22話 平和な世界
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「おいカルム、話が違うぞ。たとえカミラであっても魔族は...」
「レオンさんは引っ込んでてください。ソフィアさんも、これからすることに手出しはしないで。」
私はカミラさんの前に立って、杖を構える。相手は列強、無謀かもしれない。それでも、今やらなきゃいけない。
「死にたいのか?シャルロットが悲しむぞ?」
「殺せるなら殺していいですよ。お姉ちゃんが悲しんでもいいのならね。」
魔法陣を展開して、魔法を放つ。カミラさんは私の魔法に反応して動き出した。
「無詠唱...魔法使いの高みだな。"毒吹雪"。」
黒い吹雪が私を囲み、黒い雪が肌に触れるとそこから身体が壊死していくのが分かる。でも、なんでだろう。窮地なのだからこそなのだろうか、全く苦しくない。
「その程度ですか、カミラさん!」
炎の渦を発生させて、黒い吹雪を焼き払う。私の魔法程度で焼き払える程の魔法、これは列強の実力ではない。
「っ!なんで、笑ってられる!」
昔から誰かの為に動くのが好きだった。お母さんのお手伝いや、お姉ちゃんのお世話、お父さんのマッサージ。みんなの笑顔を見るのが好きだった。その度に、私も笑顔になれた。またお姉ちゃんの笑顔を見たい、たくさんの人の笑顔を見たい。その為なら、どんな苦境でも笑ってぶち壊してやる。
「私が必ず紡ぐ!お姉ちゃんと、あなたを!人間と、魔族を!」
「そんな事、出来るわけないだろうがぁ!」
天変地異のような、無数の攻撃が私に襲いかかる。だけど、それでも私は杖を構えて魔法陣を展開する。もう弱くない、私だって戦える。足でまといにはならないんだから。
「放て!"元素の爆散"!」
治癒属性を含めた五属性の爆発。治癒属性は他の四属性を強化する効果もあり、それによって絶大な威力を発揮する。
「けほっ、こほっ...!」
「生きる為、今何をするべきか分かりますよね?」
私はカミラさんの頭に杖を向ける。人に擬態していたせいか、カミラさんは上手く魔族の身体を扱いきれていない。再生も遅い、あの魔法を直撃で喰らったんだ。私もだけど、カミラさんにも余力は残っていない。
「...似てるな、あいつと。」
カミラさんはそう言い放って飛び去っていった。これでしばらくはカミラさんは動けない。そうなると必然的にアペタイトのカミラさんを使った殺戮は止まる。あとはお姉ちゃんと合流して、奴に襲撃を仕掛ける。奴さえ倒してしまえば、お姉ちゃんとカミラさんの絆は再び紡がれる。
「説明してもらおうか、カルム。」
あの後、私はレオンさんに睨まれながら迫られている。今まで、2人はカミラさんに会った時は自らの手で殺める覚悟をしていた。だけど、その覚悟を私が裏切ったんだ。
「説明も何も、私はあの2人の絆を信じてるだけだよ。」
「お前に何が分かる!ソフィアならまだしも、あいつらの何も見てきてないお前が!」
「じゃあレオンさんは2人のことを想ってカミラさんを殺そうとしてるの?違うでしょ!あなたはただ、魔族だから殺そうとしてるだけ!」
お姉ちゃんとカミラさんがどんな様子だったかは知らない。だけど、それでもカミラさんがお姉ちゃんを心から想っていたのは分かった。ソフィアさんの話からも、あの2人がどれだけ信頼し合っていたかはよく分かった。でもレオンさんは魔族だからカミラさんを殺そうとしてる。あの町を見て分からなかったわけがない。魔族は、人間と同じなんだ。
「確かにカミラさんは人を殺したんだと思う。だけどあの人が自分の意思でやったこととは到底思えない。罪は無くならないけど、あなたはそこまで分かった上でかつての仲間を殺せるの?」
「ならどうしろって言うんだ!たとえ僕らがカミラを許したとしても、他の人達は決して許さないぞ?なら殺す以外に何か方法があるのか?断言する、ない!そんな方法はないんだよ!」
「...あるよ。」
「あぁ?」
これは本当に最後の手段。カミラさんも望んでないし、本当に誰も望まない手段。それでも、これが世界にとっての最善策でもある。そんな最高で最低な手段。
「カミラさんを魔王にする。」
「っ!お前何を言ってるのか...!」
「魔族を支配しているのは魔王。人間と魔族の戦争を止めたいのならば、双方の最高権力者が互いに協定を結べばいい。王族の権力に匹敵し、現魔王を倒した後のお姉ちゃんと、新しく全ての魔族の頂点に立ったカミラさんなら、戦争を終わらせれる。」
きっと、カミラさんは人として生きることを望んでいたんだと思う。だけど、人を殺してしまった今、それは叶わない。ならば別の方法で人と関わればいい。魔族は悪い者だけではない、逆に大半が人間との共存を望んでいる。ならば本当の敵だけを滅して、平和な世界を作る。人と魔族が信頼し合うのは時間がかかるだろうけど、不可能ではない。可能な未来なんだ。
「ソフィアさん、あなたはこのむちゃくちゃな理想に付き合ってくれますか?」
「うん、もちろん。」
「ソフィア!?なんでお前まで...!」
「レオンさん、あの町を見て思わなかったんですか?人と魔族は共に生きれる。支え合える。あの町には、人と魔族が共存する世界があったんです。」
ソフィアさんの目は希望を宿していた。この人は、最初から争いなんて望んでいなかった。出来るなら、争わずに全てを解決してしまいたいと、そう思っていたのを私は知っている。この人は優しいから、だから魔族とも共存を望んでいた。
「レオンさん、今まで数多の魔族を殺し、人を守ってきたあなたからすれば残酷な事かもしれません。だけど、それでも魔族との共存を目指してみませんか?」
ソフィアさんの問いかけに、レオンさんは動揺した。今までの戦いで、レオンさんは仲間が死ぬところなんてたくさん見てきただろう。だからこそ、魔族は許せない。私だって、レオンさんの立場だったらこの問いかけを拒否するかもしれない。でも、それでもレオンさんは選択した。
「...はぁ、分かったよ。」
「っ!レオンさん、それ本当に?」
「こんな時に嘘つく訳ないだろ。まあ、僕もカミラに思う事もあるしな。」
「ふふっ、ありがとうレオンさん。やっと少しだけ肩が軽くなった気がする。」
ソフィアさんが安心したような顔で笑った。この旅の最中、2人はずっと思い詰めた顔をしていた。だから、やっと本音で話せて、そして意気投合して、安心したんだ。
「さてと、そうと決まれば早く行こうか。」
「うん、そうですね!早くカミラさんやシャルロットさんを見つけないと!」
いつもとは違い、ゆっくり歩き出す2人の後ろ姿を見て、私も歩き出す。この2人の姿を見て、お姉ちゃんの事が羨ましくなった。だって、こんな素敵な人達と出会えたのだから。
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