19話 魔族の裏切り者
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「レオンさん、あれを。」
「...何だ、あれは。」
魔界に入って1週間程で、私達は町を見つけた。でも何かがおかしい、なんで魔界に、人間がいるのだろう。
「ん?あんたら誰だ?ここら辺じゃ見ない顔だが...」
「僕はフォルテの騎士レオンだ。なぜ魔界に人間がいる?」
町の人に近づいて、レオンさんは聞いた。実際、魔界に人がいるなんて話は聞いたことがないし、そもそもなんで魔界で生きれてるのかが分からない。
「何言ってんだ兄ちゃん?魔界ってのは向こうの凶暴な魔族だらけの場所だろ?ここら辺には凶暴な魔族はほとんどいないよ。」
「何?」
「フォルテっていうのがどこか知らねぇが、騎士様ならちゃんと知識を蓄えとかねぇとな。」
そう言って町の人はどこかへ行った。流石の私も違和感を覚えた。道中、明らかに人間界よりも多い数の魔族に出くわしたし、フォルテを知らない人なんてお姉ちゃん以外に見たことがない。
「レオンさん、ソフィアさん、何か異常です。一旦見て回りましょう。」
「ああ、僕もこの町は気になったし...何か怪しい。探るぞ。」
そして私達は町に入った。町の中は賑わっていて、一見普通の町に見える。でも、ずっと違和感がある。この町には、そこら辺よりも濃い魔力が漂っている。やっぱり、この町はおかしい。
「さてと、情報を整理しようか。」
宿屋に入って、私達は向かい合う。この町を探索して、気づいたことがある。
「まず、食料や生活用品など、町の中で見た人々だけじゃあまる程の量がありました。」
「ああ、それにいくつもの魔法薬があった。魔界に滞在するのなら普通かもしれないが、ここら辺は本当に魔族も少ないし、普通は必要ない。考えられる要因としては...」
レオンさんとソフィアさんの顔が曇った。やっぱり、私なんかよりも旅や戦いの経験があるから、色んなことが分かるんだ。
「...魔族のための物、ですね。」
「えっ?それってどういうことですか?」
「魔族は魔力を含んだ魔法薬を好んで飲む。この町にある物はほとんどが魔力を含んだだけで効果のない魔法薬だった。つまり、あれは魔族専用の魔法薬だ。そう言えば、カミラも大量の魔法薬を持ってたな。」
明らかに多い食料や生活用品、そして魔族専用の魔法薬。2人の考えていることが分かった気がした。
「つまり...この町は魔族を匿っている?」
「ああ、そういう事だろうな。」
どういうことだ?人間が魔族と共生?そんなことが可能なの?魔族は凶暴な生き物で、人間を見境なく襲う。そのはずなのに、そんなことが...
「そうと決まれば、まずは証拠を掴む。」
「レオンさん、それはあまり...」
「もうこれしか無いだろ?」
レオンさんが立ち上がって、壁に手を当てる。そして一気に魔力を込めて、衝撃を与えた。
「っ!何して...!」
「ほら、いた。」
隣の家屋の壁を突き破って、そこに魔族の姿が見えた。人型の子供の魔族だ。
「今から、魔族を殲滅する。」
「待って!」
レオンさんが剣を構えると、魔族の前に人間の子供が立った。手を広げて、魔族を庇っている。
「何をしてる。どけ、さもなければ...」
「お兄さん達、人間界から来たから知らないんだろうけど、この子や他のこの町にいる魔族はいい人なんだよ!みんな僕に優しく挨拶してくれて、怪我をした時は魔法薬で治してくれたり...とにかく、すごい優しいんだ!」
子供が私達に訴える。けれど、レオンさんの身体がプルプルと震え始めて、身体中に血管が浮き出始めた。
「ふざけるな!」
「っ!でも!」
「魔族は人を殺す化け物だ!僕の同胞がどれだけ魔族に殺されたと思っている!魔族は存在してはいけない生き物だ!僕の邪魔をするなら、お前ごと...!」
「レオンさん!それは流石に...!」
「そこまでですよ、騎士王様。」
私達の真ん中に1人の魔族が現れる。ヤギのような角の生えた小さな少女。だけど、圧倒的な魔力とその気迫。この魔族は、ただ者じゃない。
「何者っ!」
「"罪人"。」
その言葉を聞いた瞬間、レオンさんの動きが止まった。ソフィアさんと私はその言葉の意味が分からない。けれど、レオンさんだけが理解した。
「流石は騎士王様ですね、博識です。さて、今からお茶でもいかがですか?」
あの少女に案内されて、私達はお茶会に招待された。机にはお菓子と紅茶、これで彼女が魔族なのが信じられない。
「さて、まずは自己紹介を。私はリーニエント。数数万年前、魔王へ反逆したことにより罪人と呼ばれています。」
魔王への反逆...おそらく、人間と魔族が共存するきっかけになった出来事がそれだろう。だとすれば、この魔族は悪い人ではないのかもしれない。
「この町はなんだ?」
「この町のみならず、あなた方が魔界と呼ぶこの地では人と魔族が共存するのはありふれたこと。我々が敵とみなすのは我々に牙を剥く魔族と人間のみです。」
彼女は淡々と話す。人間同士で争いが絶えないように、もしかしたら魔族同士でも争いが絶えないのかもしれない。てっきり、魔族全体を魔王が完全に支配していると思っていた。
「それよりも、あなた方が気になるのは勇者様の行方なのでは?」
「っ!お姉ちゃんを見たの!?」
つい声を上げてしまった。私の言葉を聞いて、彼女は頷いた。
「ええ、疲弊しきっていた様子でしたから、休ませるためにこの町へ案内しました。まあ、翌朝には出て行ってしまいましたが...」
「翌朝っていつ?まだそんなに経ってないはずでしょ?」
「昨日ですよ。」
私は彼女の言葉を聞いて立ち上がった。昨日の朝なら、全力で走れば追いつけるかもしれない。お姉ちゃんばかりが辛い思いをする必要なんてない。あの人はいつも身勝手だ。勝手に自分が強いと思い込んで、勝手に全部自分の責任にしてしまう。私なんか、目の前で2人が戦っていたのに何も出来なかったんだよ!
「言っておきますが、あなたが行っても死ぬだけですよ?」
「っ!こんな時に何言って...」
「確かに魔法の才能は凄まじいみたいですが、所詮はまだ魔法を使い始めて1ヶ月も経ってない人間。彼女が向かった場所では、絶対に生き残れません。」
彼女は私のことを睨んでそう言った。そうだ、お姉ちゃんが行った場所を聞いてなかった。それを聞かなきゃ、間に合うものも間に合わなくなる。
「シャルロットが向かった場所を知ってるのか?」
「ええ...ですが、今のあなた方が行くのはオススメしません。あの勇者様にもあそこに向われては困るので、正確な位置は教えてませんよ。あなた方に死んでもらっては困るのです。」
彼女は冷たい目で私達をみつめる。私達が行っても、お姉ちゃんが行っても命の危険があるような場所。
「彼女が向かった先は、"魔霧の森"。魔人アペタイトの領地です。」
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




