17話 再び旅へ
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「...私、どうしたらいいのかな。」
目の前で眠るカルムに声をかける。カルムはソフィアのおかげで一命を取り留めた。でも、疲れのせいか目を覚ましていない。結局、カミラは戻って来なかった。レオンの報告によると、ただ激しい戦いの跡が残っていただけで、それ以外は何も見つからなかった。
「昔からそうだよね。私はいつもお調子者でさ、そのせいでよくみんなに迷惑をかけてたよね。今回も、私がもっとちゃんとしていればこんなことにはならなかったかもしれない。」
私はこの旅を甘く見ていた。勇者の杖を手に入れて無敵になったと勘違いして、どんな敵にも負けないと思ってた。でも違った。私は、あいつを殺せなかった。
「カルム、待っててね。私、もっと強くなるよ。どんな魔族にも負けないぐらい。そして、あいつを必ず殺すから。」
部屋を出て、外に出る。今は深夜で、みんなは寝ている。2人には申し訳ないけど、私はもう出発しようと思う。もしあの2人と一緒に旅を続けてたら、私は怠けてしまうかもしれない。そんなことは、あってはならないから。
「待ってください!シャルロットさん!」
「っ、ソフィア...」
振り向くと、そこにはソフィアがいた。走って来たのか息を切らしている。
「私は許さないですよ、1人で行くなんて!私が何のためにあなた達と一緒に今まで旅をしてきたと思ってるんですか!」
「魔王を倒すため。それ以外にないでしょ?この旅はそのためのものなんだから。」
その瞬間、私の頬に痛みが走った。ソフィアに頬を叩かれた。初めてだった、ソフィアのこんなに怒った顔を見るのは。
「違うに決まってるでしょ!私は、あなた達みたいにかっこいい人になりたくて、あなた達に着いて来たんです!」
「えっ、私みたいに...?」
ソフィアは大粒の涙を流しながら私に言った。
「もしかして、カミラさんが魔族だったという事を知って私があの人を嫌いになったとでも思いましたか!私があなた達に頼まれたから、一緒に旅をしていると思いましたか!薄情過ぎますよ!」
「そんなことは...!」
「ならなんで!」
ソフィアが私の手を握って膝から崩れ落ちる。怒りと悲しみが、ソフィアから伝わってくる。
「私を、置いて行こうとするんですか...」
「...ごめん、ソフィア。」
私はソフィアの手を払い除けて、杖を握る。私だって、カミラやソフィアやレオン、みんなと一緒に旅をしたいよ。でも、もうそれは出来ない。私はもう、誰かに頼るわけにはいかない。
「..."天を舞う者"。」
空を飛び、魔界に向かう。私は強くなってあいつを殺す。カミラも見つけて、また4人で楽しく笑い合う。その時は、カルムも一緒に。だから待ってて...
「私が必ず、全部終わらせるから。」
◇
シャルロットさんが去ってから数日、私達もそろそろ行かなければならない。カルムさんも目を覚まして後遺症とかもないみたいだし、とりあえずは安心だ。
「ソフィア、先に言っておくが僕はカミラを殺す気だぞ。」
「はい、それでもいいです。すでに魔竜が再臨したという噂も聞きましたし、おそらくカミラさんはもう何人も人を殺している。あの人を止めるのは、あの人の仲間である私達じゃないといけない。」
覚悟は出来ている。これからは私とレオンさんの2人で魔族と戦っていかないといけないけど、それでも私は進む。もう、あんな思いはしたくないから。
「さあ、そろそろ行きましょう。日が暮れる前に...」
「待ってください!」
私達の方に一人の少女が走って来る。カルムさんだった。でも、いつもと様子が違う。立派な帽子を被って、杖を持っていた。
「カルム、どうかしたのか?」
「私も、その旅に連れて行ってください!」
無理な頼みだった。これから行くのは魔界。魔界にいる魔族は、人間界に生息している魔族とは強さの格が違う。そんな場所に、カルムさんは連れて行けない。
「駄目です。魔界は危険です、とてもあなたが生き残れるような...」
「それでも行かせてください!私、魔法も使えますから!」
「だから駄目だって...」
「なら見せてみろ。」
レオンさんがカルムさんを睨みつける。彼はカルムさんを試しているみたいだった。普通なら、彼女をパーティーに入れるという発想にはならない。だけど、レオンさんも悔しいから、だからカルムさんを試している。
「さあ、あの岩に魔法を撃ってくれ。もちろん、お前の全力だ。」
広い場所に出て、レオンさんは一つの岩を指差す。その言葉を聞いて、カルムさんは杖を構えた。
「じゃあ、ちゃんと見ててください。」
その瞬間、カルムさんの魔力が高まった。その魔力は、並の魔法使いを軽々と凌駕する。
「穿て。」
「っ!」
その瞬間放たれたのはどの属性でもない、ただの魔力で形成された光の矢。だが、その威力は岩を粉々するほどのもの。しかも、その光は複数本出ていて、それが全てあの岩の一点にのみ命中した。これ程の魔法を扱うには、それこそ先端がバラバラになった糸の先をそのまま針の穴に通すような、そんな緻密な魔法の操作技術が必要だ。
「どうでしたか?私の魔法は?」
彼女の片目は、彼女が魔法の天才である証...伝説上にのみ存在するとされた"魔眼"と同じ、白い瞳だった。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!




