撃を放ったのだ。大地を裂く程の斬撃、それが彼の速さで放たれる。

「さて、死にましたかね?死体が残っていれば良いのですが...」

大地を土埃が覆う中、彼に一筋の光が放たれた。彼はその光を見て笑った。なぜなら、それは私が生きている証だったからだ。

「まったく、とんでもない攻撃だよ。」

「生きているとは思っていましたが...まさか、無傷だとは...!」

天空に巨大な魔法陣を展開し、私の頭上に結界を張る。あれだけ斬撃の雨を浴びせてくれたんだ、お返しをしてあげなきゃいけない。

「降り注げ、"雨魔マギア・レイン"。」

あらゆる物を貫く雨が、大地に降り注ぐ。まさに天変地異、それが彼と私の戦いだ。

「ククッ...クハハハハハッ!良い!実に良い!懐かしき感覚、これ程までに私が攻撃を喰らうとは!」

身体を再生させながら彼が私に向かって歩みを進める。これだけやってもまだ動ける、本当にあり得ない強さだ。一体何が彼をここまで強くしたのか...少し気になるけど、大して気にする事じゃない。私はただ、繋げばいい。

「そろそろ終わりにしよう、アペタイト。もう夜が明ける。」

「そうですね、私もディナーも食べれていないので、そろそろ朝食を食べたい気分ですよ。」

互いに魔力をさらけ出し、全力の一撃を構える。次の一撃で、もしかしたら私は死ぬかもしれない。でも、私はそれでも繋ぐ。この一撃は、彼を殺す為の一撃であり、私が勝つ為の一撃じゃない。

「星は煌めき、生命は咲き乱れる。天を覆う星々、地を覆う草木、それら万物は星の輝きによって創られし神の造物。」

私が詠唱をするように、彼も地を踏みしめて魔力を凝縮する。だが互いに隙はなく、双方が完璧な間合いで、完璧な魔力操作で、その一撃を構えた。

「たが我が力は神のものに非ず、我が身は神のものに非ず。この身、この力、我が欲望の為にあり。我は囚われぬ者、我は我を生きる者。我が名は、シャルロット・グラトニー!」

「その覚悟に、その強さに敬意を払おう。我が名は、魔人アペタイト!」

静寂が訪れ、一瞬だけ時が止まったように感じた。それは嵐の前の静けさであり、次の瞬間に災いが訪れる。

「壊せ!"星之輝マギア・ノヴァ"!」

私が魔法を放つ、そして彼が爪を振るう。視界が白くなり、耳鳴りがした。やがて目を覚ました時には、私は彼に首を掴まれていた。

「あなたの負けです、シャルロット・グラトニー。」

「...そう、だね。私の負けだ。」

彼の笑みを見ながら、私は笑みを浮かべた。さっきの一撃は全力の一撃。だが、私が勝つ為の一撃ではない。あの一撃は、彼女へ繋ぐ為の一撃だ。

「ん?何を...」

「繋いだよ、シャルロット。」

彼の身体に手を当てる。その瞬間、彼の魂に彼女の魂が触れた。もう私の出番は終わった。私は彼女に託して、眠りにつく。私は負けた。でも、彼も負けたのだ。



暗闇の中、魔人へ向かって歩く。あれだけやり合った後だというのに、こいつの魂は全然弱っていない。

「あなたは...」

「世界を繰り返したのは4917万1114回目だが...これでお前に会ったのはちょうど7777万7777回目だ。おめでとうアペタイト、ラッキーセブンだ。」

私はあいつと違って、本来この世界にいるべきじゃない存在。あいつ...この世界のシャルロットは、本当にぶっ飛んだやつだった。魔人を倒す為に、まさかこんな作戦を考えるとは思わなかった。

「ところで、アペタイト。お前、地獄は好きか?」

「...ククッ、なるほど。そうか、負けか。だが、楽しかった...私の飢えは、満たされた。」

不本意だが、私はこの作戦に乗る。こいつを殺せるなら、何だってやってやるさ。今までもそうだったんだから。

「さて、アペタイト...」

魔人を押し倒し、彼の顔を覗き込む。いくら魔人だとしても、私より劣る部分がある。それは生命として、絶対に私に勝ることがない事。魂の強さ、それだけは何度も世界を繰り返した私の方が上だった。

「私と一緒に、地獄に落ちようぜ?」

「ふっ、それも一興か。」

私の存在自体が消え、彼女の身体から私の力は...記憶は消える。だけど、大丈夫だ。彼女はもう弱くない。それは一番近くにいた私がよく知ってる。彼女なら魔王すら殺せる、それを私が知っている。

ああ、やっと...


私の想いは報われた。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

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