29話 対峙
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「さてと、みんな準備はいい?」
翌朝になり、城門の前で集合する。これからの旅はより厳しいものになる。けれど、もう私は弱くないし、レオンやソフィアもすごく強い。だから、心配する事はない。
「私は大丈夫だよ、お姉ちゃん。」
「えっ?言ってなかったっけ?カルムはお留守番だよ。」
「へ?」
みんなぽかんとした顔をしている。私とした事が、本当に何も言ってなかったみたいだ。
「シャルロット、カルムはもう列強と戦える程の力を持ってる。この僕が保証する。」
「レオンなら分かるでしょ?この先の戦い、相手がどう出てくるか分からない。だから、人類の砦であるこのフォルテには強い人がいて欲しいの。」
「なるほど、確かにそうかもですね。でも、それなら稲荷さんだけでも十分なのではないですか?」
ソフィアの意見もごもっともだ。確かに稲荷っていうこの剣士の人はかなり強い、十分な戦力だ。でも、カルムを残す理由は他にもある。
「ごもっともなんだけどね〜。本音を言うと、カルムを危険な目にあわせたくないし...」
「お姉ちゃん、私なら大丈夫だって。私ももう弱くないんだよ?」
「あと、やっぱり妹の恋路は応援したいしね?」
「え?」
カルムが頬を赤らめた。うん、やっぱりカルムはその意識がないだけで無意識にその感情を抱いてる。お姉ちゃんである私には見え見えだ。
「それじゃあよろしくね稲荷さん!どうかうちの妹をご贔屓に!」
「ふふっ、了解したでござるよ!」
「ちょ、ちょっと!?」
そのままカルムと稲荷さんにフォルテを任せて、私達3人は歩き出した。というか、走り出した。ゆっくり旅をしてたいけど、今はそんな場合じゃない。待っててね、カミラ。必ず私が、あなたを救ってみせる。
◇
「カミラ、最近の調子はどうですか?」
「...気安く私の名前を呼ぶな、クズめ。」
「おやおや、どちらが上かまた教えてあげる必要があるようですね?」
アペタイトに連れられてからかなりの月日が経つ。最近、あちこちでシャルロットの魔力を感じるし、レオンやソフィアの魔力も感じる。みんな、まだ戦っているみたいだ。
「相も変わらず意地悪な子ね、アペタイト。」
「ん?ああ、貴女ですか。久しぶりですね、ここへ何の用ですか?フォンドネス嬢?」
いきなり少女が現れた。アペタイトとは別の邪悪さ、勘で分かる、こいつが魔王なのだと。
「今日はね、貴方にお願いがあってきたの。私の勇者様の事でね。」
「ほう、あなたのではありませんが...彼女がどうかしましたか?」
「実はね、あの子から手を引いてくれないかなって!」
その瞬間、この場に静寂が訪れた。手を引く、つまりは諦めろということだ。誰よりも食を愛し、そして美食を追求する彼にとって、シャルロットを諦めるという事はあり得ないこと。彼女も古い付き合いならそれは知っているだろう、彼女は地雷を踏んだ。アペタイトにとって、それは禁句だった。
「クククッ、ハハハハハハッ!」
「ふふっ、あははははははっ!」
2人は互いに笑い合い、魔力を高める。そして、再び静寂が訪れ、アペタイトが声を荒らげた。
「私にあの食材を諦めろと!?笑わせるんじゃありませんよ!それとも今ここで、白黒つけますか?」
「あら、それは奇遇!私もそろそろ決着をつけたいと思っていたの!」
魔人と魔王が衝突し、凄まじい衝撃波が発生する。この2人はまさに天災そのもの。でも、私はそんな天災相手に好機を見出していた。
「..."暴風の大鎌"!」
私が2人の間に魔法で攻撃を仕掛け、それぞれの攻撃をずらす。その瞬間に互いの攻撃が互いに命中し、大きな爆発が起こった。その瞬間、私はその場から逃げ出した。
「...お前らには殺させねぇよ。」
シャルロットは私の大切な親友だ。でも、奴らを見て分かった。あれは到底敵う相手じゃない。だったら、あいつらに殺される前に、私が殺してやる。シャルロット、最後にお前の目に写るのは、私じゃなきゃ駄目なんだ。
◇
「シャルロット!今どこに向かってるんだ?もしかして、魔霧の森の場所が分かったのか?」
「大体ね!1人で旅をしてる時に、それっぽいのを!」
フォルテから離れて数日、やっと前いた場所の近くまで来た。確かこの近くから奴の気配が濃くなっていった。もうすぐだ。もうすぐ、奴の元にたどり着ける。
「2人とも止まって、誰か来る。」
前方から魔力を感じた。強い魔力だ、一瞬アペタイトかと思ったけど、奴の魔力とはまったく違う。あれ、この魔力どこかで感じた事がある。いや、この魔力を私は知っている。ずっと求めていた、この気配を。
「よお、久しぶりだなシャルロット。」
「...カミラ、なの?」
そこにいたカミラは、あの町で別れた時と随分様子が違った。でも、紛れもないカミラだ。本物だ。ずっと、会いたかったカミラがそこにいる。
「カミラ、私...!」
「シャルロット!」
レオンが私を抱えて、勢いよく倒れる。その瞬間に私のいた所に風の刃が飛んだ。それは、カミラから放たれた物だった。
「カミラ?なんで...?」
「なあ、シャルロット。頼みがあるんだ。」
私を見つめるカミラの目は、氷のように冷たく、刃のように鋭かった。カミラのその目は、明確な殺意を持っていた。
「私に、殺されてくれ。」
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