20話 列強に近しい者
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
レオンさんがリーニエントさんに切りかかる。レオンさんは、彼女がお姉ちゃんを止めなかった事に怒っていた。
「なんで止めなかった!」
「あなた方も知っているはずです。彼女は人に言われて止まる人ではない。それに安心してください、彼女には私を呼び出せる魔道具を渡しています。緊急時には私が向かって逃げることは可能です。」
「馬鹿か!あいつが誰かに頼って奴を殺そうとすると思うか!」
レオンさんの意見は正しいと思う。お姉ちゃんは絶対に1人で戦いに行く。生まれた時からあの人を見てきたんだ、お姉ちゃんのことは私が1番よく知ってる。
「とりあえず場所を教えろ!やっぱり魔族は殺すべきだったんだ!」
「あなた方が行っても無駄ですよ。現に私のこの結界すら破れてな...」
その瞬間、結界にヒビが入ってレオンさんの剣先が彼女の首に触れる。
「何が無駄だと?」
「...謝ります、確かに私はあなた方を侮っていたみたいです。ですが、今のあなた方では彼に勝てないのもまた事実。ですので、これを渡します。」
彼女がレオンさんに宝石を差し出した。特殊な魔法陣が埋め込まれている。つまり、これは魔法具だ。
「勇者様に渡した物と同じ物です。勝てないと判断したら、私を呼んでください。」
「こんなもの...」
「レオンさん、この人は信用出来るよ。」
「っ、ソフィア...」
ソフィアさんが宝石を取って、紐をつけて首にかける。ソフィアさん、確か私よりも幼いのに、本当に冷静な人だ。
「リーニエントさん、私達は必ずアペタイトを倒します。あれは好きで殺しをしている化け物...もし、私達がピンチになったら、その時は。」
「ええ、もちろん協力は惜しまないつもりです。」
ソフィアさんとリーニエントさんが握手を交わして、私達は町を出た。これから挑もうとしている相手は勇者一行ですら敵わなかった化け物。お姉ちゃんだけは死なせない、絶対にお母さんとお父さんの仇をとる。それが、私の旅の目的でもあるから。
◇
夢を見た。私は魔族をひたすらに殺し回っていて、辺りを火の海にしていた。そんな私の前に、奴が現れた。そして、私は奴に殺された。これは、私の未来?それとも...過去?
「この石、要らないな。」
彼女...リーニエントからもらった石は使わない。私一人の力で奴を殺す。この復讐は誰にも譲らない。
「...魔族か。」
私の周りを魔族が囲う。私は杖を振り、氷の雨を降らせた。
「雑魚に構ってる暇はない。」
奴を殺す。私は今、その為だけに戦っている。よくも私の家族を...親友を奪ったな。私の中にこんな感情があるなんて知らなかった。暴れだし、全てを破壊し尽くしてしまいそうな程の憎しみだ。
「何、この魔力...!」
木々が倒れ、森の奥から何かが迫る。奴には及ばないけど、今まで会ってきた魔族の中でもトップレベルの魔力量。まさか、三魔列強の...!
「ギャルルルルル...!」
「っ!地竜!?」
私の目の前に現れたのは翼のない、四足歩行の地竜だった。美しい翡翠色の身体で、この森の主であることがはっきりと分かった。
「ギャオオオォォォォオォ!!!!」
「"炎の剣"!」
あの地竜が私に爪を振って、咄嗟に魔法で攻撃を弾いた。あの町から出る前にリーニエントが注意しろと言っていた魔族が2体いた。おそらくこいつはその一体、列強に近い実力を持つ魔族だ。
「ギャルルルルル...」
「森を荒らされて怒り奮闘って感じだね。でも、私の邪魔をするなら容赦しないよ。」
魔力を高め、戦闘態勢に入る。こいつに勝てないようじゃ、あいつには絶対に勝てない。こいつは、私一人の力で殺す。
「"燃え盛る火の玉"!」
魔法を放ち、奴に直撃する。この地竜は体毛が濃いし、火属性の魔法は弱点なはず。もし効き目が薄かったとしても、4属性の魔法を扱える私の方が有利だ。
「グルゥ!」
「よし、燃えて...!」
その瞬間、私に奴の爪が襲いかかり、私は咄嗟に結界を張った。確かに燃やした。実際、奴は炎に苦しんでいた。それなのに、奴は怯まず攻撃をしてきた。並の魔族とは格が違うな。
「なら、本気で潰すまで。」
周りに多重の結界を張って、身を守る。詠唱を使い、超高火力で奴を仕留める。それが1番手っ取り早い。
「偉大なる地の元素よ。砕けることのない堅牢なる石よ。愚かなる森の主に鉄槌を。」
私が詠唱を唱えている間、あの竜は静かに私を見つめていた。死を悟ったのか?最後には威厳のある姿を?まさか、魔族にそんなプライドがあるとは思えない。奴らは生きる為ならどんな手をも厭わない。それが、魔族という生き物だ。
「我、シャルロット・グラトニーが命ずる!」
一瞬、奴の目が光った。その瞬間に私の魔力が乱れて、魔法陣が消え、結界が消えた。気づくと奴の爪が私の眼前まで迫っていた。
「...あ、れ?」
気がつくと、私は知らない場所に飛ばされて倒れていた。腰から下の感覚がしない。私の身体、今どうなっているんだろう。
「ああ、そっか...」
視界の端に私の下半身が見えて、悟った。私の身体は、真っ二つに切り裂かれたのだと。
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