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勇者の杖の魔法使い  作者: mito
四章 美食の始まり
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14話 強き者の盲目

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

「さあ、準備はいいか?」

レオンに対して、私とカミラとソフィアの3人が対峙する。あれから3ヶ月、私達は協力しながらも自分達の実力を高め合った。十分な準備はしてきた。今日こそ、レオンに勝つ。

「じゃあ、行くぞ。」

その瞬間、レオンが走り出して私の方に真っ直ぐに向かって来る。それに対して、ソフィアが私の前に出て結界を張る。

「カミラ!準備!」

「ああ!」

私が魔法を構え、レオンが結界を破った瞬間にカミラは走り出す。そして、私とカミラが同時に魔法を発動する。

「"氷の地雷(グラス・トラップ)"!」

「"真空の輪(ヴィントティレ)"!」

私がレオンの目の前に罠型の魔法陣を展開して、カミラの魔法によって強い風を起こし、レオンをその魔法陣の上に引っ張る。

「っ!罠か!」

「"雷の鎖(トネール・チェイン)"!」

風の鎌(ヴィントゼンゼ)!」

続けて攻撃を仕掛ける。だけど、私達の攻撃が届く前に罠によって生じた氷が砕かれ、レオンの一振りによって魔法が弾かれた。

護りの祈り(シルトベーテン)!」

ソフィアが私とカミラに結界を張る。すると、瞬時にレオンは標的を変えてソフィアに向かって走り出す。レオンが剣を振り翳す。だけど、私達にとってレオンのその行動は想定の範囲内だ。

「"反射の祈りリフレクションベーテン"!」

「なっ!?」

レオンが剣を振り下ろすと同時にソフィアが特殊な結界を張り、レオンの攻撃の衝撃を跳ね返す。それによるレオンの隙に、私とカミラは畳み掛ける。

炎の(フラム)...!」

風の(ヴィント)...!」

「ふっ、強くなったな!」

その瞬間、レオンが飛び上がってソフィアの方に向かって急降下していく。これは想定外の展開だ。

「ソフィア逃げて!」

このままソフィアが欠けてしまったら一気に形勢が逆転してしまう。かといって、この距離では私達は間に合わない。やっぱり、レオンにはまだかなわないのか。

「"癒しの祈り(ハイルングベーテン)"!」

「っ!」

ソフィアがそう唱えた瞬間、レオンがまだソフィアが間合いに入っていないのに剣を振り下ろした。そして、ソフィアが杖でレオンの剣を跳ね飛ばした。

「はい、私達の勝ちです。」

バランスを崩したレオンにソフィアが杖を向ける。その先には魔力の玉が作られていて、ソフィアは完全にレオンを制した。

「...ああ、僕の負けだ。」

その言葉を聞いて、私とカミラは飛び上がった。

「やった!すごいよソフィア!」

「ああ、よくやったソフィア!お前は本当にすごい奴だ!」

「え、えっと...あまり褒められると、恥ずかしいです...」

想定外の展開に即座に対応し、見事にレオンとの模擬戦に勝利を収めた。すごい、本当にすごい!

「でも、どうやってあんなこと出来たの?」

「それはですね、レオンさんの体感速度を元に戻したんですよ!」

ソフィアは自慢げに語る。

「あの時のレオンさんは私達との戦いで少し疲れていたんです。それによって少し動きが遅くなっていました。だからその疲れを癒してあげることによって動きを元の速さに戻してタイミングをずらしたんです!」

「なるほどな、本来なら治癒属性は魔族には毒で人間には癒しとなるものだが、そういう使い方もあるとは。」

レオンが起き上がって私達を温かい目で見つめた。レオンも認めてくれたみたいだ。

「3人とも、よくこの3ヶ月という短期間でここまで鍛え上げた。今日はゆっくり休もう!僕がこの国を案内してあげよう!」

レオンは札束を見せびらかしながらそう言った。嬉しいっちゃ嬉しいのだけど、なんかこうも財力を見せ付けられると何か悲しくなる。まあ、いいんだけどね?

「よ〜し!じゃあしゅっぱ〜つ!」



「人間界、滅ぼすのも悪くはないですが、それ以上に美味しそうな物を見つけてしまいましたね。」

緑豊かなこの景色、魔界とは違い、さぞ美味しそうな物があった。だかしかし、それは植物や獣の話。まだ私はこの人間界の美食に満足していない。

「平和は人の味を悪くしてしまう。生き物が共通して持つ生存本能、なぜか人間はその本能がどの生き物よりも強い。」

奴らは私達の方が生に執着していると思っている。だが、それは違う。人の方が生への執着が強い。だからこそ私は人を好んで食べる。美食家、魔界では私はそう呼ばれている。

「それにしてもあの青年、まだまだ美味しくなりそうだった。私が食欲を抑えておく程の価値がありますよ。」

数ヶ月前に戦ったあの金髪の青年、あれはもっと強く、美味しくなる。だが、本命はあれではない。あの黒髪の少女、あれはあの状態でも最高の食材でしょう。人の最も強い感情である憎しみが今までに見た人間の比ではなかった。それも全て私に向けられたもの、どうやら私のことを知っていたみたいでしたし、あれは異質な存在。おそらく、今までにない珍味。

「ならば、より美味しく。その為には...」

とある町からあの少女と似た匂いがする。おそらく、あの少女の血縁でしょう。人間界の食べ物もあらかた食べ尽くしましたし、そろそろ騒ぎを起こすのも一興。

「くくっ、ふはははははっ!楽しみで仕方ありません!あの少女の絶望する顔!そしてより高まった憎しみ!その味!唯一無二の美食ガストロノミー!」

これ以上時間は掛けられない。だが、より長く憎しみという汁で煮込めば、あれはより深く珍味な美食となる。その為の長い工程の一つを始める時が来たのだ。

「さあ、あの少女の前に血縁の死体を並べて差し上げましょう!」

久しぶりに心踊る。このような日には、人を喰わねば落ち着けない。美食を求めずにはいられない。

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

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