表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の杖の魔法使い  作者: mito
六章 魔法の極地
24/40

24話 奪う者

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

「ああ、心が踊る。強大な存在を私の世界に連れ去る事が出来た!それも、一人はほとんど力が残ってはいないでは無いか!」

私は人が苦しみ、もがく姿が好きだ。兄は人をすぐに殺してしまい、姉は人を救おうとする。くだらないのだよ、実にくだらない。

「我らは魔族!人をいたぶり!殺し!喰らい!その欲のままに生きる!そして私の一族は人を喰らい、その力を奪う!」

喰らうだけでは面白くない!どうせ喰らうのなら、遊び尽くしてから喰らおう!そして、今この世界には華麗なる剣士、高位なる僧侶、名高き騎士王、全ての属性を操る魔法使い!

「そして、あの伝説の勇者がいる!私は貴様らを喰らい、この魔界に!世界に!列強として名を轟かせ、ゆくゆくは魔王となる!」

意図せず揃った最高の食材!ああ、なんて幸福!心が踊る!私は今、夢を見ている。



「お嬢さん、もう少し速く走れるか!」

「ちょっとキツイかも...!」

体内だけでなら魔法を発動出来る事に気付き、身体に強化魔法をかけて無数の山羊から逃げ回っている。流石に数が多過ぎる、魔法もまともに使えない今は、逃げ回るしかない。

「お嬢さん、少し失礼!」

「え?」

いきなり稲荷が私を抱えて飛び上がる。その次の瞬間、私のいた場所で爆発が起こり、クレーターが出来た。地雷だ。

「良かった、間一髪でござるね!」

「あ、ありがとう稲荷。」

「では、少し飛んでてもらうでござるよ!」

「へ?」

稲荷に真上に投げられて、稲荷だけが地面に着地する。無数の山羊のど真ん中、まさか私だけ逃がして自分だけ残る気じゃ...!

「稲荷!駄目!」

「お嬢さん、安心するでござるよ。」

稲荷が剣に手をかけ、腰を落とす。その瞬間、稲荷を中心に無数の山羊達を囲むように円が出来た。

「一刀流、居合...」

稲荷から魔力が感じられなくなり、静かに剣が抜かれた。その瞬間に山羊達の動きは止まり、やがて稲荷はゆっくりと剣をしまった。

「"円月一光エンゲツヒトヒカリ"。」

稲荷が剣をしまった瞬間、あの無数の山羊達が真っ二つに切られた。ものすごい技だ。あんなにも美しく、そして強い技を私は見た事が無い。

「よっと、無事であるか?お嬢さん。」

「う、うん。ありがとう。」

稲荷に抱えられ、彼が私の顔を覗き込む。そして私の安否を確認した後、彼は私を降ろした。

「さて、これでしばらくは...」

「っ!稲荷!」

真っ二つに切られた山羊達の身体が再生していき、また私達を囲う。まさか不死の生き物?そんな事が...いや、これがジェラスの魔法の世界ならあり得なくも無い。術者を倒さない限り無限に湧き出る化け物、こんなのどうやって勝てば...!

「流石にしんどいでござるな。お嬢さん、拙者が時間を稼ぐからその内に逃げるでござるよ。」

「でも、それじゃあ稲荷は?」

「拙者はしがない剣士、かの勇者の妹であるお嬢さんの方が生き残った方が良いでござる。」

「え、知ってて...」

稲荷は剣を抜き、私に背を向ける。このままじゃ2人とも死んでしまうのは分かってる、けど...

「...一緒に脱出するんでしょ。」

「っ!そうでござったな...では、拙者がこの場を切り抜けよう!」

山羊達が襲いかかり、稲荷が剣を構えた時、私達の目の前に光り輝く斬撃が放たれた。斬撃を喰らった山羊は塵になり、消えていく。この斬撃には見覚えがあった。

「まったく、この僕がまんまと罠にかかるとはね。由々しき事態だな。」

「やっと見つけました!無事ですかカルムさん!」

聞き覚えのある声がして、私は振り向く。そこには、あの2人がいた。

「レオンさん!ソフィアさん!」

「すまない、遅れた。やっと合流出来たなカルム。」

レオンさんが稲荷の横に立ち、剣を構える。ソフィアさんとも合流出来たし、もう怖いものは何もない。

「騎士王殿でござるな、その名はかねがね。拙者は稲荷と申す者でござる。」

「稲荷...まさか、あの名高き華麗なる剣士に会えるとは思わなかった。肩を並べて戦える事を誇りに思うよ。」

「ふふっ、拙者もでござる。」

2人が剣を振りかざし、山羊達に向かって振り下ろす。その瞬間に無数の山羊達は塵となって消え去った。

「よし、これでとりあえずは大丈夫だな。」

「騎士王殿、流石の剣技でござるな。」

「そちらこそ。」

あの2人、会ったばかりなのにもう仲良くなってる。まあ、そりゃ互いに剣を極めた者同士みたいだし、当然か。

「2人とも、聞いて。この世界の主はジェラス、この世界は奴が創ったみたいなの。」

「やっぱりか。ソフィア、探知は?」

「うん、もう居場所は掴めてます。後は倒すだけ。」

流石レオンさんとソフィアさんだ。まさかもうジェラスの居場所を掴んでいたなんて。

「それと、あの山羊達が密集している場所があるみたいだけど、そこはどうしますか?」

「いや、まずはジェラスを倒す事が先だ。でなければ、奴らは無限に湧き出る。」

「分かった、じゃあ早速だけど行きましょう。なるべく早く脱出しなきゃ。」

2人と合流した私と稲荷を含む4人なら、十分ジェラスへの勝機はあるはず。私も体内なら魔法は使えるし、足でまといにはならない。

「うん、行こう。早く脱出して、お姉ちゃんを探さなきゃ。」

必ずこの世界から出てお姉ちゃんとカミラさんを見つけ出す。列強に近しい実力を持つジェラスを倒せれば、もう列強は目の前だ。



「はぁ...はぁ...」

「狼、殺ス。狼、殺ス。」

「あがっ...!」

魔力が足りない、力が出ない。まだ死ねない、こんな奴らに負ける訳にはいかない。

「うる、さい...!」

魔力が欲しい、力が欲しい。奴を殺す為の力が、カミラとまた会う為の力が。私はまだ、死ねない。こんな奴らに負ける訳にはいかない。

「狼、殺...」

「...喰らえ、"暴食の龍(ナーガ・ベルゼ)"!」

山羊を喰らい、魔力を奪う。力を奪う。身体中に力が満ち溢れる。でも、まだ足りない。あの魔人を殺すには、足りない。

「待ってて、アペタイト。私が必ず、お前を殺してみせる。」

私は、絶対に負けない。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ