表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の杖の魔法使い  作者: mito
六章 魔法の極地
23/40

23話 山羊の世界

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

「ここがお姉ちゃんの気配がした場所のはず...だよね。」

「ああ、間違いないだろう。なんたって、この有り様だからな。」

私達がお姉ちゃんの気配を追って爆発のあった場所に来ると、そこには巨大な穴があった。穴の底は見えず、周りの自然は破壊されている。

「これ程の威力、一体どんな魔法を...」

「おそらく、魔法じゃないと思います。」

「え?」

ソフィアさんが周囲を観察しながら話す。

「シャルロットさんが平行世界の自分自身と一体化しているのなら、少なくとも列強と並ぶ程の魔力量は有しているはずです。アペタイト、あれの内に秘められた魔力量は凄まじかった。あれでも彼は魔力を隠しているはずでしょうから。」

「もしかして、この爆発が魔法じゃないってのは...」

「はい、おそらくは魔力の放出です。」

ソフィアさんの言葉を聞いて、私も辺りをよく観察してみた。魔法も無しにこんな威力、普通ならありえない。でも、ソフィアさんにそうだと思わせる決定的な何かがあるはず。

「っ!これは...!」

「カルムさんも気付きましたか?」

「うん!ここ、魔法陣の跡が無い!」

通常、魔法が使われたらそこには魔法陣だけが放つ独特な魔力痕が残る。だけど、ここにはそれが全く無い。本当に、これだけの威力を魔力の放出だけで出したんだ。

「でも、これで分かりました。」

ソフィアさんが私達の方を向いて笑みを浮かべる。

「今が好機です!」

「どういう事だ?僕にはさっぱり...」

「そっか!今のお姉ちゃんなら、魔力がほとんど残ってないかもしれないよね!」

これ程の魔力消費、いくら列強程の魔力量を有していたとしても流石にほとんど魔力は残ってないだろう。同様に、体力の消費もものすごいはずだ。お姉ちゃんは、そう遠くには行ってないはず!

「なるほどな、確かにこれだけの魔力消費ならシャルロットはまだ遠くまでは行けてないだろう。よし、探すぞ!」

「はい!」

そうして私が足を一歩踏み出した。その瞬間に、音もなく周りの景色が変わった。明らかな異常事態だ。

「え?」

そこはとても明るくて楽しそうな雰囲気な町で、一見して平和な町。だけど、人の気配もなく、なぜだか不気味だった。

「何、ここ...2人は?」

レオンさんやソフィアさんも居ない。まさか転移魔法?でも、魔法の発動が感知出来なかったし...いや、常に魔法が発動してるみたいな感覚だ。一体どういう現象?まさか、幻覚?

「狼ハ殺セ、奴ハ山羊ヲ喰イ殺ス。狼ハ殺セ、奴ハ山羊ヲ喰イ殺ス。」

「誰!」

声のした方を向くと、そこには山羊の頭をした人型の化け物が歩いていた。そして今気付いた、私の頭に狼の耳が生えている事に。

「まさか...」

「狼ハ殺セ、奴ハ山羊ヲ喰イ殺ス。狼ハ、ソコニイタ。」

「やっぱりね!」

あの山羊が私の方を向き、走り出した。やっぱりここでは私が狼で、奴は私を殺そうとする山羊。

「山羊が狼を殺すって、食物連鎖に反してるじゃん!」

杖を構えて魔法を撃つ。でも、私の杖から魔法は放たれなかった。

「なっ!?」

「狼、殺ス!」

「ちょっ、やば...!」

奴が私の眼前まで迫った時、あの山羊に向かってどこからが斬撃が放たれた。でも、この斬撃はレオンさんのものじゃない。別の誰かの...

「お嬢さん、少し失礼するでござるよ。」

「え?」

私は誰かに抱えられてその場を離れた。その人は見た事の無い服装をしていて、見た事のない剣を腰に携えていた。彼のような格好の人は、一度も見た事がなかった。


「あの、ありがとうございました。」

「礼には及ばぬよ、お嬢さん。拙者はただ当たり前の事をしただけでござるよ。」

不思議な格好をしたこの青年は、私を地下室のような場所へ案内してくれた。生活感があるし、結構前からここに居るのかもしれない。

「あの、ここは?」

「その前に自己紹介がまだであったな。拙者、<稲荷イナリ>と申す者。ここは拙者の拠点でござる。」

珍しい名前だと思った。それに、拠点って事はもしかしてここに元々居た訳じゃないのかも。

「あっ、私はカルム・グラトニーです。拠点って事は、元からここに居た訳じゃないんですか?」

「うむ、拙者は数年ほど前にここへ迷い込んだでござるよ。お嬢さんはさっき迷い込んだのであろう?」

「はい、その通りです。」

察しがいい。この人、さっきの斬撃も凄かったし、頭も切れる。おそらく、相当強い。

「ここはとある魔族が支配する場所でござる。確か、奴は自身の名をジェラスと名乗っていたな。」

「っ!ジェラス!」

リーニエントさんから預かった手帳に書いてあった、列強に近い実力を持つ魔族の一体。だったらこれ程の規模の魔法は納得出来る。ここに来てからずっと違和感を感じていた。常に魔法が発動しているような感覚、あれは気のせいじゃ無かった。ここはジェラスが魔法によって創り出した、言ってしまえば別世界なんだ。

「その様子だとジェラスを知っているようでござるな。ならば、一つ頼みがあるのだが...」

稲荷が私に手を差し出し、真剣な顔で言った。

「拙者と、ここを脱出してはくれぬか!」

彼の境遇から考えると、その頼みは彼にとってとても重要なもの。私としても、この頼みを断る理由はない。

「もちろん、私も稲荷と協力出来れば心強いよ!」

「決まりだな!それと、一つ聞きたいのだが、お嬢さんの仲間が3人程この町に来てはないか?」

「分かんないけど、私がここに来る直前に2人の仲間とは一緒にいたよ。」

稲荷は人の気配を感じれるのかな、もしかしたらレオンさんとソフィアさんもここに来ているかもしれない。2人がいるならもっと心強い。まずはその人達と合流を目指した方がいいかもしれない。

「そうか、他にも気配がしたのでな、もしかしたらお嬢さんの仲間かもでござるよ。」

「うん、どちらにせよ確認はした方がいいし、まずはその人達を探そうか。」

「うむ!では、さっそく行こう!」

地下室から出て、外に出る。そこはあの町とは変わらない景色。だけど、一つだけ違う事があった。

「なに、この数...」

「お嬢さん、拙者から離れては駄目でござるよ。」

そこには、あの山羊が無数に存在していた。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ